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61 アンナside
しおりを挟むサベルクの者と会う。
レオがそう私たちに告げ、馬車に乗りはるばる魔法大国サベルクへとやってきた。
理由はわからないけれど友好関係にあるはずのサベルクがルーチェと揉め攻撃しようとしている。そんなことになればルイ様も無事でいるかわからない。
ただでさえ城に幽閉されているルイ様の安否を確認することができていないのだから。
抗議の文を送り続けたが特に状況は変わらなかった。
「直接話をつける。」
レオはそう決断した。
だが着いてみるとミケだけを連れ私たちは馬車に残るようにと。レオの独占欲が出てしまった。周りに見せたくないんだそうだ。外交の時までこうだとは思わなかった。
子供たちと広い馬車の中で過ごす中で窓の外も見るなと言われてしまったのでラフマとは違う景色を見ることもできず退屈していたその時だ。
バンッと勢いよく扉が開き、レオが私を抱き抱え走り出した。
獣人の身体能力が人間より遥かに高いとはいえこのスピードで走っているので揺れる揺れるで訳も分からずしがみつくしかなかった。せっかくお城の中に入れたのにサベルクの城の装飾すら見る暇もなかった。
さすがは獣人の子供たちだ。急に父が母を抱え走り出したというのにしっかり着いてきている。
1番小さい子はまだ1歳半だというのに人間よりも早く走るのだから驚きだ。流石に8人目なので私も慣れてしまったけれど。
「アンナ、お前が確認するんだ。」
そんな言葉をかけられ大きな扉が開かれた。抱き抱えたまま他国の方に会うなんて!そう思い身を捩り抵抗を伝えようとした時、目の前の男の子が視界に入った。
そんな訳ない。ありえない。
でも、、間違えるわけがない。
「っ、、ルイ様?」
「ぅん、、っ、、アンナぁ、、っぅぁ、」
目の前にルイ様がいる。
私の大切な大切なルイ様。
一人ぼっちにしてごめんなさい。寂しかったでしょう。あなたは胸の内を言わないけれど本当は人一倍寂しがり屋で甘えん坊で泣き虫なのを私は知っています。
あれから10年経ってルイ様は18歳のはずなのに小さい子供のように思える。
私の記憶が戻ったのはあなたのおかげです。あの日、ピンクの花火を見てルイ様を思い出しました。
自身の誕生日を家族から祝ってもらえないことを悲しく思いながらも口に出さずに黙ってピンクの花火を見上げるあなたのことを。
記憶が戻ってからというもの毎日毎日あなたが今どこでどうしているのか、元気なのか心配で心配でたまらなかった。
だから、
「アンナ、あのね!僕ね!セドと結婚するんだよ!セドがお嫁さんにしてくれるって!僕のこと好きだって!あとね!僕にね!お父様とお母様と兄様と姉様ができたの!」
嬉しそうにセドリック様のことや新しくできた家族のことを話してくれたルイ様を見て安心した。
良かった、ルイ様を大切にしてくれる方が私以外にも出来たんだと。
サベルクの国王様が気を利かしてくださりサベルクに数日滞在してはと提案してくださった。
通常なら断るところだが、私の気持ちを汲んでレオが許可してくれた。もちろん子供たちも一緒に、三日間滞在することになった。
「アンナ、お前の愛し子ならば私にとっても愛し子なのだ。だから私はルイともその家族とも仲良くなりたいと思うぞ。」
私にとって大切なもの、大切な人を同じように大切にしてくれるレオ。私はルーチェから命を狙われたおかげでこんな素敵な人に出会うことができた。これだけはルーチェに感謝していることだ。
これを言うと命を狙われたのに感謝などするなと怒られるのだけど。
改めてサベルクの方々に挨拶をさせていただいた。そのときもルイ様は興奮気味にルイ様の今の父である公爵様や兄であるベルト様を紹介してくださった。
「ルイ、アンナの愛し子は私の愛し子だ。困ったことがあればすぐに言うんだぞ。私がこの足で走って行くからな。」
「ラフマ国王様、ありがとうございます!」
「レオでよいぞ?」
「では、、その、レオ殿とお呼びしても?」
「あぁ、かまわん。サベルクの皆もそう呼んでくれ。私も殿、セドリック殿とお呼びする。」
私やルイ様を救ってくれた者たちが私たちのために手をとってくれましたよ。こんなに喜ばしいことはないですね。
ルイ様との再会を喜び、ルイ様が今幸せであることを喜んだ。
ふと、ルカ様のことを思い出した。
あの方は今もまだルイ様の中にいらっしゃるのだろうか。
そしてこのことを、セドリック様たちに話すべきなのだろうか。
そう思っていたところにセドリック様が訪ねて来られた。
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