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第22章(3)雪side
22-3-3
しおりを挟むきっとまた、橘さんの無茶な頼みを聞いたんだーー……。
そして、その根底にあるのはオレの為。同じ人型魔物でありながら、何の役にも立たないオレの代わりに、響夜は全てをその身に引き受けてくれているのだ。
そんな響夜に、オレは何が出来るーー?
また、涙が出そうだった。
泣く事しか出来ない自分が嫌で、必死に堪えてオレは響夜を看病した。
その夜、ふと目を覚ました響夜が言ったんだ。
「……なに、泣いてんだよ?」
オレは、涙を流していなかった。けど、きっと響夜の瞳にはそう映ったんだろう。
でも、そう声をかけられたら泣きそうで……。
辛いのは響夜なのに、涙を見せる訳にはいかない。オレは慌てて、顔を隠す為に背を向けようとした。そしたら……。
「ーー……行くな」
「!っ、……」
オレの身体を包み込む、熱い体温。
響夜が、オレを抱き締めて呟いた。
「何処にも、行くな……」
「っ、きょ……」
「ずっと……そば、……いて、くれ…………」
ずっと、傍に居てくれーー。
ーー……
響夜は、きっと覚えてない。
オレにそう呟いた後。すぐにまた寝てしまったから、高熱で意識が朦朧としていた最中の事だったんだ。
回復してからは以前通りだし、響夜は何も言わなければ……オレに触れてもこない。
でも、嘘じゃない、って分かっちゃったんだ。
オレを抱き締める優しい腕。叶わない願いを言うような、祈るような声。
ーーずっと、一緒に居て……ーー
それが、響夜が唯一望む事なら……。
「オレ、一緒には……暮らせない」
オレには、響夜を裏切れなかった。
ズキッズキッ、と痛む胸と今にも溢れそうな涙を堪えながらオレは紫夕を見上げて言った。
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