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前途遼遠
LV271 フミヤに転機
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ヴィオラが導きの塔で修練を積む頃、フミヤにも転機が訪れてた。
「お前クビね」
「えっ⁉」
「クービ」
「オーナー、ちょっと待ってくださいよ!」
モンペロに出勤早々、フミヤはジンに解雇を言い渡され狼狽えている。
「何故? 俺、ここでずっと働きたいですよ」
「……」
「なんとか言ってくださいよ、オーナー!」
従業員の皆が心配そうな眼差しをフミヤへ送っている。
「その件に関しては私から説明致しましょう」
「えっ」
フミヤは残念そうに天を仰いだ後、声のする入り口を見る。
「出たよ! この聞き覚えのある嫌な感じ……」
ヘーラーである。全く別人の女性の形《なり》をしているが、今やフミヤは気配で分かる。それ程に、フミヤは神に対して拒絶反応を示していた。
「堂々と登場するようになったよね」
「今は人間の体を借りし姿。よってどこからどう見ても人間の私は人々の前に現れても大丈夫なのです」
(また勝手な言い訳してる)
「勝手ではありません。一応、神界のルールに乗っ取っての事です」
「心を読むな‼」
「何度も言いますが、聞こえるのです」
「もういいよ。そのくだり……」
「と言う訳だ」
「オーナー。『と言う訳』って、意味が全然分かりませんけど!」
ジンがフミヤに解雇を言い渡したのは、トーレムグレイグ王の頼みによるものだった。前日、ヘーラーは王にジンの呼び出しを命じ、密かに三者による会談が行われていたのだった。
「だから、なんでクビなんですか?」
「お前の神スキルのためだそうだ」
「神スキル? もう持ってますよ」
「あなたは、神スキルを全種与えられてから全くそれを極めんとしません。それ以前に発動すらさせていないものもあるはず」
「うっ……」
「このままではあなたは勇者の救世主どころか足手まといになってしまいます」
「俺って行くの決定なの?」
「全人類の運命がかかってるんだ。仕方ないわな」
「オーナーまで……」
「さっきはああ言ったが、クビってのは大げさで当面の間、休職ってやつだ」
「そうなんだーよかった。ってなんで勝手に決められてんだよ!」
*フミヤ乗りツッコミをした。
「あなたにはこれから神界に来てもらいます。そこで、各神よりスキルについて学ぶのです」
「は? これから?」
「神界へ人間が来るなんて、異例中の異例なのですよ」
「おいおい、進めるなって」
「そうしなければ、間違いなくこの世界は滅びます」
「フミヤ行って来い! その間の給料は保障すると王も言ってくれてる」
「だから、そう言うんじゃなくて……俺はまだ行くって言ってないし!」
「さあ、行きますよ」
ヘーラーはフミヤの首根っこを掴む。
「嫌だ――――!」
叫びながら引きずられていくフミヤを、モンペロ店員達は温かい目で見送っていた。
「お前クビね」
「えっ⁉」
「クービ」
「オーナー、ちょっと待ってくださいよ!」
モンペロに出勤早々、フミヤはジンに解雇を言い渡され狼狽えている。
「何故? 俺、ここでずっと働きたいですよ」
「……」
「なんとか言ってくださいよ、オーナー!」
従業員の皆が心配そうな眼差しをフミヤへ送っている。
「その件に関しては私から説明致しましょう」
「えっ」
フミヤは残念そうに天を仰いだ後、声のする入り口を見る。
「出たよ! この聞き覚えのある嫌な感じ……」
ヘーラーである。全く別人の女性の形《なり》をしているが、今やフミヤは気配で分かる。それ程に、フミヤは神に対して拒絶反応を示していた。
「堂々と登場するようになったよね」
「今は人間の体を借りし姿。よってどこからどう見ても人間の私は人々の前に現れても大丈夫なのです」
(また勝手な言い訳してる)
「勝手ではありません。一応、神界のルールに乗っ取っての事です」
「心を読むな‼」
「何度も言いますが、聞こえるのです」
「もういいよ。そのくだり……」
「と言う訳だ」
「オーナー。『と言う訳』って、意味が全然分かりませんけど!」
ジンがフミヤに解雇を言い渡したのは、トーレムグレイグ王の頼みによるものだった。前日、ヘーラーは王にジンの呼び出しを命じ、密かに三者による会談が行われていたのだった。
「だから、なんでクビなんですか?」
「お前の神スキルのためだそうだ」
「神スキル? もう持ってますよ」
「あなたは、神スキルを全種与えられてから全くそれを極めんとしません。それ以前に発動すらさせていないものもあるはず」
「うっ……」
「このままではあなたは勇者の救世主どころか足手まといになってしまいます」
「俺って行くの決定なの?」
「全人類の運命がかかってるんだ。仕方ないわな」
「オーナーまで……」
「さっきはああ言ったが、クビってのは大げさで当面の間、休職ってやつだ」
「そうなんだーよかった。ってなんで勝手に決められてんだよ!」
*フミヤ乗りツッコミをした。
「あなたにはこれから神界に来てもらいます。そこで、各神よりスキルについて学ぶのです」
「は? これから?」
「神界へ人間が来るなんて、異例中の異例なのですよ」
「おいおい、進めるなって」
「そうしなければ、間違いなくこの世界は滅びます」
「フミヤ行って来い! その間の給料は保障すると王も言ってくれてる」
「だから、そう言うんじゃなくて……俺はまだ行くって言ってないし!」
「さあ、行きますよ」
ヘーラーはフミヤの首根っこを掴む。
「嫌だ――――!」
叫びながら引きずられていくフミヤを、モンペロ店員達は温かい目で見送っていた。
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