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しおりを挟む花火が終わってからも少しの間はここを離れたくなかった。少し狭い物置部屋、2人分のスペースがやっとあるくらいだから必然とくっついているこの空間。
自分だけのためにこんなに盛大なことはしてもらったことはなかった。今日の夕食の時に初めて、誕生日には豪華なディナーでお祝いすることを知ったし、大きいケーキも初めて見た。まだまだ食が細いとセドに言われている僕でもいつもよりたくさん食べてしまうくらいには楽しくて嬉しくて仕方なかった。
「さ、部屋に戻ろうか。」
またセドに抱き抱えられて部屋へ戻る。もう夜なのであまり人がバタバタと動き回ってはいない城の中はなんだか静かで、まるでセドと僕がこの城に2人っきりなんじゃないかと思ってしまうくらいだった。
寝室に行くのかと思えば、5階の客間へと入った。そこにはまだみんないて、たくさんの箱が置いてあっていつものこの部屋を出た時とは様子が違った。
「さ、花火が終わったからプレゼントタイムだよ?」
「、、プレゼント?」
「まず私からだ。ルイ、誕生日おめでとう。」
お父様が渡してくれた箱を受け取り、どうして良いのか分からずにいると開けてごらんと優しくセドが教えてくれた。綺麗に包まれているものを開けるのが勿体無いなと思いつつ箱を開けるとそこには小さめのノートとペンが入っていた。
「これから外交に行くからな。万年筆と手帳だ。私が長年愛用している職人のものだから使いやすいと思うぞ。」
「ありがとうございます!!!」
嬉しいっ!これが僕のものなの?嬉しいっ!!!
お母様からは新しい洋服と靴、ベルト兄様からはコート、姉様からは手袋とマフラー。
アンナからは沢山の本。
「8歳の誕生日の日にお二人の好きな物語を5冊ずつ買ったのです。それを今、お渡しします。」
僕の好きなタイプの物語とルカの好きなタイプの物語の本が5冊ずつ入っていた。
レオ殿からは腕時計をもらった。
こんなにたくさんのものを貰ったのは初めてでありがとうしか言えず、ただただ泣いていた。
部屋に戻ってもなく僕をセドはずーっと抱きしめてくれていたが、ふいに
「ルイ、連れて行きたいところに行っても良い?」
というので頷くと1秒後には外だった。多分転送魔法陣を使ったんだと思う。セドほどの魔力があれば、魔法装置を使わなくても転移ができて僕1人くらいなら一緒に飛べると言っていた。
「ここ、、、どこ?」
「あっち見て」
セドの指差す方を見ると、塔のてっぺんから出ているライトに照らされたキラキラした水が見えた。
「ここって、、、海?」
「うん、海。連れて行くって約束してただろ?外交で見ることになっちゃうから、その前にって思って。」
「すごい!!!キラキラしてる!!」
「足だけ入ってみる?」
「いいの?」
「もちろん。」
海はすごく大きい。水何リットルあるんだろう。そんなことを考えながら砂浜や波の感触を楽しんでいるとセドが僕の左手を取った。
左手の薬指に指輪がはまっていた。綺麗な金色の指輪。
「王家では紋章の入った指輪を結婚式の際に相手に送る。でも、他国の多くでは左手の薬指は婚約中もしくは結婚していることを示せるからね。僕からのプレゼントって言っても僕の独占欲の表れなんだけど、貰ってくれる?」
「うん!!!セドっ!!ありがとう!!!」
すごいや、まるで絵本みたい。海で指輪を渡してくれるなんてロマンチックってやつだ。いつまでも僕をドキドキさせるセドはずるい。いつか僕もセドにドキドキさせれるかな。
みんなからのプレゼントとセドからもらったネックレスと指輪。
これがあればどんなに大変なことが起こっても頑張れる確信があった。
こんなに心強いものはない。だって、出発の時みんなが見送ってくれる中僕は笑顔で行ってきますが言えたんだから。
セドは僕を抱きしめて離してくれなかったから出発は1時間も遅れたけど、マリクさんも僕の出発に合わせて帰ってきてくれた。
マリクさんは母の姓を残したいからとアスバル家には入らなかった。でも、僕とは兄弟だと言ってくれてマリク兄さんって呼んで欲しいと、そう言ってくれた。
そんな僕らを見てお父様はマリク兄さんの後ろ盾となる手続きをしてくれた。それにはマリク兄さんも本当に感謝していた。
「ルイ、出発明日じゃダメ?」
「だめ。1年だよ?あっという間だよ!!セド、待ってて?」
「うん、じゃあ最後にキスして?」
「え、みんないる、、、、、」
「お願いっ」
みんないるのが恥ずかしいけど、確かに1年できないもんね。
僕もしたくなっちゃった。だから、
チュッ
「セド、愛してる。いってきます!」
僕はサベルクを離れ旅を始めた。
国内の様々な場所も回るため馬車で行く旅を。
1年の予定が2年もかかってしまったけどね。
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