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一章
31、覚醒
しおりを挟む一瞬だけ、夢を見た。懐かしい、夢。
これは、もしかして走馬灯というやつかもしれない。
『ジン』
優しく抱きしめてくれる母に、そっと頭を撫でてくれる父。
魔法騎士である父は、小隊には所属せず、各地を回り魔物を討伐しては、人々を助けていた。俺の憧れの存在であり、みんなの英雄だった。父の周りには多くの人が集まった。母はそれを見て嬉しそうに微笑んでいた。
俺は父のようになりたくて、父に稽古をつけてもらっていた。
『もっと相手の動きを見るんだ。そしてそこからの攻撃の流れを読む。相手を先回るように攻撃を打ち込むんだ。力だけで押し切ろうとするな』
俺は上手く父に攻撃することが出来ず、木刀で迎撃されて稽古はいつも終わっていた。それでも日々積み重ねることで、やっと一本父から取ることができた。
『ジン。成長したな』
『当たり前だろ! 俺は父さんのような魔法騎士になるんだ!!』
『おう、頑張れよ』
そう撫でてくれる父は、少しだけ申し訳なさそうな顔をしている。でも、その理由は俺には分からなかった。
『ねえ、父さん』
『なんだ』
『魔力はどうやって使えばいいの? 俺にもあるんでしょ!?』
きらきらと目を輝かせるジンの質問に、父は思わず目を逸らし、少し遠くを見つめる。
『そうだな……魔力はいつも感じておくものだ。自分の血液、肉体、心、全てに繋がっている。魔力と意識を一つにするんだ。そうすれば……魔力は何が起きてもお前の味方だ』
『え? よく分からないよ』
『ただ、感じればいい』
『感じる?』
『……そう。まあ、でも少しお前には早いかもしれない。……だが、一つだけ、いい事を教えてやろう』
『え? 何?』
『それを叶えるとっておきの、魔法の呪文だ。それを唱えれば、お前と魔力は一心同体になれる。これは、我が家の秘密だ。だから、誰にも言ってはいけない。わかったか?』
『うん、わかった!!』
『よろしい。……でも、それは失敗する可能性の方が高いんだ。でも、ジンなら出来るさ』
そう笑う父の笑顔は少しだけ、案じているような、愁いでいるような、形容しがたい表情を浮かべていた。
『うん! で、その魔法の呪文って何?』
『ああ、それはな――』
♦♦♦
父との会話はそれが最後だった気がする。でもなぜ、亡くなったのかは、記憶に無い。ただ、最後に見たのは笑顔だと記憶している。
ああ、俺は一体何をしている? こんなんじゃ、誰も俺を認めてはくれない。仲間も誰も守れない。誰かに悲しい思いをさせる奴らだって制裁できない。
俺は、もっと強くなるんだ……!! そして、世界に俺を認めさせ、誰にも手の届かないような、そんな人間に、俺はなる!!
ジンは徐に手を胸の前で交差させた。
「Χ」
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