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50話 互いの愛情 その1

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「それでは、その寂れた教会内で起きた事故……結果的に国王陛下に怪我を負わせてしまったことについては、お咎めなしということですか?」

「懲役刑になっているわけではないので、免責ということだと思います。ネプト様が7年前のことだし、自分は正体を隠していたので、そこまで大きな問題にはしないとおっしゃったようでして」


「その部分については、ネプト国王陛下も甘い決断をされた模様ですね。やはり、今回のことが響いているのでしょうか」


 それはあるのかもしれない……ウォーレスとニーナを断罪した直後からの、私への側室発言だったわけだ。それはフォルセの反発を生み、スザンヌ様との衝突を生んだのかもしれないわね。

 だからと言ってニーナの罪に対して減刑をする必要はないのだけれど、ネプト様なりの優しさが出たといったところだろうか。まあ、家から追い出される時点で相当な罰ではあるのだけれど……。


「アーチェ嬢、よろしいでしょうか?」

「はい、なんでしょうか?」

「あなたは……まだ、ネプト様のことを愛しているのでしょうか?」

「そ、それは……」


 いきなりの質問だった……ネプト様に関連する話はしていたけれど、まさかこういう流れでネプト様への愛について聞かれるなんて。

「いえ、あの方への感情は今でも持っているとは思います。しかし、私と共に歩んでいただけるのでしたら、近い内に婚約をしていただけませんか?」

「せ、セルガス様……? それは本気ですか……?」

「はい、本気です。私はあなたという人物に興味がありますし、あなたと一緒になれば今後、退屈せずに済みそうだ。私は家の次男である為、当主になる可能性は低い。あなたが私と一緒になった場合の負担というのも軽減されるでしょう。フォルセはその辺りのことも考えて、私を紹介させたようですよ」

「フォルセが……確かにそんな話は聞いたことがありますが……」


 まったくあの子は……本当におせっかいなんだから。セルガス様と結婚をした場合、将来的には彼は王国の要職に就くことになるのだろう。まだ16歳だから、どういう仕事に就くかは決まっていないだろうけれど……そうか、フォルセはその妻になることまで考えてくれているわけか。

「セルガス様……」

「はい、アーチェ嬢」

「私は……」


 どのように答えれば良いか……それはもう、決まっていた。



---------------------


(スザンヌ視点)


「済まない、スザンヌ。待たせたかな?」

「大丈夫よ、ネプト。私も今来たところだから……」


 ネプトは優しい笑顔を私の方へ向けてくれている。いつもと変わらない笑顔だ。そう……私達の愛情は今までと何も変わっていないのだ。あの風習を破った夜……あの日以降も、仮面夫婦になることはなかった。もちろん表向きは仮面夫婦を演じる演技はしてきたけれど、私達の仲は周囲にも知られていたのだし。

 私は密かにそれが嬉しかった。でも、今は違っている……彼の心を独占している人物は……。


「それで、話と言うのは? 一体、どうしたのだ?」

「ええ……用件なんだけれど」


 私は彼にアーチェのことをどう思っているのか、聞かなければならない。まだ、側室として迎え入れる気があるのか。彼の返答次第では、私の今後に大きく影響してくるからだ。

 でも、私は心のどこかで願っていた。彼が……アーチェのことを完全に諦めてくれることを。望めないことだと分かっていても、心がそれを欲してしまっていたのだ……。
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