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13話 アーチェに会いに行く その1
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(ウォーレス視点)
「ねえ、ウォーレス。今度、アーチェのお屋敷に行きましょうよ。菓子折りを持って」
「ど、どうしたんだいニーナ? いきなり……」
あのパーティーの日から数日が経過していた。突如、ニーナがそんなことを私に言って来たのだ。
「だからアーチェに会いに行くんですよ。別にそのくらいは普通でしょう?」
「いや、しかし……アーチェは私の告白を断って来たんだし。流石に今は会えないだろう? 会いにくいよ」
アーチェから拒絶されて、彼女の弟のフォルセにまであんなことを言われたのだ。私は現在、軽く告白したことを悔やんでいた。なぜ、あんなことを言ってしまったんだろうか。しかも、パーティーの最中、ネプト国王陛下も居たのに……。
「アーチェは私と後日、話してくれることを約束してくれました。菓子折りを持って、私の方から訪ねても何も問題はないでしょう」
「それならニーナが一人で行ってくればいいだろう? 私は今はそんな気分じゃないんだ……分かってくれ」
「何を言っているんですか? ウォーレス?」
「ニーナ……?」
ニーナは呆けた表情になっていた……私の言った言葉はそんなに変だっただろうか? いや、そんなことはないはずだが……。
「ウォーレス……あなたは悔しくないのですか? アーチェに拒否されただけならばともかく、フォルセにまであんなことを言われて……」
「そ、それはまあ……悔しいけど……」
「あなたとフォルセも幼馴染みたいなものでしょう? 昔のことを思い出してください。アーチェに比べて記憶が曖昧かもしれませんが」
「それは……」
確かにフォルセとも広義の意味では幼馴染になっていた。私が兄貴分的な存在だったと思うが。そう考えると弟分のフォルセにあんな説教をされたことになるのか。
「だが、フォルセやアーチェとは顔を合わしたくない……少なくとも今わね」
「大丈夫ですよ、ウォーレス。私が付いているじゃありませんか。それに……幼馴染に会いに行くだけなのに、何をそんなに警戒する必要があるんですか?」
ニーナの様子はまったく変わらない。先ほどは呆けた表情をしていたが……あのパーティーの後も彼女は平然としていた。ニーナの言動は謎が多いが、そんな彼女を見ているとこっちまで勇気が湧いて来るのは事実だ。
「ニーナの目的は一体なんなんだい?」
「私の目的ですか? アーチェが言っていたじゃありませんか、私がウォーレスに助言をしているのはなぜかって。その理由を話しに行くんですよ。それから……」
「それから?」
ニーナは優しく微笑んだ。天使のように可愛らしい。
「彼女は幼馴染という部分に固執しています。前はパーティーの席でしたし、ネプト国王陛下達も居たので断られましたが」
「に、ニーナ? そ、それって……」
「まだ、諦めるのは早いですよ、ウォーレス。幼馴染3人で仲良く暮らしていく……その素晴らしさをアーチェにしっかりと分かってもらうんです。彼女なら分かってくれますよ、必ずね……ふふふ」
少しだけニーナのことを怖いと思ってしまったのは気のせいだろうか? この娘は……アーチェの心情を完璧に把握している気がしてしまった。パーティーの中で早めに話を打ち切ったのも、計画だったのかもしれない……。
でも、大丈夫だ……私もニーナに付いて行けば、アーチェを手に入れられる。そんな自信が生まれてしまうから。
「ねえ、ウォーレス。今度、アーチェのお屋敷に行きましょうよ。菓子折りを持って」
「ど、どうしたんだいニーナ? いきなり……」
あのパーティーの日から数日が経過していた。突如、ニーナがそんなことを私に言って来たのだ。
「だからアーチェに会いに行くんですよ。別にそのくらいは普通でしょう?」
「いや、しかし……アーチェは私の告白を断って来たんだし。流石に今は会えないだろう? 会いにくいよ」
アーチェから拒絶されて、彼女の弟のフォルセにまであんなことを言われたのだ。私は現在、軽く告白したことを悔やんでいた。なぜ、あんなことを言ってしまったんだろうか。しかも、パーティーの最中、ネプト国王陛下も居たのに……。
「アーチェは私と後日、話してくれることを約束してくれました。菓子折りを持って、私の方から訪ねても何も問題はないでしょう」
「それならニーナが一人で行ってくればいいだろう? 私は今はそんな気分じゃないんだ……分かってくれ」
「何を言っているんですか? ウォーレス?」
「ニーナ……?」
ニーナは呆けた表情になっていた……私の言った言葉はそんなに変だっただろうか? いや、そんなことはないはずだが……。
「ウォーレス……あなたは悔しくないのですか? アーチェに拒否されただけならばともかく、フォルセにまであんなことを言われて……」
「そ、それはまあ……悔しいけど……」
「あなたとフォルセも幼馴染みたいなものでしょう? 昔のことを思い出してください。アーチェに比べて記憶が曖昧かもしれませんが」
「それは……」
確かにフォルセとも広義の意味では幼馴染になっていた。私が兄貴分的な存在だったと思うが。そう考えると弟分のフォルセにあんな説教をされたことになるのか。
「だが、フォルセやアーチェとは顔を合わしたくない……少なくとも今わね」
「大丈夫ですよ、ウォーレス。私が付いているじゃありませんか。それに……幼馴染に会いに行くだけなのに、何をそんなに警戒する必要があるんですか?」
ニーナの様子はまったく変わらない。先ほどは呆けた表情をしていたが……あのパーティーの後も彼女は平然としていた。ニーナの言動は謎が多いが、そんな彼女を見ているとこっちまで勇気が湧いて来るのは事実だ。
「ニーナの目的は一体なんなんだい?」
「私の目的ですか? アーチェが言っていたじゃありませんか、私がウォーレスに助言をしているのはなぜかって。その理由を話しに行くんですよ。それから……」
「それから?」
ニーナは優しく微笑んだ。天使のように可愛らしい。
「彼女は幼馴染という部分に固執しています。前はパーティーの席でしたし、ネプト国王陛下達も居たので断られましたが」
「に、ニーナ? そ、それって……」
「まだ、諦めるのは早いですよ、ウォーレス。幼馴染3人で仲良く暮らしていく……その素晴らしさをアーチェにしっかりと分かってもらうんです。彼女なら分かってくれますよ、必ずね……ふふふ」
少しだけニーナのことを怖いと思ってしまったのは気のせいだろうか? この娘は……アーチェの心情を完璧に把握している気がしてしまった。パーティーの中で早めに話を打ち切ったのも、計画だったのかもしれない……。
でも、大丈夫だ……私もニーナに付いて行けば、アーチェを手に入れられる。そんな自信が生まれてしまうから。
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