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新生活

ゴブリン村

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「待て待て、待っておくれ。敵じゃないから。いや、一度は倒したけれども、それはそちらが襲ってきたから致し方なく」

 説明しても止まってくれるはずもなく、森を抜けるまで追いかける羽目になった。
 よく考えずとも、見知らぬ人間が近づいてきたら逃げるのは当然だ。どうしたものか。

 すると、集落らしきものが見えてきた。もしかしなくとも、ここがゴブリンの住処なのだろう。
 王都から見れば随分質素な、言うなれば縄文時代にタイムスリップしたような。しかし、自然にあるものだけでここまで作ることが出来るとは、思った以上に知能が高そうだ。

「キィ!」

 逃げていたゴブリンが手前の家に潜り込んだ。隠れられてしまった。今日はここまでか。踵を返そうとしたところで、奥の方からゴブリンキングが出てきた。キングと呼ばれるくらいだから、沢山はいないだろう。昨日相手にしたゴブリンかもしれない。

「よかった。元気そうだ」

 ゴブリンキングも鉄次郎に気が付き一瞬憎悪に満ちた顔をしたが、諦めたのか、持っていたこん棒を下ろし、じっとこちらを見つめるに留まった。

「私がここまで襲いに来たとおもっているのかな」

 逆の立場だとして、自分より強いモンスターが人里に下りてきたとしたら、里を潰そうとしていると考えてもおかしくない。さながら鉄次郎はゴブリンにとっての魔王か。

「えー、ゴブリンキング。私は戦いに来たのではない。仲良くしたいのだ」

 両手を頭の上に上げ、敵意が無いことをアピールする。ゴブリンキングは無表情のままだ。やはり、人語は通じないのか。

「しかし、ここまでの集落を作るのはなかなか難しい。ゴブリン同士は共通の言語があり、考えて作る能力もあるのだろう」

 そうならば、もしこちらの言葉が分かる時が来たら、共存の道も考えられるのではないか。
 妖精族は人語を話すことが出来、職にも就いている。ゴブリンにも出来たら、お互い憎み合わなくて済む。

「うーん」

 腕を組み、首を傾げる。良い方法があればいいのに、一人では思いつかない。悩んでいると、ゴブリンキングが後ろにいたゴブリンに声をかけ出した。

「ゴァッ」
「ギッ」

 ゴブリンがそれぞれの家に隠れる。彼が集落の長というわけか。

「ゴブリンキング、少々近づくぞ」

 通じないと分かっていても、話しかけてから一歩近づいた。
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