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第十三章

ねぎま(?)を食べる!

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 ただ、エルフのテュテュお姉さんはそうは思わないらしく、わたしが微妙に思ったねぎまに対して「焼きネギとお肉を同時に食べる発想、なかなか良いかもしれないわね!」とちょっと嬉しそうだ。
 なら、いいのかな?
 などと、思いつつ、串を刺すのに悪戦苦闘をしていると、シルク婦人さんが言う。
「代わる」
「え?」
「代わる」
「あ、はい」
 確固たる意志がそこに見えたので、交代することに。
 しかも、何とか刺した肉と長ネギを串から外してしまった。

 えぇ~それ酷くない?

 ただ、シルク婦人さんの中では、わたしの手並みの方がよほど酷かったらしく、説明をしてくれる。
(木串を持って)「焦げる。水をつける」
(切った肉を示しつつ)「部位適当、駄目」
(串を刺す前)「小さい順」

 ……焼き鳥って、結構難しいのね。

 ただ、長ネギを途中に入れることに対しては、やったこと無いのか小首を捻っていた。

 まあ、挑戦って事で。

 とりあえず、一本出来たので、塩と胡椒で下味を付けてから、前と同じく暖炉で焼くことに。
 エルフのテュテュお姉さんも一緒についてくる。
「これは、絶対美味しい奴よ!」とかテュテュお姉さんは興奮気味に言うけど、わたしは正直、半信半疑だ。

 暖炉の前に到着する。
 冬真っ盛りなので、薪がガンガン燃えている。
 む、この中で焼くのは難しいかな?
 シルク婦人さんの邪魔にならないようこちらに来たけど、やはり台所でお願いした方が良かったか。
 いや、白いモクモクで調整すれば大丈夫かな?

 左手から出した白いモクモクで焼き台を作る。

 火を当てすぎないように調整しつつ、その上にねぎまを置く。
 ……暖炉に拘らなくても、白いモクモクで焼けばよいのでは?
 などと、思わなくもないけど、多分、薪で焼いた方が美味しいはずなので、頑張る。

 恐らく、小さくて可愛らしい妹ちゃんらしき気配が近づいて来る。

 止めようと思ったけど、テュテュお姉さんが「あまり近づいてはだめよ」と注意してくれた。
「サリーお姉さま、お肉?」
と聞こえてきたので、「そうだよ、(多分)美味しいお肉だよ」と答えて上げると、「うぁ~!」という嬉しそうな声が聞こえてきた。
 しまった、迂闊うかつなことを言ってハードルを上げてしまったかもしれない。
 などと思いつつ、ひっくり返していると、なかなか良い感じに焼けてきた。

 ふむ、そろそろかな?

 串を持つ。
 ちょっと熱いけど、これぐらいなら大丈夫!
 口に近づけると、香ばしくて良い匂いが強くなる。
 う~ん、美味しそう!
 だけど、ここまでは普通の焼き鳥と一緒だ。
 串の先のお肉を、あ、長ネギと一緒に食べるのかな?
 それを同時に、ぱくりとする。
「美味しぃ~い!」
 お肉のジューシーさと長ネギのシャキシャキが合わさって、なるほど、これは良い出来だ!
「サリーお姉さま!
 シャーロットも!」
と言ってくるが、これはお毒味だ。
 当然のように、シルク婦人さんがわたしの手から串を取る。
 そして、「あぁ~!」と叫ぶシャーロットちゃんを後目に、わたしと同じようにパクリとする。
 満足行く出来だったのか、こくこくと頷くと、わたしに串を返す。
 そして、シャーロットちゃんに「お夕食の時に」と言い聞かせている。
 ごろごろルームから出てきたイメルダちゃんにも「シャーロット! 刺繍の練習もせずになにを騒いでるの!」と怒られて、しゅんとしてしまった。
 可哀想だけど、練習をさぼっちゃ駄目だよね。

 夕食に出したネギマは好評に終わった。

 ただ、残念な部分が一点ある。
 それは、せっかく食べる時の事を考えて木串にしたのに、シルク婦人さんが皿に盛りつけたねぎまは、串が抜かれた物だった所か……。
 シルク婦人さんに「これは木串から食べる物なの!」といくら説明しても「下品」とか「晩餐、ふさわしくない」と言って却下されてしまった。

 えぇ~!
 そもそも、晩餐ではなく家族で食べる夕食でしょう!?

 ただ、鳥肉と焼き長ネギを合わせて食べる事に関して言えば、みんなからは好意的に受け止められていた。
 肉食系女子(意味違い)なシャーロットちゃんも嬉しそうにもりもり食べていた。
 可愛かった!

 あと、ママに送る分も、少し考えたけど、木串を外した物を送ることにした。
 まあ、ママだから木串ごと口に入れてしまうなんて間抜けなことはしないと思うけど、一応だ。

 そして今、わたしはごろごろルームにいる。

「エリザベスちゃん、おいでぇ~」
とわたしがひざを突き、手を叩くと、愛らしい末妹ちゃんは匍匐ほふく前進みたいな移動法――シルク婦人さん曰く、”ずりばい”でこちらに進んでくる。

 可愛い!
 あ、ちょっと方向がずれた。

 わたしはすっーと横に移動し正面とする。
 そして、すぐそばまで来たエリザベスちゃんを「すごぉ~い!」と褒めつつ抱き上げる。
 胸に当たる、末妹ちゃんの柔らかな体から温もりが伝わってくる。
 なんだろう、凄く幸せぇ~
 すると、エリザベスちゃんも嬉しいのか「キャッキャ!」と笑っている。

 超絶可愛すぎる!

「ふふふ、サリーの小さい頃を思い出すわ」
と、ごろごろルームの入り口からこちらを覗くエルフのテュテュお姉さんが目元を緩めながら眺めている。
 いや、わたしはこんなに可愛くはなかったと思う。
 因みに、ごろごろルームの靴を脱ぐ場所には、誤ってエリザベスちゃんが落ちないように柵がしてある。
 むろん、ヴェロニカお母さん達が入れるように、入り口付きだ。
 ずりばいをし始めたのを見て、妖精メイドのスイレンちゃんが物作り妖精のおじいちゃんに依頼してくれたらしく、気づいたら出来てた。
「しかし、素足で生活する部屋とか、面白いものを作ったわね」
 エルフのテュテュお姉さんが興味深げにごろごろルームを眺めている。
「凄く楽なんだよ」と答えると「そうみたいね」と頷いた。
「中に入ればいいのに」
と勧める。
 そう、エルフのテュテュお姉さんはごろごろルームに入ろうとしないのだ。
 それに対して、お姉さんは苦笑する。
「母親としては、自分の赤子のそばに、会ったばかりのエルフには近寄って欲しくはないものよ。
 まして、自分がそばにいない時ならなおさらよ」
「そんなもの?」
「そんなものよ」
 確かに、ヴェロニカお母さんは今、そばにはいない。
 とはいえ、わたしもいるし、妖精メイドのスイレンちゃんもいるから、ヴェロニカお母さんとしても、そんなに神経質にはならないと思うけどなぁ。

 因みに、ヴェロニカお母さんは入浴しに行っている。
 夜に授乳する事は無くなったらしいけど、まだ、時々夜泣きはするので最初に入って貰った。

 そんな話をしていると、視線を感じる。
 そちらを見ると、シャーロットちゃんが入り口から覗いていた。

 ん?
 どうしたんだろう?

「どうしたの?
 こっち、おいで!」
と招いても、入ってこない。

 んんん?
 本当にどうしたんだろう。

 すると、部屋に近づいてくる気配を感じた。
 そして、「あら、シャーロット、どうしたの?」というヴェロニカお母さんの声が聞こえてくる。
 入り口から入ってきたヴェロニカお母さんは寝間着に着替え、濡れた髪を下ろしていた。

 普段は”アレ”なのに、大人っぽくて、ちょっと色っぽかった。

 そんなお母さんの問いに対して、シャーロットちゃんは「ううん」と言って離れて行ってしまう。

 んんん?
 どうしたんだろう?
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