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しおりを挟む~~2年後~~
「お父様!あとどれくらいで着きますか?」
「ルイ、落ち着きなさい。もうすぐだから座ってなさい。危ないだろう?」
サベルクを出発して2年が経った。その間僕がサベルクへ帰ったのは一度だけ。今回は1年半ぶりのサベルクだ。
お父様は領主としての役目も公爵としての役目もあるから本来もっと頻繁に帰らなければならなかったんだけど、外交がかなりうまくいって国王様からこちらを重視するよう頼まれたんだ。
「ねぇ、お父様。セド怒ってるかな?」
「怒っているというより拗ねてるんじゃないか?国王様からもセドリック様が何度公務を放り出して飛んでいくのを止めたか分からないと聞いているよ。」
「うん、ベルと兄様からの手紙にもマリク兄さんの手紙にもそう書いてあった。」
「今日帰ること言ってないんだろう?」
「うん、びっくりさせたくて。今日セドは公務で帰りが遅くなるってマリク兄さんから聞いて、国王様たちにも秘密にしてもらってる。」
「なら、殿下は相当驚くだろうな。」
「セド、喜んでくれるかな。手紙ではね、たくさん褒めてくれたんだ。でもやっぱり直接褒めてほしくて、、、。それに、セドにギュってされながら頭を撫でてもらうのもすごく好きだったから。」
「ルイが帰ってきたら殿下も当分は公務を休まれるだろうな。」
公務を休むの、、、?なんで?
僕が分からないという顔でいると、ルイはまだまだ子供だなと言われてしまった。
僕、もう21になったんだけどな~。お父様から見ればまだまだ子どもなのかな。
「もう当分他国に行くことはないからセドとゆっくりできる。」
「殿下は婚約を約束から結ぶものにしたいんじゃないか?」
婚約か。僕はセドに2年前プロポーズしてもらった。あのネックレスもまた魔力を込めてもらい今も首から下がっている。昔とは違い服の外に出して。左手には誕生日の日に海でもらった指輪が輝いている。
「婚約はまだ有効なのかな。僕すごい勝手しちゃった。セドのそばから2年も離れたし・・・ねぇお父様、セドに好きな人とかできてたらどうしよう。不安になってきちゃった。」
「不安に思ってるのはお前だけじゃないか?それに、ルイは好きなんだろう?寝言でいつも殿下の名前を呼んでいたからな。」
えっ、そうなの?恥ずかしいよ、、、。
「お父様、それセドには秘密にしてくれる?」
「可愛い息子の願いなら仕方ないな。私とルイだけの秘密にしよう。」
「うん!ありがとう!!」
この2年でお父様とも仲良くなったと思っている。旅の道中沢山のことを話した。ほとんどを室内で過ごした僕にとってはお父様から聞く話はどれも新鮮で面白かった。
「ルイ、見えてきたよ。」
「わー!!本当だ!!お城が見える!!!」
「殿下は今日夜まで戻らないみたいだから、先に陛下にご報告と挨拶に行こうか。」
「はい!!!」
久しぶりに入る城はあの時と何も変わっていなかった。国王様の元へ行く道中も自然とセドを探していた。
「国王陛下、ただいま戻りました。」
「ご苦労であった。この2年でこの大陸すべての国の友好条約を結んだ功績は過去を含めても1番だろう。」
そう。この2年で僕とお父様はサベルクとこれまで関係のなかった国にも足を伸ばし、友好条約を結ぶために奮闘していた。
先日最後に訪れたヴィーロと条約を結びすべての国と友好関係となれた。敵対していた国に行くことは国王様を初め沢山の反対を受けたが、いつまでも争いばかりなんて誰も幸せにならないと説得して敵国の土地へと足を踏み入れた。
「ルイの力が大きかったのです。ルイの言語能力のおかげで他国の方々からの第一印象が良かった。それに、ルイの無邪気な探究心が好印象でした。」
好印象、だったのかな?
他国のものは見たことのないものがたくさんあって、これはなにあれはなにと聞いていくうちに自然と国の中枢の方々と打ち解けることができた。
「ルイ、セドリックは今日は夜に戻る。どうする?今日からまた城に滞在するか?」
「城にいても、いいですか?」
「もちろんだ。そなたはセドリックの婚約者だろう。」
「では陛下、詳細の報告はまた後日。」
「あぁ、疲れているだろう。ゆっくり休め。そなたとルイの両方に褒美を用意しておくからな。」
「そ、そんな!!僕はいいです!!お父様に!!」
「お前も頑張っただろう。受け取らせてもらいなさい。」
お父様と国王陛下にそう言われてしまうと頷くしかできなかった。
「ではルイ、またな。家にも顔を見せなさい?お前の母様や兄様たちが会いたいだろうからな。」
「はい!」
「ルイ様、おひさしゅうございます。お部屋までお供いたしますよ。」
「あ!レスターさん!セドについていないんですか?」
「えぇ、今日はマリクさんとムーマさんが付いています。あ、どうしますか?セドリック様の部屋へ参りますか?それともルイ様の部屋へ参りますか?」
「ぼ、僕の部屋で。」
セドの部屋で待つのは緊張しすぎるから。
自分の部屋の扉の前に立つと懐かしさに震えそうになる。1年半の間使ってないから埃とか溜まってるかな?
そう思い入ったのに、そこは数分前にも使ったのでは?と思うほど生活感のある部屋だった。寝巻きも置いてあるし、花も飾ってある。枕元に本も置いてある。
「ここは、今も使われていますよ。」
どういう、こと?
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