45 / 52
第45話
しおりを挟む
おじさまとの会話の後、私は直ぐにアーステルト家の屋敷を後にした。
おじさまは許してくれただろうが、アーステルト家にそのまま居座れるほど、私は図太くは無かったのだ。
それに、私にはまだやらないといけないことが存在していた。
そう、あの男性の消息を確認するという。
マーリスの会話を経て、私はあの男性がまだアーステルト家に何か仕掛けたわけではないと考えている。
だが、だからといって男性の安全が確定したわけではない。
それ故に、未だ私の中で男性の消息が最優先事項だった。
ただ、男性が最優先事項ではあるが、重要なことはそれだけでは無い。
何せ、現在私は《仮面の淑女》という国内最大の商業組織であることを露わにしている。
その上、マーリスとの婚約が無くなったため、独身だ。
そんな条件が重なれば、他の貴族が取る手など決まっている。
つまり、婚姻による私の取り込みだ。
今現在、マーセルラフト家にはその類の申し込みが溢れている。
また、自家のパーティーに誘いたいという申し込みも沢山。
しかし、私は婚姻に関して積極的では無かった。
マーリスという婚約者とのあの事件があった今、直ぐ次と考えるほど私は冷淡ではない。
特に、あの人を見つけていない今は尚更。
「……あの人が婚約者候補なら」
ふと、私の頭に妄想じみた考えが浮かんだのは、その時だった。
「っ!」
直ぐに自分がはしたないことを考えていることに気づいた私は、顔を赤くして頭からその考えを振り払う。
何せ、相手は時々一時間程度あっていた程度の男性だ。
そんな気持ちを抱くわけなんて、あり得ない。
「でも、あの人とはもっと昔に出会っていた気がする……」
昔、図書館で出会った貴族らしかならぬ姿をした司書と出会ったことを私が思い出したのは、その時だった。
「そんなこと、あるわけないわね」
しかし、まるで別人のような二人を同一視した自分の考えを直ぐに私はあり得ないと打ち消した。
数時間会話しただけにも関わらず、淡い気持ちを抱いたあの司書と、自身を立ち直らせてくれたあの人に対する気持ちを同一視した、自分の一時の迷いだと。
「……それに、どうせもう私は平民と婚姻を結べるわけがないのだから」
……けれど、そう呟い私は気づかない。
「……ルーノ、準備は整ったか」
「はい当主様。あの男性が見つかり次第、分家の養子とするべく手続きを進めております」
はるか遠く、悩む私を見ながら、自身の護衛と父が密談していることを……
ただ、その時の私もあることだけは理解していた。
そう、マーセルラフト家の人間全てが、男性が現れることを望んでいることを。
──にも関わらず、それから1日が過ぎても男性の消息が分かることはなかった。
それは、王宮の使用人の消息などすぐに分かると考えていた私達にとって、まるで予想もしていない事態だった。
だからこそ、日に日に私達の間には焦燥が募っていくことになり──王族からのパーティーの招集が届いたのは、その時だった。
おじさまは許してくれただろうが、アーステルト家にそのまま居座れるほど、私は図太くは無かったのだ。
それに、私にはまだやらないといけないことが存在していた。
そう、あの男性の消息を確認するという。
マーリスの会話を経て、私はあの男性がまだアーステルト家に何か仕掛けたわけではないと考えている。
だが、だからといって男性の安全が確定したわけではない。
それ故に、未だ私の中で男性の消息が最優先事項だった。
ただ、男性が最優先事項ではあるが、重要なことはそれだけでは無い。
何せ、現在私は《仮面の淑女》という国内最大の商業組織であることを露わにしている。
その上、マーリスとの婚約が無くなったため、独身だ。
そんな条件が重なれば、他の貴族が取る手など決まっている。
つまり、婚姻による私の取り込みだ。
今現在、マーセルラフト家にはその類の申し込みが溢れている。
また、自家のパーティーに誘いたいという申し込みも沢山。
しかし、私は婚姻に関して積極的では無かった。
マーリスという婚約者とのあの事件があった今、直ぐ次と考えるほど私は冷淡ではない。
特に、あの人を見つけていない今は尚更。
「……あの人が婚約者候補なら」
ふと、私の頭に妄想じみた考えが浮かんだのは、その時だった。
「っ!」
直ぐに自分がはしたないことを考えていることに気づいた私は、顔を赤くして頭からその考えを振り払う。
何せ、相手は時々一時間程度あっていた程度の男性だ。
そんな気持ちを抱くわけなんて、あり得ない。
「でも、あの人とはもっと昔に出会っていた気がする……」
昔、図書館で出会った貴族らしかならぬ姿をした司書と出会ったことを私が思い出したのは、その時だった。
「そんなこと、あるわけないわね」
しかし、まるで別人のような二人を同一視した自分の考えを直ぐに私はあり得ないと打ち消した。
数時間会話しただけにも関わらず、淡い気持ちを抱いたあの司書と、自身を立ち直らせてくれたあの人に対する気持ちを同一視した、自分の一時の迷いだと。
「……それに、どうせもう私は平民と婚姻を結べるわけがないのだから」
……けれど、そう呟い私は気づかない。
「……ルーノ、準備は整ったか」
「はい当主様。あの男性が見つかり次第、分家の養子とするべく手続きを進めております」
はるか遠く、悩む私を見ながら、自身の護衛と父が密談していることを……
ただ、その時の私もあることだけは理解していた。
そう、マーセルラフト家の人間全てが、男性が現れることを望んでいることを。
──にも関わらず、それから1日が過ぎても男性の消息が分かることはなかった。
それは、王宮の使用人の消息などすぐに分かると考えていた私達にとって、まるで予想もしていない事態だった。
だからこそ、日に日に私達の間には焦燥が募っていくことになり──王族からのパーティーの招集が届いたのは、その時だった。
2
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる