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本編
04
しおりを挟む名前も心機一転…五十嵐 修兵と書かれている。
『誤った正義を振りかざす毒親とはお別れしようね~』という事らしく、全ての誤解が解けた後…自分たちの過ちをなかった事にして俺が無条件で彼らを許すと思っているきらいがあると言っていた。
なんとなく自分もそんな気はしていた…
「実の息子を庇わない親なんて普通は居ないでしょ…けど…君の親は両方ともアルファなだけあってアルファ至上主義なところがあるみたいだね。基本的にオメガは差別の対象だし、ベータは見下す傾向にあるね」
と言っていた。普段の様子からなんとなくそんな気はしていた…幼馴染であり、今では元恋人になった彼を家に連れ帰れば息子の用に大切にしていたし…下手をしなくても俺以上に大切にしていた。思い返せばよく分かる。
「君の元恋人君はアルファの中でも劣等種みたいだね~」
何故か『元恋人』の『元』を強調して、冷めた口調でそう言った。聞き慣れない言葉に首を傾げていると説明してくれた。
素質のある努力家のベータの足元くらいだという。俺の周りの皆はその人に勝てず、アルファの中のアルファに見えた。目の前の男にそう伝えれば「随分と狭い世界の住民だね~。世界は広いんだ。あの程度がアルファの中のアルファ…面白い冗談だ。」と言って冷たい笑みを浮かべた。その表情に底知れぬ恐怖が湧き起こる。
「ふふ、怖がらなくて良いから。これから見聞を深めれば大丈夫でしょ…どれだけ自分が知らなかったのか分かるよ」
そう言って薄い数冊の冊子がサイドテーブルに置かれる。第二の性の内容が書かれている冊子の他に『鬼』について書かれている冊子が現れる。
俺は食事をそっちのけにして、その冊子を手に取って男を見上げると『どうしたの?』とでも言う風に首を傾げてみせた。
「鬼の存在を知らない人間のアルファは劣等種が殆どだよ。知っておくと良い。素質のあるベータは鬼を知っているし。君の言う選ばれし者がどういったアルファなのかは知らないけど…上層に位置するアルファなら知っていて当然の事だからね」
と言ってクスリと笑った。俺は気になった事を聞いた。
「アンタもアルファ?」
そう言った俺の言葉に少しだけ驚いたような表情を浮かべたもののそれも一瞬だけで、直ぐに貼り付けたような笑みに変わる。
「ま、鬼は男のアルファしかいないからねぇ…その質問は愚問だよ。」
現に俺は鬼だと言っている目の前の男を凝視してしまった。質問をする前に自分で調べろ。目の前の冊子に答えがあるだろ。と言われているような空気に何ともいえない気持ちになった。
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