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第四章 勇者パーティー

第十二話 家宝じゃなくて秘宝でした

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「ん? どうした?」

 俺は固まった二人を不思議そうに見つめた。
 この剣が凄いことぐらい、二人とも気づいているはずなのだが……

「いや、それハイエルフの秘宝だぞ? 持ち出されたことは一度もないはずなのだが……」

「ハイエルフの秘宝? 俺は家宝って聞いたんですけど……」

 流石に秘宝を渡すなんてことは……ないよな?

「……あの、ここでは世界樹聖剣はどのように伝わっているのですか?」

「勇者聖剣と同格の力を秘めた最強の剣と聞いている。そして、ハイエルフの秘宝とも。まあ、ハイエルフからしてみれば、家宝のようなものなのだろうが……」

 この時、俺は思った。この剣は人前では使わない方が良いと……

「あの剣は使い心地がいいから好きなんだが……やっぱり人前では使わない方が良いよな?」

「そうだな。めっちゃ狙われるぞ。まあ、お前を倒せるような奴はいないとは思うが、暗殺には気を付けた方が良いぞ」

「はぁ……」

 俺は深く息を吐いた。
 俺はとんでもないものを渡されたんだなぁ……

「と言うか、何でその剣を持っているんだ? 君が救出したとはいえ、流石にあの剣を渡すことはないと思うのだが……」

「あの剣は救助の報酬と言うよりは、世界樹への魔力供給に対する報酬ですね」

「なるほどな……だが、それでも渡すものなのか? 魔王討伐の為と言っても、かたくなに貸してくれなかったぞ。『この剣を持つのは私の家族だけだ』ってな」

「トリエストさんってそんなに頑固な人だったかな……」

 俺と話した時は、もう少し優しい口調だった気がする。

「ううん……あ、俺一応トリエストさんの家族ですからね。多分それでくれたんだと思います」

 俺はトリエストさんの孫のクリスと結婚している。つまり、俺とトリエストさんは家族と言うことになるのだ。

「……は? お前ハイエルフなのか?」

 ゼウルさんは俺に詰め寄ると、そう言った。

「いえ。ただ、俺はトリエストさんの孫のクリスと結婚したので……」

 俺は頭を掻きながらそう言った。

「はあ!?」

 その言葉を聞いたゼウルさんは驚愕の表情を取ると、叫び声を上げた。シャノンも口に手を当てて、目を見開いている。

「クリスって……クリスティーナ様のことだよな? あの方はうちの王族からの求婚も、寿命が違いすぎるって理由で顔すら見ずに断ったんだぞ。それを……」

「まあ、色々あって、こうなったんですよ」

 俺は笑みを浮かべながら、そう言った。
 それにしても、”寿命が違いすぎる”か……
 確かに俺ならその心配をしなくていいので、クリスも安心出来たのだろう。

「まあ、幸せにしてやれよ。彼女からしてみれば、人間の一生なんて、あっという間だからな」

「そうですね。幸せにしますよ」

 俺は種族を疑われなかったことにほっとしながら頷いた。

「では、ドキドキしながら、合格発表を待ってますね」

「やれやれ。俺に勝った時点で合格は確実なのだがな。まあ、ドキドキしててくれ」

「わかりましたー」

 俺は手を振ると、控室へ戻った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ゼウル視点

「……あいつ人間なのか?」

 俺は去っていくユートを見ながら、そう呟いた。
 昨日届けられたシャオニンの死体と報告で分かったのだが、彼は生命力を代償に身体能力を大幅に上げる魔道具を使ったらしい。しかも、最上級の効果を発揮するやつだ。

「あれを使ったシャオニンに勝ったと言うのか……」

 その状態の彼に勝つには、迎え撃つ方も同じ魔道具を使わないと、戦いにすらならないだろう。だが、見た感じ、彼の生命力は減っていなかった。

「……それに、倒したことを隠すのか……」

 倒したことを隠すメリットなんて無いに等しい。
 国に報告する際に、公にしたくないと言えば、国民には名前を隠して伝えることになっている。

「……ウォルフもそうだな。彼に対する怯えが見えた」

 昨日その件で王都に来たウォルフに、誰が倒したのか聞いたのだが、かたくなに拒否されてしまった。命にかけても絶対に言わないと言うほどだ。

「う~ん……ユートが我が国に敵対する者なら、ウォルフも、例えユートに脅されていたとしても、正直の報告しただろう。それを考慮すれば、ユートは我が国の敵ではないということになるな」

 俺はユートが敵ではないと自身に言い聞かせながら、この場を去った。
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