異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい

だいず

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27 勉強会-1回目

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「私で良ければ、助力いたしましょうか?」

 廊下でたまたま会い、「この世界について知りたいのに字が読めなくて」積んでいるという俺のちょっとした悩みを聞いてくれていたグレンノルトがそう提案してくれた。

「え、でも騎士団って忙しいんじゃ」
「確かに仕事は多いですが、半分は書類仕事ですよ。職務の合間なら、時間も取れます。剣以外のことを教えるのはやったことがなく、分かりやすいかどうかは不安がありすが……」

 グレンノルトは、「それでよければ私が教えますよ」とそう言った。俺としては教えてくれる人がいるだけでありがたい。もちろん、「こちらこそよろしくお願いします」と伝えた。

「早速今日からと言いたいのですが、今日は予言にもあった大雨に関して、仕事があり……明日の午後には城に戻りますから、明日から始めても良いですか?」
「はい、もちろん! グレンノルトさんの都合のいい時で大丈夫です」
「それじゃあ、明日のお昼過ぎ……一時頃から団長室に来てください」

 俺は分かりましたと頷き、グレンノルトと別れた。なんだかんだ悩んだことだったが、思いがけず良い方向に行っている気がする。書類仕事とは言え、俺の相手をしながら仕事をするのは大変だろうに、グレンノルトは俺に教えることを快諾してくれた。優しい人だなと思うと同時に、そんな彼に二度手間をかけないよう、きちん勉強しようと心に決める。不安があった異世界での生活だが、良いものになりそうだと、そう考えながら俺は自分の部屋に戻った。

 *

 さて、翌日である。昨日約束した通り、俺は昼食を食べたあと、団長室へと向かった。一度来たことがある部屋だったため、迷わず来れたが、まだ正直城の中で迷いかけることがある。俺がきちんと、城の中を把握するのはいつになるんだろうと思いながら、俺は部屋の扉をノックした。中から「どうぞ」と声がかかる。

「失礼します!」

 グレンノルトは、椅子に座り何か書類を書いていたようだった。俺が部屋に入って来たことで、彼は手を止め、俺にソファに座るよう促す。お仕事中にお邪魔して申し訳ないなと思いながら、それでも俺は図々しくソファに座った。

「今日はまず、この世界で使われる文字から学習していきましょうか」
「はい、お願いします」

 そう言えば、小学校で英語を学習したときも、初めはアルファベットからだったなと思い出した。グレンノルトに文字の読み方・発音の仕方を教えてもらう。習ったことは忘れないよう、用意したノートにメモした。

「文字に書き順ってあるんですか? 例えばこの文字とか、縦と横の線どっちを先に書くとか」
「あるにはありますね。しかし、初めからいろいろと言いすぎるとかえってやりにくいかなと思ったのですが……書き順も教えた方が良いですか?」

 俺が書き順を気にしたのは、祖母の言葉を思い出したからだ。実は、俺の母方の祖母は習字教室を開いていた。だから、夏休みなどの長期休暇の時、母親の里帰りについて行くと、決まって習字や硬筆の練習をさせられた。その時に祖母は、「書き順どうりに字を書くと、自然ときれいな字になるものよ」とよく話していたのだ。祖母の指導のおかげで俺の字がきれいになったかどうかは正直実感できていないが、それ以来漢字を学習するときなんかは書き順を意識して学習するようになった。しかし、まあグレンノルトの言う通り始めは自分の書きやすいようにやった方が良いのかな。俺は彼に、書き順はまた後で教えて欲しいとお願いした。

「文字はこれくらいで。えーっと、次は……」

 グレンノルトは何か、本を見ながら次に学習することを考えているようだった。

「その本、何の本なんですか?」
「ああ、これですか? 教科書、ですかね。昨日図書館で借りてきたんです」
「も、もしかして、この勉強会のために……?」

 グレンノルトは「出かけたついでですよ」と言った。しかし、確かに出かけたついでに借りてきた本であっても申し訳なさを感じてしまう。俺は、教えるときの手間ばかり頭にあったが、準備物などの手間をすっかり忘れていた。

「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。俺としても、せっかくトウセイ様に頼ってもらえたので、それに報いたいなというか、良いものにしたいなと思っただけですし。それに、今日のこの時間が楽しみでしたから」

 俺は一瞬で頬が熱くなった。だって、嘘みたいに美しい男がにっこりと笑い、今日の時間が楽しみだったと呟いているんだ。彼の顔が見れなくなって、俺は視線を逸らし、曖昧に返事をする。気持ちがソワソワして仕方がなかった。

「トウセイ様は、知りたいことなど何かありますか?」
「え! あ、そうですね。文字の勉強がしたかったのは、本を読みたかったっていう理由もあるんですが、実は地図を読んで土地や国、この世界に関して勉強がしたかったんです」

 この世界について、自分の目で見て回ることを目標として、そのためにはこの世界の知識が必要である。自分で本を読んで勉強すればいいと思っていたが文字が読めなく、グレンノルトに泣きついたのが現在である。文字の勉強だけでも十分助けられているが、できるならこの世界の話を人の口からも聞いてみたいと言うのが本音だった。

「そういうことでしたら、私がお話しますよ。まあ、私の出来る範囲の話ですが」
「本当ですか! じゃあ、この世界は全部でどれくらいの国が___」

 俺は気になることをグレンノルトに質問した。この国のこと、世界のこと、グレンノルトは俺にも分かるよう言葉を噛み砕きながら説明してくれた。彼が話すことはどれもきれいで、俺のいた世界とこの世界は全く持って違うものだと理解させられた。

(見てみたい……この世界を、自分のもで見てみたい!)

 この国の特産品の1つ、クリスタルが取れる洞窟とはどんなものなんだろう。建国記念日のお祭りはパレードが素晴らしいらしい。祭りと言えば、花祭りと言うものもあるのか。機械の発展が盛んな国や、反対に、古めかしい生活を大切にする国もあるらしい。俺は、この世界に対する期待みたいなものがどんどん膨らんでいった。しばらくして、今日の勉強会は終わりとなった。またお願いしたいと言う俺の我儘にグレンノルトは快諾してくれる。俺は自分の部屋に戻ってからも、ワクワクした気持ちが引くことは無かった。
 

 
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