騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

文字の大きさ
上 下
2 / 69
共通ルート

騎士団

しおりを挟む
 

 魔獣の残骸を避け怪我人を探す。
 見習いで戦闘に参加できないアミルは医療班の一員として討伐隊に加わっていた。
 立てないほどの重症な者がいなそうなのにほっとする。

「アミル! こっちも頼む!」

「はい!」

 素早く傷を洗い流し怪我の手当をしていく。
 走り回って治療をしていくと一際大きな男性が目に入る。
 獣の爪にやられたのか左腕からは結構な量の血が流れていた。

「団長! 早く手当しないと!」

「ああ、これくらい大丈夫だ。 団員たちを優先してくれ」

 大したことはないと手を振りアミルの言葉を退ける団長に困っていると別の声が割って入った。

「じゃあ団長の手当は俺がやりましょうか、止血さえしとけば大丈夫そうですし」

 戦闘の後とは思えないほど涼しい顔をした副団長が団長の肩に手を置く。
 手が空いてますからと言う副団長に、ならと団長も頷いた。

「ああ、そうだな。 乱暴にするなよ?」

「オレに丁寧さを求めるのは間違ってますよ。
 まあ、ワザと痛くはしないので安心してください」

 戦闘の後でも普段とまったく変わりない様子の副団長に負傷した騎士たちも感嘆混じりの畏怖の目で見ている。

「副団長、一番最初に魔獣に切り込んで行ったのになんであんなに元気なんだろうな」

「ああ、返り血一つ付いてないぞ」

 化け物か、と囁いた誰かの言に「聞こえてるよ」と答えた副団長の地獄耳に皆口を噤む。

「団長もあの巨鳥を一人で落としてたもんな、いつ見てもすげえよ」

 二人を賞賛する声はあちこちから聞こえる。
 手当てを終えた団長が副団長の報告を聞く姿を見ているとやっぱり別世界の人間なんだと思う。
 騎士団に属していても裏方ばかりの自分とは大違いだ。
 訓練にはきちんと参加しているものの細い腕をちらりと見降ろし首を振る。
 余計なことを考えないで自分のやるべきことをやろう。
 重傷者から順番に手当をしていき、全てが終わるころにはすっかり日は沈んでいた。





 討伐から戻ってきてもアミルの業務は終わらない。
 医療班の一員として負傷者の怪我の程度や施した治療内容、使ったポーションの種類などを報告書として提出しないといけないからだ。
 覚えているうちに使った薬を記録し、薬品棚を閉じた。
 報告書自体は明日纏めることにして、片づけを済ませ部屋に向かう。
 灯を落とした廊下を歩いていると足音が聞こえた。

「あれ、まだ休んでない子がいたんだ」

 暗闇から現れたのは副団長だった。

「副団長! お疲れ様です!」

 敬礼をするとこんな時間なんだからいいよと手を下げるように言われる。
 僕が来た方を見て所属がわかったのか得心したように頷く。

「医療班の子か、遅くまでお疲れ様」

 労いの言葉に恐縮する。

「副団長もこんなお時間までお仕事ですか?」

「そうだよ。
 団長が報告書を面倒がるから」

 だから俺がこんな時間まで残業しないといけないんだと肩をすくめる副団長に笑みが零れた。
 雲の上の人だと思っていたお二人に少しだけ親しみを感じる。
 報告書を面倒がるなんて団長にそんな一面があると思わなかった。
 ちょっと可愛いかも。
 そんなことを考えていると副団長がじっと僕を見ていることに気づく。
 失礼だったかと居ずまいを正す。
 何か考えていた副団長がにこりと笑う。


 ちょっといいかなと呼ばれ後をついて行くとそこは副団長の私室だった。
 緊張しながら部屋に入る。
 アミルが与えられた部屋よりも当然だけど大きくて立派だ。
 きょろきょろするのも失礼なので気になっていたことを聞く。

「あの、団長の怪我は大丈夫でしたか?」

 結局医療班の誰にも見せてくれなかったと聞いたので治療をした副団長に様子だけでも聞いておきたかった。

「ああ、大丈夫だよ。
 怪我自体は浅いもので、消毒して止血したくらいで済んだから」

 副団長の話によると出血は多かったものの魔獣の爪が掠めた傷は浅くて消毒と包帯による止血を施したのみで済んだという。

「指も動くし、心配いらないよ。
 深刻な怪我だったら引きずってでも医療班に見せてるから」

「あ、そうですよね」

 いくら部下を優先してほしいと団長が言ったからって大怪我なら副団長が見逃すわけがない。
 薬は副団長が自分で常備してる物を使ったそうなので報告書には記載しなくていいと言う。

「団長が心配?」

「それはもちろんですよ!
 さっきは深い傷に見えたのに治療をさせてくれないので心配になったんです」

「そう」

 副団長が微笑ましそうに笑う。
 あのくらいあの人にとっちゃかすり傷だから大丈夫だよと言われてやっぱり凄い人だと尊敬の念を新たにする。

「団長に憧れてるの?」

「え?!」

 思わぬことを聞かれて顔がかあっと熱くなる。
 憧れに隠した恋情を言い当てられた気がして慌ててしまう。

「ち、違っ!」

「ふーん、違うの?」

 口元を吊り上げた副団長が目に入った。
 やわらかく笑んでいるように見えるのに、どうしてか不安を覚える笑みだった。

「あの、そういえばお話って?」

「話?」

 空気を変えようと聞くと不思議そうな顔を返される。

「何か話があるから僕を呼んだんじゃないんですか?」

 アミル自身に用があるとは思わないけれど、医療班の人間として何か確認したいことか依頼したいことがあるのではないかと思ってついてきたのだ。

「んー、話っていうか」

 笑みを浮かべたままの副団長が一歩足を進める。
 それだけで間にあった距離が無くなる。
 近すぎる距離に身を引くと背に扉が当たった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

愛しい番の囲い方。 半端者の僕は最強の竜に愛されているようです

飛鷹
BL
獣人の国にあって、神から見放された存在とされている『後天性獣人』のティア。 獣人の特徴を全く持たずに生まれた故に獣人とは認められず、獣人と認められないから獣神を奉る神殿には入れない。神殿に入れないから婚姻も結べない『半端者』のティアだが、孤児院で共に過ごした幼馴染のアデルに大切に守られて成長していった。 しかし長く共にあったアデルは、『半端者』のティアではなく、別の人を伴侶に選んでしまう。 傷付きながらも「当然の結果」と全てを受け入れ、アデルと別れて獣人の国から出ていく事にしたティア。 蔑まれ冷遇される環境で生きるしかなかったティアが、番いと出会い獣人の姿を取り戻し幸せになるお話です。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~

華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

処理中です...