翡翠の魔法師と小鳥の願い

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2章 俺のイジワルな皇子様

81 白龍ハゼルナルナーデ

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 ハゼルナルナーデは永遠とも言える時間をこの檻の中で過ごしている。
 灰龍オスノルが作った久灰の檻。
 中は鳥籠の様に格子が囲み、外は暗闇に満ちている。灰色の格子は鈍く光り、かろうじてぼんやりと景色が見える程度の薄暗い部屋。
 龍の世界が終わり、紅龍ノジルナーレを助けて、灰龍オスノルに閉じ込められた。
 ハゼルナルナーデの龍気は回復する側から吸い取られる。
 龍気を溜めようとしても溜まらない。
 少しでも体内に溜まれば、媚び諂う様に侍っていた龍達が、自分の身体を求めてやって来た。
 動かない身体を弄んで何が楽しいのか。
 

 龍の身体は男性体でも女性体でも好きな方を選べるが、それは十歳程度の年齢で一度きり選べる。
 私は力の象徴として男性体を選んでいた。
 龍の殆どは力を求めて男性体を選ぶ。
 女性体を選ぶ者は愛されたいという気持ちが大きい者がなりやすいと聞いていた。
 
「ああ、今日も貴方は美しい。」

 クチクチと人の陰茎を弄びながら、オスノルは狂った目でハゼルナルナーデを見下ろす。
 長い時を掛けてハゼルナルナーデの龍気を取り込んだオスノルの瞳は金色に変わり出していた。
 銀から金へと色を変える瞳は、学生時代ハゼルナルナーデを憧れる様に見つめていた目とは程遠い。
 ハゼルナルナーデも龍の世界が終わった時、これは好機だと思った。王族という柵から逃れられると。話し掛けたい人に近付けるれる様になると。
 だからオスノルの様に欲に駆られる輩が出るのも不思議ではない。
 私が油断しただけだろう。
 こんな所に、こんな弱小に捕まる等、あってはならない事だった。
 捕まらずにいれば、直ぐに私の黒龍を探し出しに行けたのに、もうこんなに時間が掛かっては生きているかも怪しい。

 オスノルだけでなく、数え切れない程の龍が私の下へやって来た。
 ただ喋るだけの者、抱く者、傷をつけていく者。
 私は彼等に与えられる褒美になっているらしい。
 オスノルを満足させる働きをした者に、私を一時貸すのだと言っていた。
 元王族をただの奴隷の様に扱うオスノルを、殺してやりたいが今は力が入らない。
 食事も排泄の処理もオスノルが気が向いた時にやるだけだ。
 なんて無様な事だろうか。
 意識を手放し、自分も狂えば楽だろうが、最後に別れたノジルナーレが、助けに来ると叫んでいたのを信じて待っている。
 ほんの一筋の希望に縋る自分は滑稽だ。
 
 私の心が折れるのを待っているのか、灰龍オスノルは黒龍を捕まえてくる様になった。
 黒い髪、黒い瞳を見る度に、私の鼓動はバクバクと早まる。

「アイツはなかなか見つからないのですが、黒龍を見つけたら貴方の前で殺してあげましょう。そのうち見つかって、此処で貴方の前で辱め、殺してあげれるかもしれません。」

 そう言って、オスノルは連れて来た黒龍を仲間と共に犯し無惨に殺していった。
 黒龍は私に助けてと叫ぶが、助けたくとも指一本すら動かない。
 一人、また一人と黒龍を連れて来ては、私の前で消えていく。
 その内私の黒龍が来る日がくるかもしれない。
 私の心は折れそうだった。
 あまりにも長く待ち続けた。
 あのノジルナーレが簡単に諦めたり殺されたりする事は無いと思ってはいても、長過ぎる時間に私の心は疲弊していた。


「さあ、今日も私と交わりましょう。愛しい私の王。」

 オスノルが私の後孔を濡らし出した。
 丹念に舐めて指を入れ、拡げて恍惚と自分のモノを突き入れてくる。
 入れるか入れられるかはオスノルの気分次第だった。もうどちらも数え切れない程やっている。
 王族は基本龍気が多いので体格も良く、孕ませる側が多かった。
 まさか自分が何度も入れられるとは思ってもみなかった。
 
「私の愛しい王よ、何故私の子を孕んでくれないのです?私達は番、私達は何度も愛し合っているのですよ。」

 私達は番では無い。番に明確な印など無いが、双方お互い番であると認識しなければ番にはならないし、子も成せないのが龍種だ。
 それにこの世界に落とされた私達は、龍という種族では無く、管理者という存在になった筈だった。子はもう孕めないと思っている。

 私が番にしたいのはあの黒龍だけ。
 昔も今も、あの人だけ。
 もう長い時間あの姿を見ていないから、流石の私も記憶が朧げになった。
 覚えているのはサラサラと風に流れる黒髪が美しかった事。
 学生なんて意味がないと、心の中で思いながら初めて通った学校で、目の前を通り過ぎる彼を見つけた。
 話したのは数回だけ。
 王族の私が話しかければ、黒龍の彼は周りから無体な扱いを受けると理解していたから、なるべく関わらない様にしていた。
 それでも言葉を交わしたくて挨拶をすると、困った顔で返してくれる律儀で控えめな彼の声。
 龍気を吸われすぎてボヤけた頭では、もうどんな声だったか思い出せない。
 どんな顔かも、どんな声かも思い出せないのに、あの時の感動した心だけは忘れ切れない。
 
 孕め孕めと揺さぶられる身体なんてもう要らない。
 あの人に会いたい。あのサラサラの黒髪を触って見たかった。
 
「………、………、………。」

 ワグラ。
 今日も忘れない様に彼の名前をそっと呼ぶ。
 それだけは忘れない様にと。
















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