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新生活

友だちになりたい

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 ゴブリンキングが一歩下がる。鉄次郎が一歩近づく。ゴブリンキングがまた一歩下がった。
 困った。言葉が通じない上、態度で敵意が無いと示しても伝わらない。こうなったら長期戦か。鉄次郎はその場に胡坐をかいた。

「……ゴァ」

 困惑しているのが分かる。とりあえず、この集落を襲わないということが伝わればいいのだが。

 ちょいちょい。
 手招きをしたが効果はなかった。ジェスチャーが人間とは違うのかもしれない。

「さすがに来ないか」

 理解出来たとしても来ないことは分かっていた。なにせ、鉄次郎はゴブリンキングを一発で倒した相手なのだ。友好的な態度を見せても信用出来るわけがない。今、このゴブリンキングは里の危機から守る番人だ。彼を落とさなければ先には進めない。

「キ」
「おや?」

 そんな時、背中をとんと叩かれた。見ると、子どものゴブリンがこちらを見て立っている。遊びから返ってきたのだろうか。

「はは、愛らしい」
「ゴァア!」

 ゴブリンキングがこちらに走ってきた。子どもを守るためだろう。これ以上勘違いされたら大変だ。鉄次郎は子どもゴブリンの頭を一撫でしてから、里の方に背中を押した。

「皆のところへお帰り。親御さんが心配する」
「キィ~」

 ゴブリンがにこりと笑って歩いていった。その様子をゴブリンキングが呆然と見つめる。
 子どもゴブリンがゴブリンキングの前まで行ったところで、それを家に隠す。なるほど、こうして同じ種族を守る感情があるならば、意思疎通が出来るようになるかもしれない。

「ペットだって飼い主の言葉や表情を読み取ることが出来る。ゴブリンならもっとこちらの言語を理解出来るはず。これはいいぞ」

 今日のところはこれで十分だ。鉄次郎はゆっくり立ち上がった。

「いきなりお邪魔して申し訳ない。また明日」

 手を振って森に足を向ける。ゴブリンキングが追ってくる様子はなかった。







「はああ? ゴブリンの里に? 一人で?」

 勉強が終了したシルアに今日のことを報告したら、飽きれた声を出された。

「いや何、知能が高そうだから、良い友人になれないかと思って。ついでに家作りの手伝いをしてもらえたらと」
「どうしてそうなっちゃったんですか」

 今朝、家のデザイン図を描こうとしたら全然出来ず、途方に暮れてゴブリンのところに行ったことを伝えた。シルアは大きく息を吐いた。

「もう。鉄さんてば、強いからって敵に一人で突っ込んで行かないでください。私が手伝いますし」
「それはすまなかった。でも、ゴブリンは敵ではないと思う」
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