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51話 互いの愛情 その2

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(スザンヌ視点)


「ネプト……あなたに聞きたいことがあるの」

「ああ、おそらくはアーチェのことかな?」


 流石に分かっているようね。護衛のウィンスタートも意外な表情をしていた。

「当たりかな?」

「当たっているわ。手間が省けて良かった」


 ネプトは察しが良い時と悪い時の両方がある。スムーズに話が進みそうで安心だった。私と立場としては二人の心情を優先し、機械的にサポートをしなければならないのだけれど。ウィンスタートに相談したところ、

『後悔のない選択を』

 とだけ返って来た。彼は私の専属護衛だけれど、分をわきまえているのだ。

「ネプトは、アーチェのことを今でも好きなんでしょう? 側室として迎え入れることを考えているのよね?」

「……」


 私は後悔しないように、ネプトに直接聞いてみることにしたのだ。彼は無言になっている……その心は何を思っているのか。


「答えにくい質問が飛んできたな。スザンヌらしいと言えば、そうなるのだろうが……」

「そうかもしれないわね。でも、私の気持ちは汲み取ってくれるでしょう?」

「そうだな……私達は慣習的な仮面夫婦ではない。スザンヌが心配になるのは分かるよ。君としては、側室の話はなかったことにして欲しいのかな?」

 今のネプトは察しが良いみたいだ。私の考えていることを見事に当てている。

「そういうことになるわ。単純に恋愛的な意味も含まれるけれど、アーチェと対立したくはないというのも大きいわね。以前に彼女に全面的にサポートすると言っておいて何だけれど……」


 私は本音を言ったつもりだった。ネプトとは若気の至りでこういう関係になったけれど、彼との子を産み大切に育てたいという気持ちに嘘はないのだから。

「私の気持ちとしては、アーチェのことを諦めて欲しいと考えているわ。お願いネプト……彼女には新しい恋を進ませて欲しいの。私だけを見て頂戴……」

「……」

 彼は再び無言になった。私の感情と自分の感情……その葛藤が出ているのかもしれない。

「私は……」

「ええ、ネプト」

「私は……現在でも、アーチェを側室に迎え入れたいと思っている。それは、7年前の寂れた教会からの願いだった気がするのだ」

「ネプト……!」


 私の願いは通じなかった。もっと懇願するように頼み込めば彼は頷いたかもしれない。でも、それはしたくなかったのだ。私はネプトの意思を尊重したくもあったから。


「アーチェが側室になればきっと、苦労も増えるだろう。しかし、私は彼女と共に過ごして行きたい。これは私の我が儘でしかないが……運命を感じずにはいられないのだ」


 聞きたくない言葉だった……でも、これも想定の範囲内の事柄だ。


「運命……ふふ、その運命というのは教会で変装していた時、一緒に遊んだというあれのこと?」

「そういうことだな。それから最近まで、アーチェがジョンを死んだと誤解していたことも挙げられる。その部分をニーナに突かれ、彼女は振り回されて来たのだ。私はそんな彼女を救いたいと思っている。今後は信頼の置ける味方を用意し、生活面でも困らないようにしてあげたい」


 アーチェは現在でも、信頼できる家族に守られているはず。今後というのは、王家に嫁いでからもと言う意味ね。無垢な彼女には様々な者達が近付いて来るだろうから、そんな魔の手から守りたいといったところかしら。

「スザンヌ、これが私の気持ちだが……私に付いて来てくれるか?」

「今更ね、ネプト。私はもうあなたについて行く以外の選択肢なんてないわ。第一王妃としての責務を全うする。国民に余計な不安を与えるわけにはいかないもの」

「そうか……ありがとう、スザンヌ」

「構わないわ、ネプト」

 私達の会話はそこで終了となった。一滴の涙が床に落ちてしまったからだ。護衛のウィンスタートは動揺している様子だったけれど、それは些細な問題でしかなかった。私の中の悲しみに比べれば……。

 あとは……アーチェがどのような判断をするかといったところかしら。
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