幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
上 下
14 / 60

14話 アーチェに会いに行く その2

しおりを挟む
「ニーナだけでなく、ウォーレスも来るのね……」

「そうみたいです、アーチェ姉さま」

「ウォーレス殿とニーナ嬢……一体、何を考えておるのか」


 ウォーレスとニーナ……二人がノーム伯爵家の屋敷に来るという連絡は、お父様に最初に伝わった。現在、お父様とフォルセが私の前で話している。二人とも怪訝な表情を見せながら。


「内容的には、前のパーティーの続きになるでしょうね」

「そうですね、姉さま。ニーナ嬢は正直、何を考えているのか分かりませんが、ウォーレス殿はなんとなく想像できますね」

「そうね……」

 ニーナに適当な甘言に惑わされて、私に再度の告白などを考えていそうだ。今度はパーティーの席ではないし、成功するかもしれないと思っていそう……。そんなわけないのに……。


「それでアーチェよ。二人と会うのか? 正直、会う必要性が感じられないが……」

「それはそうなのですが、二人とは幼馴染でしたし。ウォーレスはともかく、ニーナとは話がしたいという想いがあります」

「ふむ……お前のその幼馴染を大切にする、という感情は優しさから来ているのだろうが、諸刃の剣にならなければ良いがな」

「父上、流石にそれは言い過ぎかと思います。姉さまは別に悪気があるわけでは……」

「そんなことは分かっている。しかし……このまま二人と話をした場合、アーチェ一人では押し切られてしまうだろう」

「えっ……それは……」


 フォルセは私を庇ってくれているけれど、お父様の言い分は正しいと思えた。私は少し幼馴染という関係に固執し過ぎているのかもしれない。親友と思っていた二人だし、裏切られるのが怖いのだ。いえ、既にウォーレスには裏切られているけれど……。

 ウォーレスはともかくとして、ニーナは仕方なく、ウォーレスと婚約していると思いたかった。表向きはともかく、心の底ではニーナは悪いと思っていると。だからこそ、今回はニーナと腹を割って話したかった。まあ、ウォーレスがおまけで付いて来るのは避けられないけれど。

「ニーナ嬢は、高級なお茶菓子を持ってくるのだそうだ。滅多に手に入らない、他国のお菓子のようだぞ」

「そうなんですか……仲直りの証のつもりなんでしょうか」

「それは都合よく考えすぎだろう。向こうからすれば、話をする為の撒き餌のようなものだろう」

「そうですね……撒き餌というのは正しいかと」


 お父様もフォルセも、二人のことを全く信用している気配はなかった。私もこれくらい割り切れたら楽なのに……。どうしてもそこまでは割り切れない自分が居る。

「しかし、今回は私も居るのだから、安心しても大丈夫だろう」

「お父様……はい、ありがとうございます。それからフォルセも……」

「いえ、気になさらないでください、姉さま」


 母様は不在だけれど、弟のフォルセ、お父様が味方をしてくれる。ニーナだって迂闊なことを言うわけにはいかないだろう。さらには……。


「私の出番はないことを祈っている」

「ネプト国王陛下……」


 ノーム家の屋敷には既にネプト国王陛下が待機しているのだった。強力な専属護衛と一緒に。正直、この場にいらっしゃるのが奇跡のように感じられる。

 ニーナとウォーレスにとっては、本当に迂闊なことを言えない状況になりそうね。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

処理中です...