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本編
05
しおりを挟む促されるままに俺はまた食事を再開した。その間も説明は続く。
ここはこの男が所有している部屋の1つであり、よく鬼が診察をしてもらいに来たり、怪我を見せに来る場所でもあるらしい…
よって治療の機材も一式揃っているみたいだ。ちなみに所有地を開拓して1階と2階は簡易的な診療所のようになっており、酷い怪我の場合はマシになるまでベッドを貸す事もあるんだとか…
病院みたいにベッドはないが、設備はしっかりしているし、メンテナンスやら衛生面もしっかりしているので下手なところよりは安全だろうと言っていた。
ちなみに3階建てになっており、1階は診察室とか治療室、レントゲンなど用途に別れて部屋がある。
2階はベッド数に応じて個室があり、簡易的なアパートの部屋みたいになっている。ちなみに個室は10部屋ある。その部屋には浴室もトイレも別々にある。
1LDKの間取りだった。病室というにはあまりに豪華なソレに驚く。
冷蔵庫はないが、電気コンロはある。一応、食材とかを準備すれば自炊はできるようだ。
そして、娯楽といえば代表的なのはテレビだがー…一応、部屋ごとに備え付けられてはいるが、時間制になっており、現金を入れるとその額に応じた時間は継続して見れるようになっているようだ。
それと洗濯物だがー…洗濯する場合は一度、部屋を出なくてはならない。コインランドリーみたいになっており、部屋同士の真ん中の空間に5台設置してある。こちらも現金を入れると動く仕組みになっている。
その5台のドラム式洗濯機を境に5部屋と5部屋に別れている。勿論、乾燥機能付き…なんと贅沢な…
泊まらせた後は清掃をして消毒洗浄もしているらしい…その費用は泊まった鬼に払わせているんだとか…
泊まらなかったとしても定期的にそういう事はしているようだ。
そして、3階がこの男の家となっている。その家の中にある一室に俺がいるらしい…
さらにこの階には他に3部屋あって、男に付き従っている庇護鬼の内の3人に、念の為にあてがっているらしい…
「庇護鬼についても冊子に載ってるから後で調べておくと良いよ。」と言われたので、男自身は無駄に説明なんてしないヤツだと理解する。
知らぬ間にこの男と同棲していたようだ…ちなみにこの美味しいご飯も目の前の男が作ったらしい…
その事実に『マジか!!』と驚き食事と男を交互に凝視していたら、わざとらしく肩を竦めてみせた。
☆
その後、用事があるとかで一度、退室していたが…俺の食事が済んだ頃…結構、直ぐに部屋へと戻ってきた。そして徐に男は口を開いた…
「あぁ、そうだった…そういえば名前をまだ教えてなかったね。僕の名前は義輝。アンタじゃないから。ちゃんと呼んでね~」
そう言って有無を言わさない態度でニッコリと笑う。その無言の圧にどうやら『アンタ』と呼ばれるのが気に障っていたらしいという事を理解する…。
「義輝?」
「そ、義輝。まだ冊子を読んでいないから分からないと思うけど…僕にはまだ番がいないから苗字はないんだよ。」
『苗字がない』=『番がいない鬼』という事のようだ。
「それと…さっき分かった事なんだけど…」と言って考えるように首を傾げている。端から見れば言うか言うまいか悩んでいる仕草にも見えた。
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