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副団長 × アミル
エピローグ ★
しおりを挟む団長室の扉を叩く音が聞こえ入室の許可を出す。
失礼します、と入ってきたのはここ最近頭角を現してきた新人騎士の一人だ。
「アミル副団長っ! 報告書を持って参りました!」
「ありがとう、もらうよ」
ぱらぱらと報告書を捲り内容を確認すると、報告書の記入者が目の前の彼になっていることに気づいた。
「よく書けてるね、初めてなのに」
「ありがとうございますっ! 先輩たちに教えてもらいながら何とかですが、アミル副団長に褒めてもらえて嬉しいです!」
大げさなことを言う部下に曖昧な笑みを返して退室の許可を出す。
さっきまで見ていた書類に目を戻そうとして立ち去る足音が聞こえないことに視線を上げる。
なぜか真剣な顔でアミルを見つめたまま立ち去る様子がない。
「どうかしたのかな?」
相談事でもあるんだろうか。
部下が悩みを抱えているのならそれを聞くのもアミルの役目だ。
自分で役に立てることだろうかと耳を傾ける姿勢を作る。
少しの沈黙があって彼が口を開く。
「あのっ、アミル副団長!
カイル団長は酷くないですかっ?」
彼の口からカイルの名前が出てきたことにひやりとする。
落ち着かせる口調を心掛けながら問いかける。
「どうして? 何かあった?」
新人に酷いと言われるようなことはしていないはずだけれど。
カイルが訓練に参加しているときは中堅以上の騎士たちが手合わせを望んで新人たちが放置気味になってたとか?
疑問を浮かべるアミルに苦しそうな顔を浮かべる彼に益々不思議な気持ちになる。
「アミル副団長に全部任せきりにして、です!
今日だってこんな遅い時間まで団長室に残っていらっしゃるのは団長が仕事をアミル副団長に押し付けてるからでしょうっ!」
予想もしていなかった発言に沈黙が生まれる。
それが彼の誤解を増長してしまったのか机の側まで詰め寄ってきた。
「確かに魔獣討伐の実力はすごいのかもしれませんが、仕事もアミル副団長に任せきりにしてるし、あんな軽い態度の人が団長なんて!」
勝手に興奮して声が高くなっていく彼に苦笑を浮かべる。
態度はそう感じるのも無理はないと思う、アミルも昔はそう思っていたから。
目を吊り上げていた彼がアミルを見て顔を歪ませる。
「あんな人、アミル副団長に……っ!」
「待った、ストップ」
本格的な上官批判に突入しそうだったので待ったをかける。それ以上はまずい。
「あのね?
まず君は勘違いをしている。
団長の仕事を肩代わりしているように見えるならそれは大きな間違いで、団長は団長にしかできない仕事をちゃんとしている。
その上で私に仕事を教えてくれてるんだ」
「でもっ……」
まだ納得がいかないような彼に重ねて苦言をする。
「君には軽くて仕事をしてないように見えるかもしれない。
けれど、そんな人間だったら先輩たちもあれほど団長を慕って手合わせをお願いしたりするわけがないとは思わないか?」
以前から騎士団内でも飄々とした態度のカイルを苦々しく思っていたりする人もいた。
けれど討伐の現場に出て実力を知り、普段の行動を見て自分が見ようとしていたものと実際のカイルの姿に隔たりがあったことに気づく。
彼もそのうち気づくだろう。その時が早く来るといい。
「アミル副団長も団長を尊敬しているんですか……?」
当たり前のことを聞かれて強く頷く。
「もちろん。
だから側にいるし、この先も側にあろうと努力している」
ついて行くのではなく隣に並ぶ。その場所を誰にも譲る気はない。
浮かぶ笑みのままに告げると納得はできないまでも飲み込もうとしているようだった。
「……すみませんでした、失礼します」
「うん、ちゃんと団長のことを見てるとわかるよ。 悪い人じゃないから」
背を向けて立ち去ろうとした彼が一瞬だけ振り返って何事かを呟く。
うん?
扉が閉まったところで奥から声が掛かった。
「人気だねえ、アミル」
「カイル」
彼からは見えない位置にいたカイルが机の近くまでやってくる。
本当、ひやひやした。かろうじて不満を持っているくらいのところで止まったけどあれは良くない発言だった。
「彼のあれは不問にしてあげてください」
カイルがいると思っていたら流石にあんなことは言わなかっただろうし。
「別に気にしてないからいいけど。
でも団長室に来ておいて俺がいないと思ったのは迂闊だよね」
「ずっと僕がいたからカイルは出かけていると思ったのでは?」
苦しいと思いながらフォローを入れる。
カイルの中で目端の利かない奴扱いをされてないかと心配はあるけど、挽回は本人に頑張ってもらうしかない。
「それで、終わった?」
カイルが書類を取って目を通していく。
「うん、いいんじゃないかな」
「ありがとうございます」
お礼を言って書類を受け取り片づけに入る。
あれから騎士団は少し様変わりをした。
一番変わったのは団長が退団してカイルが団長になったことだろう。
団長はとある女性に猛烈に求愛されその家に入ることになった。いまや未来の辺境伯だ。
驚きだけれどカイル曰く「辺境は魔獣も多く出るし、やることはたいして変わらないよ」と言っていたので大丈夫だろう。
一介の騎士まで届くような噂もないので平穏に過ごせているかもしれない。
カイルは相変わらず飄々と任務をこなし、これまでの騎士団では少なかった他の騎士団との協力関係を少しずつ増やしている。
他の騎士団の目が入ることで不正も蔓延りづらいだろうと中央の騎士団も最近ではその動きを推奨しているらしい。
そんなわけでカイルは他の騎士団との折衝などで忙しい。
姿が見えなくても、遊んでいるわけではないのだ。
私室に戻ってどちらともなく服を脱がせ合う。
カイルの鎖骨に吸い付くとぴくりと小さな反応があった。
腰を引き寄せられ脚で硬くなりかけたペニスを弄られて声を上げる。
「あっ……!」
腰を引こうとすると腕で押さえられ更に脚を擦りつけられる。
「待っ、て……、カイルっ!」
「何? アミルがいたずらっ子するから俺もやり返してるだけだけど?」
ぐりぐりと脚で刺激されるだけの単調な動きが気持ち良くてペニスが硬くなっていく。
「ダメ、離してっ」
このまま続けられたらイってしまう。
「イってもいーよ?」
俺の脚にペニス擦りつけてイきたいならそうしても良いんだよと悪魔の囁きを落とすカイル。
甘美な誘いに思考が揺れる。
カイルの脚に勃ち上がったペニスを擦りつけ快感を得る想像を振り払い口を開く。
「……早くカイルが欲しいです」
奥の深いところまでカイルのペニスを咥え込んで揺さぶられたい。
激しい快感で満たして欲しかった。
「んー、じゃあちょっと我慢できる?」
何事か考えていたカイルがそんなことを言う。
ちょっとではないんじゃないだろうか。
若干の不穏な気配を感じながらもアミルは頷いた。
脚を大きく開いてカイルの指を後ろに受け入れる。
長い指が穴の奥を穿つ感触に腿が震えた。
潤滑油を使い広げていくカイルは作業のように手を進めていく。
いつものようにわざとイイところを外して焦らす動きでもない。
それでもカイルの与える快楽を知り尽くしたアミルは快感の予感に少しずつ昂っていった。
「ん、もういいかな」
そう言ってカイルが指を引き抜いたときにはアミルは乱れる息を抑えるので精一杯だった。
そんな僕を見て楽しそうに笑うカイルに手を引かれ身を起こす。
向かい合わせになりゆっくりと腰を落とし勃ち上がったペニスを飲み込んでいく。
「あ、んっ、……っく」
奥まで全部飲み込んだところで息を吐く。
圧迫感を悦ぶようにカイルのペニスを締め付ける中に動かれる前から快感を感じていた。
そういえばさ、と呟いたカイルがアミルの腰を掴む。
「さっきの新人どうするの?」
「どうって? ……あっ!」
意味が分からなくて問い返すと腰を揺すられ声が出る。
続けて腰を打ち付けられて快感に喘いだ。
「自分の方がアミルに相応しいなんて言いたげだったじゃない?」
「そこまでは言われてませんよ」
言いそうだと思ったから止めたんだけど。
どうしてかアミルはそういった声を掛けられることが多くなった。
それは副団長になってからも変わらない。
周りと比較してアミルが細身だからだろうか。
背も伸びたし身体も十分鍛えているのに。
自分の身体を見下ろして思考に耽っていたアミルへカイルの呆れたような溜息が落とされる。
わかってないのかー、ってどういう意味だろう。
「アミルはなんていうか妙な色香があるよね、組み敷いたらどんな顔をするんだろうって想像したくなるような感じ?
人によっては守ってあげないといけないって思うかも」
カイルの言葉に眉を寄せる。
入団してから今までそんなこと言われたことがないけど。
大っぴらに口に出すことではないにしても冗談でも言われたことがない。
「妖しい魅力ならカイルの方がすごいと思いますが」
誘う時のカイルの笑みには逆らえないものがある。
アミルは全戦全敗だ。勝つ気もないけれど。
「アミルは俺の顔に弱いもんね」
「その言い方は語弊があります」
言い返しながらも間違いではないと考える。
でも弱いのは顔自体にじゃない。
誘うあの瞳や楽しそうに陥落を待つ笑み、どうされたいのか言ってと囁く声に非情なまでに執拗に快楽を刻む行為。
それでいながら自身を汚すことを許容する姿。
他にも普段の姿も含めて弱いところは数え上げるのが大変なほどあった。
「……カイルに弱い、ですかね」
言って、口説き文句みたいだなと思った。
カイルも同じだったのか浮かべた笑みを愉快そうなものに変える。
「どうしてほしいか言って?」
アミルの好きなようにしてあげると囁かれて期待に震える。
きゅうと中が締め付けるとおかしそうに吐息で笑った。
「抜かないで、いっぱい突いてほしいです。
何度も何度もイかせて、たくさん……」
手を伸ばしカイルの腹筋を撫でる。
「カイルのこと、汚したいです」
興奮に上擦った息を漏らすとふっと笑ったカイルが仕方ないなと呟いた。
「……ああっ!!」
アミルを突き上げ奥の深いところを穿つ。
同時に乳首を舐め、舌で転がされた。
「あ、ああっっ!」
中を貫かれる快感にカイルのペニスを締め付けて震える。
イイ箇所や奥を集中的に突かれ急速に熱が高まっていく。
達する直前、カイルの目がアミルを捉えた。
『出して』
言外の言葉にアミルは激しく痙攣しながら達した。
自分の吐き出した飛沫がカイルの腹に散り、汚していく様を興奮を以て見下ろす。
他のものでは得られない満足感と高揚感。
カイルだけがアミルにこんな感覚を与える。他の誰かでは代わりにはならない。
吐き出し終えたところでカイルの動きが再開される。
的確にアミルの弱いところを嬲り快感を与えていく。
繰り返し貫かれ何度目かの飛沫をカイルの腹に吐き出し、吐き出された飛沫を中で受け止める。
まだ足りないと足を絡めると耳元で笑われ「淫乱」と吹き込まれた。
ぞくりと震えカイルの肩に掴まる。
「あうっ!」
続けて腰を打ち付けられ奥を抉られる。
イイところをぐりぐりと押され悲鳴を上げてカイルにしがみつく。
お互いに熱を吐き合って快楽を与え合う。
何と形容されなくてもいい。
この関係はアミルが望んだもの。
揺さぶられながら目に入った鎖骨に吸い付くとぴくんと反応がある。
口元を吊り上げるとアミルの悪戯を咎めるように腰の動きが激しくなった。
「あっ、カイルっ!」
「アミル、気持ちイイ?」
「んっ、いいっ、……イイっ!」
もっとと願うといいよと笑う。
目を細めて見つめる、その表情にアミルも笑みが浮かぶ。
強く奥を穿たれてきゅうぅっと締め付ける中に熱を吐かれた。
共に達する快楽に名前を呼び身悶える。
出会った頃には想像もしなかった関係。
けれど、この先も共にいることを迷わないくらいに。
今、満たされていた。
【副団長ルート 完】
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