【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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---コンコン

中から返事が聞こえたのを確認し扉を開ける。王子たちはもう寝たのだろう、ご夫婦2人でゆったりとした時間を過ごしていたところに押しかけて申し訳ないなと思いつつも話さなければいけないことが2つある。

「夜分遅くに申し訳ありません。アンナさんに話したいことと聞きたいことがありまして。」

「私は外していたほうが良いか?」

「いえ、大丈夫です。他国の王妃様と部屋で2人きりはまずいですから。」

「あぁ、外せと言ったら殴っていたかもしれんぞ。」

この王は冗談なのか本気なのかよくわからない。アンナさんのことに関してはまあ、本気だろうな。

「僕がルイと出会ってからこの国に連れ出すまでに見たこと聞いたことをあなたには話しておかなければならないと思いまして。」

「えぇ、ルイ様は聞いても大丈夫だったとしか言っていませんでしたが私はそう思っておりません。ありのままを聞かせていただきたいです。私はルイ様がひとりぼっちなのを知っていたのに、言葉にはしないようにされていたけど寂しくて仕方ないのを知っていたのに結果として1人にしてしまった。」

「だがそれは!」

レオ殿が声を荒げた。気持ちはわかる、アンナさんは自分が悪いように言ったがそんなことあるわけがない。全てあの国が悪いんだから。

「レオは黙っててください。ルーチェという国に私は消されかけました。でもそれはルイ様が寂しく思ったことの言い訳になりますか?私にも、レオにも、失礼ですがセドリック様にも、ルイ様の気持ちなんて理解できるわけがありません。あの方は、、っ、、、」

そう、ルイのことをどれだけ愛したって大切にしたってルイの18年が消えるわけじゃ無い。

未だに、これまでとのギャップがすごくて失うのを怖がっているルイはいる。プロポーズの際に少し不安は拭えたようだが、一生孤独の寂しさを忘れることなどないんだと思う。

「ルイ様は、わがままを言わないお子様でした。わがままを言わなければ自分も愛してもらえるとそう思っていました。」

アンナさんは24時間共にいられた訳では無いそうだ。3歳まではかなり長い時間共にいたがそれ以降は食事の時と勉強の時間のみ共にいられたと。

「ルイ様は優秀でしょう?勉強の時間なんてわざわざ設けなくても常に本を読んでいる方でした。本の世界に集中していると他のこと忘れられると言っていました。」

ルイの才は僕も父も公爵も驚くほど。
だが生まれ持ったものじゃない。ルイが必死に勉強して頭に叩き込んだ結果なんだ。

「記憶が戻った時、最初に思い出したのがルイ様のことでした。自分が襲われたことよりもなによりもルイ様のことを思い出して、あの子をあの地獄に置いてきてしまったと絶望しました。殺されてしまっていたらどうしようと最悪のことも考えました。」

私と出会わなければルイは死んでいたかもしれない。ルイと出会ってから連れ出すまでにあったことを包み隠さず伝える。

「っ、、ルイ様っ、、苦しかったでしょうにっ、、」

「ルイはここに来たばかりのころ、布団の中によく入っていました。部屋が明るすぎて慣れなかったんだと思います。日差しが強いわけでもなかったのに僕らにとっては普通の明るさなのにルイにとっては眩しくて遮断してしまうほどの明るさだった。そのことがとても、悲しく思いました。」

「私自身、幼い頃からルーチェ教を教え込まれ生きてきましたから初めは嫌々お世話につきました。秘密を守る分お給料は高かったですから。でも、ルイ様は本当に優しくて賢くて、この子のせいで国が不幸になるなんておかしいと思いました。」

言葉にならないのだろう、涙をポロポロ流すアンナさん。その方をレオ殿が支える、きっとアンナさんは記憶が戻ってからずっとこうしてルイのことを思い出し苦しんだんだろう。

「ルイがあんなに優しくて素直で賢いのはアンナさんのおかげですね。」

「私の?」

「はい。それにルイはここに来てから声を出して泣くことはありませんでした。でもアンナさんの前ではあんなにワンワン泣けた。僕はそれが嬉しいです。」

「っぅ、、、本当に、、無事でよかった。・・・セドリック様、改めましてルイ様を助けていただきありがとうございます。そして、これから先ルイ様のことを幸せにしてください。私とお約束してください。もう2度とルイ様に孤独を味合わせない、と。」

「お約束します。王太子としてではなく、1人の男して。」

「1人の男として、か。やはり私はお前たちが気に入ったぞ、セドリック。これからが楽しみだ。」

「レオ殿にも感謝申し上げます。ルイとアンナさんが再会できたのはあなたのおかげですから。」

「そういえばセドリック様、聞きたいことがあるとおっしゃっていましたが。」

そう、ここに来た1番の目的と言ってもいいかもしれない。

「アンナさんなら知っているのかと思いまして。」

「なんでしょう?」

「ルイの体についてあなたしか知らないことがあるんじゃないかと、思ったんです。」








「・・・ルカ様の、ことでしょうか。」
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