騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

文字の大きさ
上 下
11 / 69
共通ルート

明確な目標

しおりを挟む
 

 あの聴取の日から、カイルとの情事を見られた後からアミルは団長に避けられていた。
 これまでも関わりは少なかったけれど、わずかに視線が合うだけで目を逸らされる。
 腫れ物に触れるような関係、それが僕と団長の関係を正しく表している気がした。


 常に団長の側にいて僕より気まずい関係のはずのカイルはいつも通りだ。

「団長に避けられてるって聞いたけど、落ち込んでないの?」

「落ち込む必要なんてないでしょう。 元々側で話をする機会もなかった方ですから」

 ふーんと軽く答えるカイルには僕の虚勢なんてきっと見透かされている。けれど踏み込んでこないのは知っていた。

「じゃあ、気を紛らわせてあげようか。
 一緒に訓練どう?」

 カイルの顔を見る。その顔は忌々しいほどいつもと同じ。
 ふと。これまで浮かべていた顔も、今の顔も、全て自然なものじゃないんだと思った。
 笑っているように見えても笑っていない。全て演じた顔でしかないんだと。
 今さらそんなことに気づいた自分がおかしくて軽く笑いが零れた。

「光栄です。
 では、お願いします」

 カイルの誘いに従って双剣を手に取りカイルの後に続いた。

 開けた場所まで来て剣を構える。
 カイルの獲物はスタンダードな長剣。応用が利き、騎士団で最も多く使われている武器だ。
 対するアミルの剣は、一般的な剣よりも少し短めの双剣。
 前にカイルが指南してくれてから鍛錬を重ね、扱いには慣れてきた。
 僕の構えを見たカイルがおもしろそうに口の端を吊り上げる。

 ふっと息を吐いて駆け出す。

 右の剣で繰り出した僕の突きを長剣の腹で弾くカイル。
 難なく防がれたことに驚きはない。
 戦闘に参加させてもらえないひよっこと魔獣討伐の最前線で戦う副団長では天と地ほどの差がある。
 反撃する間を作らないよう連続で攻撃を繰り出す。
 繰り返す攻撃の全てを弾き返すカイルの動きをじっと見つめる。
 完全に動きを捉えられていた。

 単調な動きになったところをすかさず撃ち込まれて片剣を取り落とした。
 振り下ろされた長剣を躱し、残った剣を脇腹に向けて突き出す。
 振り下ろしたはずの長剣で突きを弾かれ、体勢を崩される。

「……っ、参りました」

 首元に突き付けられた長剣に降参を告げる。
 全く勝負にならなかった。
 わかっていたことだけれど悔しい。

「基礎訓練もちゃんとしてたみたいだね。
 前より筋力が付いてる」

 自分では実感がなかったけれどちゃんと成長しているらしかった。

「実戦で使うにはまだ修練が足りないけど、アミルは器用だから鍛錬を続けていれば双剣を使いこなせるよ。
 差し当たっては基礎体力と筋力の向上を目標にすると良い」

 筋力が増えたとは言ったけどまだまだだと言われる。
 悔しいけどその通りだった。

 その他にもいくつか助言をもらい、訓練を続ける。
 カイルの言葉は適格で、自分に何が足りないのか明確に理解できていく。
 一刻程打ち合ったあと、次の予定があると立ち去るカイルに礼をし、訓練は終わった。
 やっぱりカイルの剣技はすごい。
 そんな人に直接教えを受けられるなんて貴重な機会だった。
 訓練には参加しているけれど、カイルはあまり面倒見が良い方じゃない。
 強者としていつでも手合わせには応じているけれど、勝つ方法は自分たちで考えて試せといったようすで事細かに助言をするところなんてみたことがなかった。
 細やかに助言をしてくれるなんてかなり希少な機会だったに違いない。
 どうしてかと聞いたらきっと気まぐれだと言うのだろうけど。
 言われたことを念頭に置いて鍛錬を続ける。
 もっと強くなりたい。
 団長や副団長に追いつけるくらい、強く。
 全然足りていないことは自覚している。
 だから繰り返し鍛錬をする。遠い道でも、進まないという選択肢はなかった。


 訓練場を立ち去るカイルに礼を続けるアミル。
 その姿を団長が見ていることには気づかなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

処理中です...