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しおりを挟む「ルカ、、、?」
今この人はルイではなくルカと言った。
「セドリック様がお聞きになりたいのは、ルイ様の中に何か別のものを感じているということで間違いないですか?」
「・・・はい、そうです。」
「私に聞いてきたということは本人からはまだ何も聞いていないのですね?」
「はい、まだ何も。父やルイの父である公爵にも話していません。」
初めて違和感を覚えたのはアスバル家とルイが初めて対面した日だ。
この日、ルーチェに帰りたくない、ルイを助けてと言ったんだ。
普通に聞くと自分のことを名前で呼んだだけ。何もおかしいことはない。でも、ルイが自分のことをそう言ったのは初めてだった。泣いたからかと思ったが、以前ルーチェの城で泣きながら自分の胸の内を吐露したときにも僕と言っていた。
それに、あのときのルイを助けては大切な人を助けてくれとそう言っているように聞こえた。
ルイが自由に庭を散歩するようになってから気づいたこともある。
子供のように無邪気にはしゃぐ時とじっと観察している時がある。僕に対してのテンション感は同じなんだが、興味あることに対して前者のときには手で触って確かめる傾向があるのに対し後者のときには匂いで確かめている印象だ。
そして、前者の時には決まって紅茶はミルク。後者の時にはレモン。
という違いがあることも分かった。
どちらもルイなのにルイが2人いるように感じてしまったんだ。
だからアンナさんなら何か知っていると思った。
「私が初めてルカ様を認識したのはルイ様が6歳の時です。ルカ様はルイ様の中にあるもう一つの人格です。お互いに認識はし合っています。ルカ様とルイ様が入れ替わる条件は眠ること。でも、ルイ様が眠ったからといって次がルカ様ということはありません。」
眠ること、、、そうか、だからか。
誘拐され助け出した直後は怖くなんてなかったと言っていたのに5分ほど眠ったあとには怖かったと言っていた。
急に180度違うことを言ったからよく覚えている。そうか、眠ったからだったのか。
「あなたはどうやって気づいたんですか?」
「ルカ様が私に教えてくれました。」
「なるほど、僕に詳しく教えていただきたいです。」
「えぇ。成長と共に完全に1人になった可能性もありましたので私から先にお伝えできませんでした。今もルカ様がルイ様の中にいるのであれば私は婚約者であるセドリック様に全てをお伝えする義務がありますね。」
アンナさんは全て話してくれた。
ルイの中にはルカという人格がある。
ルカはルイと年と性別は同じ、性格もほとんど同じでアンナさんは見分けることが出来なかったそうだ。
ルイの場合は1人で寂しかった、家族が欲しい。そんな思いがもう一つの人格を形成したのではないかというのがアンナさんの予想だ。
寂しさを2人で分け合い、実の家族からの罵詈雑言も2人で分け合っていた。
あれほど異常な環境にいて幼い子が1人で生きていくなんて不可能だ。精神的におかしくなったり最悪自死したりも可能性はゼロじゃなかった。そんな中でルイが自分を正常に保つためにルカという人格を作り出したんだろう。
アンナさんが言うにはルイのエビのアレルギーに気づいたのはルカのおかげだそうだ。
「ルカ様に、エビを食べると少し苦しくなるの。ルイはわがまま言ったらもっと嫌われるから我慢するって言ってるけどルイが死んじゃったら嫌だからアンナに言っとこうと思って。」
ルカは中からルイを守っていたんだ。
「ルイ様が表にいるときは頭の中でルカ様に話しかけられていたみたいですが、ルカ様が表にいるときはルイ様はぼんやり遠くから見ているような感覚みたいです。」
アンナさんがルイとルカ2つの人格を知ってから2年と少しの間の情報しかないから分からないことが多いみたいだ。
それでも、思ったより情報が多かった。
ルイとルカ、両方から聞けるといいが、ルカは僕のことどう思っているんだろうか。
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