そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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新生活

動物ではないです

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 鉄次郎の言葉にシルアが反論する。

「それは、鉄さんがここに来たばっかだから知らないだけで、結構被害に遭ってるんですから」
「うむ。それも事実だろう。しかし、例えば、田畑に害を成す虫や猪とは違って、ゴブリンはかなりの知能を持っている。今はただ知らない者が来たら攻撃しているという状況だが、きっと意思が通じ合えば違う道が待っている」
「う~~~~~ん」

 シルアは腕を組み、首を傾げた。悩んでいるのだろう。鉄次郎も勝手なことを言っていると自覚している。ただ、むやみな争いが避けられたらいいに越したことはない。

「大丈夫。無理はしない。王都の人々に迷惑をかけないと約束する。もしも、ゴブリンたちと和解出来たら、その時は共存という未来を考えてほしい。それだけだ」
「まあ、それなら」

 鉄次郎は王都に住むことを許されても、まだまだ余所者。その自分がいきなりおかしなことをして、ゴブリンたちを引き入れたら迷惑極まりない。少しずつ、お互いが歩み寄れたら。それが一番の希望だ。

「その時は、まず皇帝に伺いを立てねば」
「お父様は多分大丈夫ですよ」
「そうなのか?」
「うん。妖精族をここで暮らせるように提案したのはお父様だし。人間族以外とも仲良くしたいとは思ってるみたいです」
「それはそれは素晴らしい」

 もしかして幸運な土地に転移したのかもしれない。国の長が共存に力を入れてくれるならば、きっと近い未来、急速に発展するだろう。

「とりあえず、見せてください。紙」
「はい」

 デザインを描いた紙を渡す。シルアが首を傾げた。

「これは……牛?」
「家、だね」
「こっちは船?」
「家の内部、だね」
「おおう……」

 シルアは頭を抱えた。鉄次郎は頬を掻いた。

「ゴブリンにも助けを求める気持ち、理解しました」
「すまない」
「いえいえ! よし! じゃあ私が手助けします!」
「ありがとう、宜しく頼む。絵を描いてくれるんだね?」

 ゴブリンとの対話は時間がかかりそうなので、身近に助っ人が現れて助かった。シリアが立ち上がる。

「はい。ルルが」
「シルアさんじゃなく?」
「私も絵は苦手です」

 仲間だった。
 二人で王宮に入る。ルルは授業の時間以外は中庭にいることが多いらしい。

「それにしても、ルル皇女はすごいね。まだ幼いだろう」
「八歳ですね。少なくとも私の十倍は上手です。あ、いたいた」
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