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*11 街歩き *
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……何だろう? なんか気恥ずかしいっていうか、ソワソワして、落ち着かない感じ。視線をそらしたいのに、そらせない。イケわんこさんの琥珀色の目とにらめっこ状態デスヨ。なんだ、これ。
「え~と? あの……?」
何も言おうとしないイケわんこさんに、俺のほうから声をかけてみれば、あちらはびくっと肩を跳ね上げて、
「あ、あぁ。その……なんて言ったらいいか……その……」
視線がオロオロ。耳はちょっと寝てしまって、困り顔。ってか、いい声してるな。低音ボイス! 耳から子宮(ねえけど)にダイレクトアタックされた。座ってて良かったぁ~。立ってたら、腰抜けてたぞ。絶対に。
っていうか、ちょっとモフらせてくれませんかね、お兄さん。カワイイ! って叫んで抱き着きたいんですけど。や、初対面の人相手に、そんなことはできませんけども。変態認定されたくないんで、我慢しますけども。あぁ、でも……モフりたい。新しい世界のドアが開きそう……。あぁ、これがモフラーへの一本道なのか……なんて思っていると、
「ちょっと、アンタ! いきなりどこへ行くんだい!? 仕事中だよ!」
頭に角を生やした女性が現れた。こちらも背が高く、筋肉質だ。ゲームにありがちなマッスル系露出多めの戦士スタイルな彼女は、イケわんこの肩をひっつかむと、
「ほら、とっとと行くよ!」
ローキックを決めて、彼のバランスを崩して転倒させ、彼を引きずって行った。わお、すごいパワー。角ありアマゾネスは、俺のことには全く気付いてないっぽい。
「待て! エッタ! オレはあの人族に話が!」
「うるさい! アリベールがへそを曲げたら、どうすんだい!! あたしゃ、ご機嫌取りなんてごめんだよ」
角ありアマゾネスは、聞く耳持たずっていう感じ。イケわんこさんは、
「ぅぐ……っ。それは……! そう、だが……あの人族は俺の──!」
「やかましい!」
と、まあこんな感じで、二人の姿はあっという間に市場の雑踏の中に消えて行った。
「……何だったんだ? あれ」
残された俺は、ポカーン。まるで、台風が通り過ぎたみたいだ。周りの人も、なんだアレ、みたいな顔で遠ざかって行った二人を見ていた。
「……まあ、いいか」
俺は気を取り直して、鞄から地図を取り出した。
腹ごしらえはすんでるし、腰のダメージが回復したら、調理師ギルドに登録へしに行くのだ。
こっちにはハローワーク的なものは存在しない。かわりに同業者組合、つまりギルドがあり、ここに登録することで、仕事を紹介してもらえるという。料理を作る仕事に就きたいなら、調理師や料理人ギルドに登録すればいいそうだ。
開業するときは、さらに商業ギルドにも登録する必要があるそう。
「商業ギルドは公的機関としての役割もあるので、登録必須なんですよ~」とのことである。
とりあえず、商業ギルドへの登録はまだ先の話。何の目途も立ってないからな。
俺が最初にしなきゃならないのは、調理師ギルドに登録することである。
料理系のギルドはいくつかあるけど、俺が登録するのはセガール調理師ギルド。ここに登録している人は、庶民向けの店を経営している人が中心だということなので、ここに決めた。
「ん~っと……あ、ちょっと遠回りになるけど、こっちのルートなら、探索者ギルドの前を通るのか」
探索者、見られるんなら見てみたい。さっきのイケわんこさんや角ありアマゾネスも、多分探索者なんだろうけど、もっといろんな人を見てみたい。
問題があるとすれば、時間帯かな~? 今の時間帯は、あんまりいないかも知れない。ま、ダメ元だ、ダメ元。
残っていたカヒエを一気に飲み干して、俺は立った。〈清潔〉で服をきれいにしてから、パラソル市場へ戻る。ここには、食材のリサーチのためにまた来るつもりだ。
「ヨーロッパの旧市街って感じだな」
石畳で舗装された道。通りに面した建物は、白壁にオレンジ屋根の四階建て。一階はどこも商売をしているようで、三段の前階段があり、両開きのドアは全開になっている。
雑貨屋、古着屋。金物屋。食堂っぽい店もあるな。お菓子屋、美容室もあるみたいだ。
珍しくもなんともない、普通の町の店なんだろうけど……なんかおしゃれに見えるのは、俺の目に異世界フィルターがかかっているせいだろうか?
そんな区画が一ブロックほど続いた後、今度は建物の構造は変わらないものの、店が消えてしまった。一階のドアは閉まっていたり、片方だけ開いていたり。
窓にカーテンがかかっていないので、前を通りながら、何気なく中を覗いてみれば、どこも不動産屋っぽい感じだった。机があって、イスが並び、本棚がある。
ドアが片方だけ開いているところは、中に人がいた。でも、あくびをしたり、昼寝をしていたり。なんだ、昼休み中なのか? よく、分からないな。
「え~と? あの……?」
何も言おうとしないイケわんこさんに、俺のほうから声をかけてみれば、あちらはびくっと肩を跳ね上げて、
「あ、あぁ。その……なんて言ったらいいか……その……」
視線がオロオロ。耳はちょっと寝てしまって、困り顔。ってか、いい声してるな。低音ボイス! 耳から子宮(ねえけど)にダイレクトアタックされた。座ってて良かったぁ~。立ってたら、腰抜けてたぞ。絶対に。
っていうか、ちょっとモフらせてくれませんかね、お兄さん。カワイイ! って叫んで抱き着きたいんですけど。や、初対面の人相手に、そんなことはできませんけども。変態認定されたくないんで、我慢しますけども。あぁ、でも……モフりたい。新しい世界のドアが開きそう……。あぁ、これがモフラーへの一本道なのか……なんて思っていると、
「ちょっと、アンタ! いきなりどこへ行くんだい!? 仕事中だよ!」
頭に角を生やした女性が現れた。こちらも背が高く、筋肉質だ。ゲームにありがちなマッスル系露出多めの戦士スタイルな彼女は、イケわんこの肩をひっつかむと、
「ほら、とっとと行くよ!」
ローキックを決めて、彼のバランスを崩して転倒させ、彼を引きずって行った。わお、すごいパワー。角ありアマゾネスは、俺のことには全く気付いてないっぽい。
「待て! エッタ! オレはあの人族に話が!」
「うるさい! アリベールがへそを曲げたら、どうすんだい!! あたしゃ、ご機嫌取りなんてごめんだよ」
角ありアマゾネスは、聞く耳持たずっていう感じ。イケわんこさんは、
「ぅぐ……っ。それは……! そう、だが……あの人族は俺の──!」
「やかましい!」
と、まあこんな感じで、二人の姿はあっという間に市場の雑踏の中に消えて行った。
「……何だったんだ? あれ」
残された俺は、ポカーン。まるで、台風が通り過ぎたみたいだ。周りの人も、なんだアレ、みたいな顔で遠ざかって行った二人を見ていた。
「……まあ、いいか」
俺は気を取り直して、鞄から地図を取り出した。
腹ごしらえはすんでるし、腰のダメージが回復したら、調理師ギルドに登録へしに行くのだ。
こっちにはハローワーク的なものは存在しない。かわりに同業者組合、つまりギルドがあり、ここに登録することで、仕事を紹介してもらえるという。料理を作る仕事に就きたいなら、調理師や料理人ギルドに登録すればいいそうだ。
開業するときは、さらに商業ギルドにも登録する必要があるそう。
「商業ギルドは公的機関としての役割もあるので、登録必須なんですよ~」とのことである。
とりあえず、商業ギルドへの登録はまだ先の話。何の目途も立ってないからな。
俺が最初にしなきゃならないのは、調理師ギルドに登録することである。
料理系のギルドはいくつかあるけど、俺が登録するのはセガール調理師ギルド。ここに登録している人は、庶民向けの店を経営している人が中心だということなので、ここに決めた。
「ん~っと……あ、ちょっと遠回りになるけど、こっちのルートなら、探索者ギルドの前を通るのか」
探索者、見られるんなら見てみたい。さっきのイケわんこさんや角ありアマゾネスも、多分探索者なんだろうけど、もっといろんな人を見てみたい。
問題があるとすれば、時間帯かな~? 今の時間帯は、あんまりいないかも知れない。ま、ダメ元だ、ダメ元。
残っていたカヒエを一気に飲み干して、俺は立った。〈清潔〉で服をきれいにしてから、パラソル市場へ戻る。ここには、食材のリサーチのためにまた来るつもりだ。
「ヨーロッパの旧市街って感じだな」
石畳で舗装された道。通りに面した建物は、白壁にオレンジ屋根の四階建て。一階はどこも商売をしているようで、三段の前階段があり、両開きのドアは全開になっている。
雑貨屋、古着屋。金物屋。食堂っぽい店もあるな。お菓子屋、美容室もあるみたいだ。
珍しくもなんともない、普通の町の店なんだろうけど……なんかおしゃれに見えるのは、俺の目に異世界フィルターがかかっているせいだろうか?
そんな区画が一ブロックほど続いた後、今度は建物の構造は変わらないものの、店が消えてしまった。一階のドアは閉まっていたり、片方だけ開いていたり。
窓にカーテンがかかっていないので、前を通りながら、何気なく中を覗いてみれば、どこも不動産屋っぽい感じだった。机があって、イスが並び、本棚がある。
ドアが片方だけ開いているところは、中に人がいた。でも、あくびをしたり、昼寝をしていたり。なんだ、昼休み中なのか? よく、分からないな。
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