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しおりを挟むただでさえ僕の声は汚いのに、泣きながらなんてもっと汚い。そんな声を出してしまった。どうしよう、セドや夫人に嫌われたくない。一度あげた顔をまた下げる。
僕の手を握っていた夫人の手に力が籠ったのを感じ、ゆっくりと恐る恐る顔を上げると夫人が涙を流しながら僕の手を強く握っていた。
「辛かったわね、、っ、、もう行かなくていい、あなたの母はこれから私よ。あなたの家族は私たちなの。これから嫌になる程あなたに家族としての愛を捧ぐから。」
嬉しかった。嬉しさと涙で体が震えるほどに嬉しかった。
「ルイ、僕は君を手放す気はないよ。ルイ、僕の愛しい人ずっとそばにいる。君を絶対に守り抜くと誓うよ。」
昔読んだ本の物語にあった。城に閉じ込められたお姫様が王子様に助け出される話。
そんなうまい話あるわけないって思いながらもいいなぁと思っていた幼い僕。夢のようなこの状況は現実だ。僕はお姫様ほど美しくもないけど、王子様は現実にいたんだ、助けてくれる王子様が。本当に国の王子ではあるんだけど。
「さ、あなたの家族になる人とお話しさせてちょうだい?いいですわね?セドリック様。」
「えぇ、この場は夫人にお任せしますよ。」
「さあさあ、こっちよ。」
夫人が後ろに回って僕の車椅子を押してくれ、アスバル公爵、ベルト様、リルラ様のところへ連れてきてくれた。
「あ、あの、、僕、ル、ルイと言います。アスバル公爵様、僕を養子にしてくれること感謝申し上げます。」
「そんなに硬くならなくていいんだよ。私たちは家族なんだから、公爵様なんて壁のある呼び方じゃないほうが嬉しいな。」
「そうよ、ルイくん。この人ったら可愛らしい息子ができること嬉しがってたのよ!ほら、ベルトは熊みたいでムキムキで可愛くないでしょう?」
「母さん、そんなこと言うなよ。ムキムキで悪かったな。」
ベルト様、このお2人のご子息。
「ルイ君、こんにちは、ベルトといいます。ずっと弟が欲しかったんだ。兄様って呼ばれたいな。」
「にい、さま。」
僕は初子だから、誰かを兄様なんて呼ぶのは初めてですごい変な感じ。嬉しい。
「ベルトどいて!!もう我慢できない!!」
そう言って僕に近づいてきたのはリルラ様。セドのお姉様って言ってた。
ベルト様を押し除けてこちらに向かってくる。何かいけないことしたんだ、リルラ様は僕がこの国に来たことに反対してるんだ。
怖くて目をギュッと瞑ると、フワッと甘い匂いがして体が誰かに抱きしめられたのが分かった。
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