偽りオメガの虚構世界

黄金 

文字の大きさ
上 下
29 / 79

29 ミツカゼの執着

しおりを挟む

 僕と鳳蝶で話し合った結果、サブ垢ジンは取り戻し、もしアカウントが壊れていれば諦めて警察に突き出すと言う事にした。
 何故最初から警察に突き出さないかと言うと、盗んだのが仁彩のサブ垢のみというのと、警察が介入すると証拠としてジンのデータは没収されると聞いたからだ。
 最悪戻ってこないし、解析にかけられてデータはバラバラになるだろうと教えてもらった。
 他にも被害者がいるならともかく、自分のアカウントだけなら、そこまで警察にこだわっていない。
 泉流歌の父親は娘可愛さに我儘を聞いたつもりのようだが、盗みは盗み、全部解決したらそれ相応の対応を伯父さんがしてくれると保証してくれた。

「まずはそのフリフィアにある僕のジンをどうやって取り戻すかだね!」

「うーん、フリフィア関係の人間、知ってはいるけど仲良くも無いんだよなぁ~。」

 僕達は今、『another  stairs』で作戦会議中だ。アゲハの喫茶店はアゲハ本人と仁彩の本垢のみ入れるよう許可を変更している。
 ツキ君達とはパーティーも解消されているし、アゲハは問題ないと言っていた。
 けど……………。
 ポン。
 ピコン。

「あの、アゲハのチャットずっと鳴ってない?返事してあげないの?」

「……………んー、気が向いたら。」

 僕は今本垢なのでフレンドはアゲハ一人しかいないけど、アゲハはフレンド欄にツキ君、ミツカゼ君、フミ君がそのまま残っている。

「それ、全部ミツカゼ君なの?」

「………まあ、ほぼ?」

 ふ、ふーん。
 二人は何か進展してるのかな?僕は少しそこらへん疎くて、察しも悪い。頭悪いせいかな?
 あんまり突っ込んだ事言っちゃいけないかなと遠慮してしまって、詳しく二人の関係を聞き出せずにいる。
 鳳蝶は僕と識月君の事を何も言わなくても理解してくれているのに、僕は親友失格だ。

「オレの事はいーよ。まずは仁彩のサブ垢取り戻すのが先!」

「う、うん。困った事があったら言ってね?」

 アゲハは僕の髪をくしゃくしゃと回した。
 僕は今本垢で死神装備でここにいる。
 『another  stairs』はサブ垢を一つしか持てないので、ジンが帰って来るまで本垢で過ごすしか無い。
 なるべく識月君達と会わないようにしなければならない。
 
 ピポン。
 ポン。

「…………とりあえず僕は一人で偵察に行ってくるから、アゲハはミツカゼ君の話を聞いてみたらどう?」

「…………そーだな。」

 一人で大丈夫かと心配するアゲハを置いて、僕はツキ君の近くに飛んだ。
 場所はアゲハのフレンド欄から確認した。





 フレンド欄で見た時も思ったが、知らない町に飛んでいた。
 関西か、それよりももっと下の方かもしれない。
 運営直営の町は国内至る所に設けられている。冒険者協会があり、多数の店舗と人が触れ合う場が多く作られているのが特徴だ。
 今現在漆黒の大鎌と不穏な気配は出していないけど、僕のボロいローブはなかなか目立つようだ。
 近くのお店に行って適当な村人の服を購入し着替えた。
 このゲームって面白い事に、本当に服を脱ぐ事も出来れば、スクリーンを出してアイテム装備を押せば勝手に瞬時に着替える事もできる。
 あれかなー、セックスのお楽しみの為かなぁ~と考えて一人恥ずかしくなる。

「あ…………!」

 いた。
 ジンとツキ君だ。
 ミツカゼ君はアゲハが呼び出すと言っていたし、フミ君はログインしてなかったから、今は二人で歩いている。
 今はまだ九月。秋イベ中だけど、運営経営の町は非戦闘地域に設定されている。
 町の中にいるということは、デート中!?
 僕のジンが楽しそうに笑って、ツキ君が微笑んで頷いている。
 ツキ君がプレゼントしてくれた羽と葉っぱのピアスをジンが触って、それを二人が嬉しそうに笑い合っていた。

「…楽しそう。」

 僕のツキ君だったのに。
 僕にだけそうやって笑ってくれてたのに。
 
 二人が消えた先を見た時、僕は顔を引き攣らせた。
 だってここ、前に来たとこと一緒だ。
 宿がいっぱいある所。

「………なんでぇ…?」








 
 フレンドチャットを開くと何百件という受信。
 来たの?
 一緒に討伐しよ?
 会いたい
 喫茶店行っても良い?
 なんで無視するの?

「……………ヤンデレ?」

「違うよ。」

 アゲハの肩がビクゥと上がった。
 振り返るとミツカゼがいた。
 さっき呼ぶつもりで鍵の認証を許可しておいたのだ。
 
「……びびった。」

 許可して一分も経っていない。
 たまたま?それとも、ずっと来ようとしてた?
 来ようとしてたなら、怖いな…。
 
「ねぇ、どーして最近来ないの?昨日も久しぶりに来たと思ったらすぐ帰るし。」

 ミツカゼが近付いて来てカウンターに手をつく。両腕の間にはアゲハが挟まれた。

「…………ちょっと、用事が出来ただけだ。暫く掛かりそうだからお前には伝えとこうと思って……。」

 なんかヤバそうな雰囲気に、とりあえず機嫌を取らねばならなそうだと考える。

「それ、いつ終わるの?」

「それは、なんとも……。わかんねぇんだ。」

 そう言うと、ミツカゼの表情がごっそりと抜ける。
 鳳蝶は割と人の性格を見抜く方だ。
 だから、コイツは近付きたくなかった。
 絶対性格がもう一つある。
 アルファは自分を隠すのが上手い。
 自分の執着に対する異常性を隠し、正当化するのが上手いやつだらけだ。
 そんなアルファの中にも序列がある。
 青海光風は上の方だと鳳蝶の勘が伝えていた。上に行けば行く程、おかしな奴だらけになる。

「じゃあ、今日やっとかなきゃ。」

「……………は?」

「アゲハ、装備解いて。」

 ずしりと圧力が掛かる。

「…あ゛っ……!」

「ほら、早く!もっと強くしちゃうよ?」

 震える手で出したスクリーンから装備を解く。アルファの威圧が強すぎて上手く動かない。
 良く出来たねとアゲハの頭を撫でて来るミツカゼが、今は得体の知れないものに見える。

「今日は逃げちゃダメだよ?多分俺の方が先に消えるだろうから、それまでいてね?」

 カウンターに押さえつけられ服に手を入れて来る。
 胸の突起をクルクルと回す指が気持ち良く、口を押さえて喘ぎを堪える。
 身体が震えるのは快感からか、恐怖からか。
 威圧をそのまま受け続け、徐々に脱がされていく服をどうする事もできない。

「………はっ………ぁ。」

 まだ胸を触り腹を撫で回されただけで勃ち上がった自分のものに、アゲハは狼狽えた。

「……絶対、リアルでも相性いいと思うのになぁ……。」

 ミツカゼは勃ち上がったペニスをスリスリと愛しい物のように撫でる。
 トンと押されてカウンターに並べられた丈の高い椅子に座らされた。

「んふふ、今日はここもちゃんと可愛がるからね。この前は急ぎすぎちゃったしね。」

 ミツカゼは床に座りアゲハの足の間に座り込んだ。
 プルプルと震えるそれをパクりと咥え込む。

「………んむぅっ!…………やっ、あっ!」

 ガタガタと暴れると小さめの椅子から落ちそうになり、アゲハは慌ててカウンターにしがみついた。
 クチュクチュと温かく粘つく感触に腰が抜けて来る。
 コイツ、前も咥えられたけどアルファのくせになんで上手なんだ!

「ひゃあぁぁぁっ!」

 ズゾゾと吸い付きながら舌と唇で撫で回され、堪らず悲鳴を上げる。

 ビュルビュルと出る感覚にガクガクと震えた。
 ミツカゼの粘つく舌をベロリと出して唇を舐め上げる様を態とらしく見せつけられ、アゲハは羞恥で更に体温が上がる。

 気付けば後孔に指を入れ、グルグルと拡げるように回されていた。

「俺、上手いでしょ?この前アルファとやる時さぁ威圧で上下決めるって言ったでしょ?大概の奴は自分が上だと思うんだよねぇ。そんで負けて下になった時、チンコ元気失くしちゃうんだよね。だから無理矢理勃たせてやんの!」

 出して柔らかくなったアゲハのペニスを、ミツカゼはゆっくりと扱いた。

「……………触んなっ……!」

 ミツカゼはウットリとアゲハの股間を舐め回すように視姦する。

「そんで、勃たせて射精するとさぁ、皆んな心が折れて大人しく抱かれんのよ、これが。でもアゲハは最初から少し弄っただけでビンビンに勃つしさぁ、やっぱオメガかなって思うんだよね?…………どー考えても抱かれる側でしょ?」

 やけに説得力のある言葉に息を呑む。
 ギラギラと光る瞳がアゲハを竦ませ、動かなくさせた。

「リアルで会ってくれないなら、こっちでも良いから会ってよ。」

 アゲハはフルフルと首を振った。
 とてもじゃ無いけど会いたく無い。会えば自分が流されると分かっている。
 ミツカゼに流されてしまう。

 まだ充分に拡げ終わっていない穴へ、ミツカゼは自分のペニスを押し当てた。
 グリッと入りそうな圧迫に、アゲハは震えた。
 また、流される。
 いつもそうだ。
 二人きりになって、ミツカゼがやると言ったらそういう流れになってしまう。
 
 クププと先っぽが入った。

「ね?会うって言って。」

「………な、んでオレ、だよ?」

 まだほんの数センチしか入っていないのに、ゾクゾクと尾骶骨が震え、アゲハの言葉は弱く辿々しくなる。

「ん~?分かんない。」

 ズプッと一気に入ってきた。
 アゲハの喉がそり返り、声にならない喘ぎが漏れる。
 ズプッズプッと引いては押して、ゆっくりと味わうように奥まで入ってくる。
 一番奥まで入り込み、アゲハの乳首をチュウと吸っては楽しそうに見上げてきた。
 ペニスも一緒に扱かれて、アゲハは椅子から落ちないようにするので精一杯である。
 
「会うよね?」

 重苦しく威圧を掛けながら、アゲハに頷かせようとするミツカゼに苛立ちながらも、頷きそうになる自分がいる。
 それがまた腹立たしい!

 ズルルル~と抜いては勢いよく奥を突かれて、落ちそうになり咄嗟に手を伸ばすと、ミツカゼに抱き止められた。
 触れ合う肌が温かく、アゲハの眦から涙が落ちる。
 何故泣いているのか、快感からくる生理現象なのか、もう分からない。

「~~~~ああぁぁぁーー!」

 グプンと開いてはいけない場所が開く感覚に、アゲハの目がぐるりと上を向く。

「ほらほら、会うって言わないと。」

「はぁ、………あう、会うから、やめ、あ゛、あ、ヒグウぅぅ!」

 奥に入ったままグリッと動かれ、アゲハは堪らず射精した。
 ギュウと力が入り、中も締め付ける。
 
「は、はは、約束だよ?」

 ミツカゼの瞳は深く、何故か昏い。
 ドクドクと中に感じる暖かさに、漸くミツカゼも出たのだと力が抜けていく。

「ああ、残念……。俺の時間きちゃった。でも、約束だからね?」

 ズルリと長いペニスが抜ける。
 まだ硬さのあるそれに、アゲハは信じられないと青褪めた。時間がまだあったら更に続いたのかもしれない。
 チュッと頬に口つげを落とし、ミツカゼは忽然と消えた。
 

「………………ああ~~~~マジかぁ~~。」

 とんでも無いのに目をつけられた。
 本気で本体を見せるべきか。
 そしたら好みじゃ無いと諦めるかもしれない。なんせ今のサブ垢のアゲハと本体の鳳蝶は全く違う。
 太ってるのも嫌だという発言もあったし。

 アゲハはズルズルと椅子から滑り落ち、床の上にパタリと寝転んだ。
 ゲームの中なので身体が痛いとか疲れたとかはあまり無いが、精神的に疲れた。
 スクリーンを出してとりあえず何時もの騎士服を装備する。
 ミツカゼの粘つくような圧が、アゲハの逃げ道を塞いでいるようだった。




 カラン、コロン。

 喫茶店の扉が開くと、呆然とした顔の仁彩が入って来た。
 ミツカゼと入れ違いになりホッとする。
 現場を見られなくて良かった。
 この親友はこういうことに全く耐性が無い。箱入り息子なのだ。

「どーした?見つかったのか?」

 結構時間が経っているので見つけて観察して来たのだろうとは思うが、仁彩の様子がおかしいので尋ねる。

「ん、見つけた。そんで、こっそり追いかけた。んで、そんで、二人がイチャイチャと、………………ラブホに入ったんだよぉ~!」

 アゲハは寝転がったまま、あ~と声を上げた。

「言い忘れてたわ。仁彩のサブ垢課金されてたわ。性交OKなってた。」

 識月からOK出ればそりゃいくよな~。
 
「僕のなのに………っ!」

「ん~俺ならもうあのアバター捨てるわ。装備諦める。」

 本垢の方も上げたレベルはそのまま残るのだ。また新しくサブ垢作れば問題ない。惜しいのはサブ垢が装備していた装備品だけだ。

「でも、識月君は違う人間が入ってるのに、気付いていない。」

「気付いて欲しいのか?」

「分かんない………。でも、嫌だ…。」

「そーか。じゃあもう少し足掻こうぜ~。」

 うん、と言って寝転がったアゲハの隣に仁彩は座り込んだ。

「ところで何でこんなとこに寝てるの?」

「あ~~、ミツカゼに。」

「?」

「う~~。」

 仁彩は良くわからないと、ずっと首を傾げていた。















しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【オメガバース】海芋の苞になりたい

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:250

人生負け組のスローライフ

青春 / 連載中 24h.ポイント:2,357pt お気に入り:2,611

婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:16,983pt お気に入り:8,979

昔貴方の為に世界を滅ぼした。

BL / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:143

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:7,666

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:63

泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:433

敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい

BL / 完結 24h.ポイント:5,968pt お気に入り:307

処理中です...