【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

文字の大きさ
上 下
82 / 105

81

しおりを挟む

必要な死

そんな言葉が10ヶ月ともにお腹の中にいた双子の妹から発せられるなんて思ってもみなかった。

あの場が危険なのはわかっているけど、それでも構わないと思った。

---バチン

ニアの頬を叩くと僕に叩かれたのが嫌だったんだろう。キッと睨みつけてきた。

「何すんのよ!疫病神!!!あんたなんて論外じゃない!!生まれてくることを望まれすらしてなかったんだから!!」

「僕のことはもうどうでもいいよ!!でも、人が理不尽な理由で亡くなってるんだ!!必要なんて言うな!!」

マリクの母は秘密を周りにバラすつもりなんてなかった。家族で仲良く暮らすだけでよかったんだ。

それを僕らの血の繋がった父が壊したんだぞ?

なのになんでそんな風に言えるんだ?

「ルイ、ありがとうございます。ルイは本当に優しい心を持ってる。そんなあなたの目の前でなんて、、、


でも、そうしないと私は18年前から進めないんです。」

「マリクさん、、、。」

「お、おい、落ち着けっ、、私たちは血が繋がっているんだぞっ!家族だろう?お前たちの弟や妹もここにはいるんだぞ?な?」

自分の身の危険を感じ、そんなことを口走るのか。あなたが家族という言葉を僕に、マリクさんに使うんですか?

側から見れば、ここにいるのは全員家族だ。

父に、母に、同じ髪色と瞳を持った兄弟6人。でも実際は違う。

マリクさんとその家族、僕を土台にして残りの人はふんぞり返っている。そんな状態を何年も繰り返してきたんだ。

今更、思ってないとしても、保身のためであっても「家族」だなんて言わないで欲しい。

僕にとってその言葉は特別だ。ずっと憧れていて、やっと、家族ができたんだから。

きっとマリクさんにとっても家族は特別。

だから、僕らのことを家族だなんて言わないで欲しい。

あぁ、僕にも恨みという感情があったんだな。マリクさんに聞かれた時に恨んでいないって言ったけど、恨んでないんじゃない。そう思う以前に僕は恨めしい、憎いという感情を分かっていなかった。

僕はちゃんと、ちゃんとこの人たちのことが憎い。憎くて仕方ない。

「・・・マリクさん、、、。僕、、」

「どうしましたか?ルイ。」

「僕、この人たちが憎いです。」

「・・・そうですか。私と同じですね。」

うん、同じ。

同じだったんだ。

「でもあなたは将来王妃になるんでしょ?私は騎士団に所属しています。血生臭いのは私に任せてください。それに、兄とは弟を守るものなんです。」

「マリクさん、、、」

「さっき言ったでしょう?ここが始まりの場所だと。私たちのこれまでは忘れることは出来ないです。だから無理やりスタート地点を作りましょう。ここをスタート地点にする。私もルイも今日この場所から新しく生きる。そう誓いませんか?」

スタート地点、、、。

新しく生きる。好きに、自由に生きる。

「マリクさんっ!僕誓う!僕、やりたいことができたからっ!!」

僕はルーチェの人間だ。サベルクに住んで、サベルクに家族ができたけど、ルーチェで生まれたルーチェの王族の血を引く人間だ。

ルーチェによって自由を奪われ、サベルクによって自由と愛を貰った。

そんな僕だからこそ出来るんじゃないかと思ってることがある。

この戦争はルーチェの完全敗北だ。そして、王族も無事では済まない。ならこの土地にいる人たちはどうなるんだろうと考えた。

ルーチェの王族は私欲で何人の人を傷つけてきたんだろう。僕やマリクさんのような人を何人、、、。そう思った。

セドがまだまだ僕は自由になりたてで好奇心の塊だと。だからこそ好きに感じて好きに生きることができる。みんなが気づかないようなことを気付けるんだよって言ってた。

あの小さな部屋で外に思いを馳せる僕はもういない。やりたいことを、やる。

「そうか。これが終わったら私にたくさんルイの話を聞かせてくださいね?」

「うん!マリクさんの話も教えてね!」

マリクさんにたくさん話をしよう。ルカのことも紹介するんだ。

ルカはさっきから僕もこの人と話がしたいって言ってる。ルカがやりたいこと言うなんて珍しいのに。

もう僕らは前を向いている。
今を見ることしかできなかった。未来という言葉の意味を記憶できても、それは靄がかかったように曖昧だった。

だけど今日からは違う。

自分でも気づかないうちに過去という、ルーチェという椅子に座ったままだったんだ。椅子に座ったまま前になんて進めないのに必死に進もうとしていた。

マリクさんが、僕を椅子から立たせてくれる。

マリクさんは僕の頭を撫でるとムーマとアイコンタクトをとった。ムーマは僕をその場から少し離す。これから何が起こるのか、それで分かった。本当は少し怖いから目を瞑りたいけど、目を逸らしてはいけない。

さっきからセドも国王様もレオ殿も、みんな黙って僕やマリクさんの動向を見守ってくれている。この国で起きた悲劇はこの国で終わらせる。

「そうだ!!ここには王妃や王女王子もいるではないか!!こいつら5人の首を差し出すから私を助けろ!!!」

目の前にいるのにそんなこと言うのか。自分の妻や子供を殺して自分を助けろと言うのか。

王妃もニアたちも信じられないと言う目で見ている。

マリクさん、僕たちの父親は信じられないほどの悪人だね。

最後の最後まで保身のために叫び続ける煩い口は閉ざされた。

胸に突き刺さったナイフによって。
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)

皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...