81 / 105
80 マリクside
しおりを挟むルイを攫う命令が出た。自分の復讐達成のために弟を攫わなければならない。だが、私に全面的に任されたのでルイを守ることが出来る。
「ムーマ、これをルイのポケットに入れておいてください。」
「これは?」
「保護魔法をかけた魔法石です。あなたが運ぶときや、私が合流するまでに誰かがルイに危害を与えてしまったら怪我をしてしまいますから。2~3時間で効果は消えますがその間はルイを守ってくれます。」
ムーマには手荒には扱うなと注意をし、ルイを攫うという任務を任せた。
初めて見るルイは私と同じ栗色の髪に金の瞳を持っていた。間違いなく、ルーチェの王族の証。
私がルイのこれまでのことを知りたいというと不思議そうな顔をしていた。そりゃ怪しいよな。敵国の者が身の上話をしろなんて怪しさしかないし意味わからないもんな。
セドリック様はスカナにスパイがいることも国王以外に言っていないとおっしゃっていたし。
怪しいという自覚はあるがルイのこれまでを私は知る義務がある。私は自由が与えられ母や父、祖母からたくさん愛情をもらったがその家族を殺された。ルイは18年自由が与えられず愛情をもらうこともなく虐げられていた。
私たち兄弟は同じ人物からこれほどまでにベクトルの違う苦しみを与えられていたんだな。どちらの方が辛いとかそういうことではなくて、私たちはお互いの存在をもっと前に知っていたら何か違ったのかもしれないな。
ルイがどう感じていたのか、何をされたのか。聞くたびに胸が苦しくなった。
ルイは、双子で生まれたのに自分は男だったからニアだけが愛された。同じ男なのに初子ではないから弟は愛された。その事実が幼少期には辛かったとそう言った。
違うんだ。ルイは初子じゃない。
その弟たちと同じように、ルイは男で、初子でもなかった。条件は同じだったんだ。
ルイは18年父や母からの愛に飢え、孤独に満ちていた。私は18年父や母の愛の面影を探し、恨みに満ちていた。
私たちは正反対だな。
だが、今日がゼロだ。
今日あの男を殺し、私たちは新しいスタートラインに立つ。
ルイに申し訳ないと思いつつルイの腕を縛ったまま王族の自室へ連れて行った。
柱に縄を結び王の部屋へ入る。
「ムーマ、いますか?」
そう声をかけると影から彼が現れた。
「準備できてますよっ!兄貴っ!!」
「では計画通りに。」
ここは、あいつの自室。
母と父を殺した奴の自室。
そう思うだけで頭がおかしくなりそうだった。この場で叫んでしまいたくなるほどに狂ってしまいそうだった。
---ギュッ
「マリク、大丈夫。上手くいくから。ね?」
「ムーマ、、、。」
やはり私はムーマがいないとダメみたいですね。
「あと少しです。俺たちの願いが叶うまであと少し。これが終わったら2人でゆっくり旅行にでも行きましょう?」
「そうですね、それがいいですね。」
これが終わったら母と祖母に言われた通り、幸せになるために人生を歩みたいとそう思う。
「さっ、今はまだスカナ国王側近のマリクでいてくださいね兄貴っ!」
「えぇ。」
気持ちが切り替えれた。そのあとは何より計画を進めることを第一に考え、遂行するために城内の部屋を回りムーマと共同で私たちの願いを叶えるための仕掛けをし続けた。
「ムーマ、この部屋で最後です。この次はあの王たちのいる場へいきます。おそらくサベルクの国王様、セドリック様もいると思います。隙をついてあなたはあなたの復讐を果たしてください。その後に私はあの男を殺しますから。」
「兄貴、ついに来たんだな。この日が、やっと来た。」
「そうです。やっと来たんですよ。」
そう、やっとこの場に立てたんだ。
やっと。
「これまでにも王族の初子が男だったことなんておそらく何度もあったんでしょう?」
「くっっっ!!そうだっ!!歴代の王の子の初子の中には男もいた!!」
「その人たちはどうしたんですか。」
「それは、、、、」
「言え。今すぐ殺すぞ?」
「王族の特徴を持っていなければ手切れ金を持たせ城から追い出すのだ。」
私がそうだったようにか。私は生まれた瞬間に母に守られたのだな。
「それ以外の子はどうするのだ。」
「死体が証拠となっては困るので、城に幽閉するのだ。その後は好きにしていいことになっている。自分の奴隷とした王もいたと聞く。」
なんてことを、、、。
「それを、おかしいと思うまともな奴はいなかったということか。」
「おい!話しただろ!!私のことは殺すな!!!」
「いえ、私はお前を殺します。母と父を殺した報いをルイを苦しめた報いをこの場で受けるんです。」
「やめて!!!!」
声を荒げたのはルーチェの第一王女。
「なんですか。あなたも殺されたいんですか?」
「さ、逆恨みじゃない!!」
「は?」
「初子は女じゃないとダメだし、王族が平民なんかと結婚できるわけない!!あなたのお母さんが死んだのは必要な死よ!!」
---バチンッ
彼女の頬を叩いたのは・・・
「ルイ、、、?」
135
お気に入りに追加
3,560
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)
皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる