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しおりを挟む「アン、、ナ、、、?」
ラフマの王から離された話。
王妃の名前はアンナ?
「あぁ、我が愛しい妻の名はアンナだ。アンナが後悔していることなのだ。ルーチェという国では初子が男であると災いが起きるという意味のわからない宗教を信じきった王族が初子であるルイを城に幽閉し、さらには暴言も吐いているという。アンナも初めはその宗教の教えを信じていたがルイを育てるうちにそんなの間違っていると思い何度も王に抗議していたそうだ。おそらくそれで消されかけた。」
ラフマの王が語るのはルーチェの話。
「だから我々は一刻も早くルイを救い出さなければならない。アンナがそばにいない10年間あの国でルイがどうなっているか分からない。それに私はアンナをあれほどまでにボロボロにしたあの国を許すことができない。だから、そなたたちに邪魔されたくないのだ。分かってくれ。」
「ラフマ国王っ、、アンナに、、会わせてもらえませんかっ。」
「そなた、リユベ語が出来るからと調子に乗るでない。我が愛しき妻をそう簡単に他人に合わせるわけがなかろう。それに、何故呼び捨てにする。許されると思うのか。」
殺気の籠った目線に何も言えなくなる。怖い、足がガクガク震え今すぐここから逃げ出したくなる。
「ラフマ国王、私はこのルイの婚約者で王太子のセドリックと申します。私から一つお話しさせていただきたいことがございます。」
「なんだ、」
セド、、、?
「お2人の馴れ初めを聞きましたので私たちのもと思いまして。今から10ヶ月ほど前のことです。私はある国の王女の誕生日パーティーに参加した際、このルイに一目惚れしました。しかしルイはその国では生まれてないことにされており両親からもひどい言葉を投げつけられ実の妹弟からも暴力を受け、アレルギーがあるのにも関わらずそれを食べさせられ命の危険に陥りました。そんなルイを2ヶ月ほど前、その国から救い出しました。ルイは男だから。そんな理由で酷い目にあっていたんです。ルイが初子であり、男であるから国に不幸が訪れるのだと自分たちの無能を全てルイのせいにしていました。」
ラフマ国王の目が見開かれる。
僕を、ルイを凝視する。
「ルイの名は今はルイ・アスバルです。あの国に戸籍がなかったのでこの国で作りました。ですがルイには、実の親から名乗るなと言われたもう一つの名前があります。」
「そなたの名は、、っ、、
ルイ・レストか?」
「はいっ、アンナはっ、、僕にとってっ、、ぅ、、、」
「アンナをここへ連れてくる。待っておれ。」
さすがは獣人、声を出す前にもういない。人間の20倍の身体能力、か。
人間が獣人に使う言葉ではないと思うけど、早く、早く来て。もっと早く。
アンナは本当にあのアンナなの?
死んでしまったと僕には伝えられていた。でも生きていたの?僕の大事なアンナ。
「ルイ、ドアの近くで待っていよう?」
急に知らされた事実に頭が混乱しているままだったがセドがそうして少しでもあんなと早く会えるようにドアの近くまで連れて行ってくれた。
なのでドタドタと走る音が聞こえてくる。1人のものではなく大勢のもの。
「レオ!なんなんですか急に!!みんな気になってついてきてしまいましたよ?いいんですか?」
「いいんだ!!アンナをどうしてもここに連れてこなきゃいけなくてっ!!」
そんな会話が聞こえた直後、綺麗な女の人を腕に抱いたラフマ国王がドアを勢いよく開けた。
---バンッ
「・・・・・・」
誰も何も言わない。
アンナに一歩近づくと僕の顔を見たアンナが目を大きく見開き涙を浮かべる。
それを見たラフマ国王がアンナを下ろし、背中をトンと押した。
僕の背中もセドに押された。
それが合図だったかのように僕とアンナは抱きしめ合った。
「っ、、ルイ様?」
「ぅん、、っ、、アンナぁ、、っぅぁ、」
「ルイ様っ、、ぅ、、ごめんなさぃ、、っあなたを置いて行ってっ、ごめんなさいっ、、ぅ、、」
ここに来てからも何度も涙は流したけれどもこんなに声を出して泣いたのはいつぶりだろう。
「ルイ様、大きくなられましたね。アンナにお顔をしっかり見せてください。」
「アンナ、あのね、僕ね、18になったよ!あのね!セドがね!助けてくれたの!!」
これまでのことを話したいのになかなか言葉がうまくつながらない。この、アンナの温もりが心地よくてアンナに抱きしめられたまま泣いて話してを繰り返した。
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