【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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80 マリクside

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ルイを攫う命令が出た。自分の復讐達成のために弟を攫わなければならない。だが、私に全面的に任されたのでルイを守ることが出来る。

「ムーマ、これをルイのポケットに入れておいてください。」

「これは?」

「保護魔法をかけた魔法石です。あなたが運ぶときや、私が合流するまでに誰かがルイに危害を与えてしまったら怪我をしてしまいますから。2~3時間で効果は消えますがその間はルイを守ってくれます。」

ムーマには手荒には扱うなと注意をし、ルイを攫うという任務を任せた。

初めて見るルイは私と同じ栗色の髪に金の瞳を持っていた。間違いなく、ルーチェの王族の証。

私がルイのこれまでのことを知りたいというと不思議そうな顔をしていた。そりゃ怪しいよな。敵国の者が身の上話をしろなんて怪しさしかないし意味わからないもんな。

セドリック様はスカナにスパイがいることも国王以外に言っていないとおっしゃっていたし。

怪しいという自覚はあるがルイのこれまでを私は知る義務がある。私は自由が与えられ母や父、祖母からたくさん愛情をもらったがその家族を殺された。ルイは18年自由が与えられず愛情をもらうこともなく虐げられていた。

私たち兄弟は同じ人物からこれほどまでにベクトルの違う苦しみを与えられていたんだな。どちらの方が辛いとかそういうことではなくて、私たちはお互いの存在をもっと前に知っていたら何か違ったのかもしれないな。

ルイがどう感じていたのか、何をされたのか。聞くたびに胸が苦しくなった。

ルイは、双子で生まれたのに自分は男だったからニアだけが愛された。同じ男なのに初子ではないから弟は愛された。その事実が幼少期には辛かったとそう言った。

違うんだ。ルイは初子じゃない。

その弟たちと同じように、ルイは男で、初子でもなかった。条件は同じだったんだ。

ルイは18年父や母からの愛に飢え、孤独に満ちていた。私は18年父や母の愛の面影を探し、恨みに満ちていた。

私たちは正反対だな。

だが、今日がゼロだ。

今日あの男を殺し、私たちは新しいスタートラインに立つ。

ルイに申し訳ないと思いつつルイの腕を縛ったまま王族の自室へ連れて行った。

柱に縄を結び王の部屋へ入る。

「ムーマ、いますか?」

そう声をかけると影から彼が現れた。

「準備できてますよっ!兄貴っ!!」

「では計画通りに。」

ここは、あいつの自室。

母と父を殺した奴の自室。

そう思うだけで頭がおかしくなりそうだった。この場で叫んでしまいたくなるほどに狂ってしまいそうだった。


---ギュッ


「マリク、大丈夫。上手くいくから。ね?」

「ムーマ、、、。」

やはり私はムーマがいないとダメみたいですね。

「あと少しです。俺たちの願いが叶うまであと少し。これが終わったら2人でゆっくり旅行にでも行きましょう?」

「そうですね、それがいいですね。」

これが終わったら母と祖母に言われた通り、幸せになるために人生を歩みたいとそう思う。

「さっ、今はまだスカナ国王側近のマリクでいてくださいね兄貴っ!」

「えぇ。」

気持ちが切り替えれた。そのあとは何より計画を進めることを第一に考え、遂行するために城内の部屋を回りムーマと共同で私たちの願いを叶えるための仕掛けをし続けた。




「ムーマ、この部屋で最後です。この次はあの王たちのいる場へいきます。おそらくサベルクの国王様、セドリック様もいると思います。隙をついてあなたはあなたの復讐を果たしてください。その後に私はあの男を殺しますから。」

「兄貴、ついに来たんだな。この日が、やっと来た。」

「そうです。やっと来たんですよ。」

そう、やっとこの場に立てたんだ。

やっと。






「これまでにも王族の初子が男だったことなんておそらく何度もあったんでしょう?」

「くっっっ!!そうだっ!!歴代の王の子の初子の中には男もいた!!」

「その人たちはどうしたんですか。」

「それは、、、、」

「言え。今すぐ殺すぞ?」

「王族の特徴を持っていなければ手切れ金を持たせ城から追い出すのだ。」 

私がそうだったようにか。私は生まれた瞬間に母に守られたのだな。

「それ以外の子はどうするのだ。」

「死体が証拠となっては困るので、城に幽閉するのだ。その後は好きにしていいことになっている。自分の奴隷とした王もいたと聞く。」

なんてことを、、、。

「それを、おかしいと思うまともな奴はいなかったということか。」

「おい!話しただろ!!私のことは殺すな!!!」

「いえ、私はお前を殺します。母と父を殺した報いをルイを苦しめた報いをこの場で受けるんです。」

「やめて!!!!」

声を荒げたのはルーチェの第一王女。

「なんですか。あなたも殺されたいんですか?」

「さ、逆恨みじゃない!!」

「は?」

「初子は女じゃないとダメだし、王族が平民なんかと結婚できるわけない!!あなたのお母さんが死んだのは必要な死よ!!」

---バチンッ

彼女の頬を叩いたのは・・・

「ルイ、、、?」


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