【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

文字の大きさ
上 下
62 / 105

61 アンナside

しおりを挟む

サベルクの者と会う。

レオがそう私たちに告げ、馬車に乗りはるばる魔法大国サベルクへとやってきた。

理由はわからないけれど友好関係にあるはずのサベルクがルーチェと揉め攻撃しようとしている。そんなことになればルイ様も無事でいるかわからない。

ただでさえ城に幽閉されているルイ様の安否を確認することができていないのだから。

抗議の文を送り続けたが特に状況は変わらなかった。

「直接話をつける。」

レオはそう決断した。

だが着いてみるとミケだけを連れ私たちは馬車に残るようにと。レオの独占欲が出てしまった。周りに見せたくないんだそうだ。外交の時までこうだとは思わなかった。

子供たちと広い馬車の中で過ごす中で窓の外も見るなと言われてしまったのでラフマとは違う景色を見ることもできず退屈していたその時だ。

バンッと勢いよく扉が開き、レオが私を抱き抱え走り出した。

獣人の身体能力が人間より遥かに高いとはいえこのスピードで走っているので揺れる揺れるで訳も分からずしがみつくしかなかった。せっかくお城の中に入れたのにサベルクの城の装飾すら見る暇もなかった。

さすがは獣人の子供たちだ。急に父が母を抱え走り出したというのにしっかり着いてきている。

1番小さい子はまだ1歳半だというのに人間よりも早く走るのだから驚きだ。流石に8人目なので私も慣れてしまったけれど。

「アンナ、お前が確認するんだ。」

そんな言葉をかけられ大きな扉が開かれた。抱き抱えたまま他国の方に会うなんて!そう思い身を捩り抵抗を伝えようとした時、目の前の男の子が視界に入った。





そんな訳ない。ありえない。

でも、、間違えるわけがない。



「っ、、ルイ様?」

「ぅん、、っ、、アンナぁ、、っぅぁ、」

目の前にルイ様がいる。

私の大切な大切なルイ様。

一人ぼっちにしてごめんなさい。寂しかったでしょう。あなたは胸の内を言わないけれど本当は人一倍寂しがり屋で甘えん坊で泣き虫なのを私は知っています。

あれから10年経ってルイ様は18歳のはずなのに小さい子供のように思える。

私の記憶が戻ったのはあなたのおかげです。あの日、ピンクの花火を見てルイ様を思い出しました。

自身の誕生日を家族から祝ってもらえないことを悲しく思いながらも口に出さずに黙ってピンクの花火を見上げるあなたのことを。

記憶が戻ってからというもの毎日毎日あなたが今どこでどうしているのか、元気なのか心配で心配でたまらなかった。

だから、

「アンナ、あのね!僕ね!セドと結婚するんだよ!セドがお嫁さんにしてくれるって!僕のこと好きだって!あとね!僕にね!お父様とお母様と兄様と姉様ができたの!」

嬉しそうにセドリック様のことや新しくできた家族のことを話してくれたルイ様を見て安心した。

良かった、ルイ様を大切にしてくれる方が私以外にも出来たんだと。

サベルクの国王様が気を利かしてくださりサベルクに数日滞在してはと提案してくださった。

通常なら断るところだが、私の気持ちを汲んでレオが許可してくれた。もちろん子供たちも一緒に、三日間滞在することになった。

「アンナ、お前の愛し子ならば私にとっても愛し子なのだ。だから私はルイともその家族とも仲良くなりたいと思うぞ。」

私にとって大切なもの、大切な人を同じように大切にしてくれるレオ。私はルーチェから命を狙われたおかげでこんな素敵な人に出会うことができた。これだけはルーチェに感謝していることだ。

これを言うと命を狙われたのに感謝などするなと怒られるのだけど。

改めてサベルクの方々に挨拶をさせていただいた。そのときもルイ様は興奮気味にルイ様の今の父である公爵様や兄であるベルト様を紹介してくださった。

「ルイ、アンナの愛し子は私の愛し子だ。困ったことがあればすぐに言うんだぞ。私がこの足で走って行くからな。」

「ラフマ国王様、ありがとうございます!」

「レオでよいぞ?」

「では、、その、レオ殿とお呼びしても?」

「あぁ、かまわん。サベルクの皆もそう呼んでくれ。私も殿、セドリック殿とお呼びする。」

私やルイ様を救ってくれた者たちが私たちのために手をとってくれましたよ。こんなに喜ばしいことはないですね。

ルイ様との再会を喜び、ルイ様が今幸せであることを喜んだ。

ふと、ルカ様のことを思い出した。
あの方は今もまだルイ様の中にいらっしゃるのだろうか。

そしてこのことを、セドリック様たちに話すべきなのだろうか。

そう思っていたところにセドリック様が訪ねて来られた。


しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)

皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...