スノウ2

☆リサーナ☆

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第22章(3)雪side

22-3-4

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昔は少し悔しかった紫夕しゆうとの身長差を、今日ほど、良かった、と思う日はないだろう。俯かず、見上げていれば、涙が溢れずにすむ。

……紫夕しゆうは、暫く何も言わなかった。
ただ、オレを見つめていた。

おかしいな。
髪型も、服装も、変わってないのにーー……。

その姿が、またカッコ良く映って……。オレはその姿を瞳に焼き付ける。

これで最後ーー。

そう、思いながら……。

「……。帰って……」

「……」

「誰か来る前に……。橘さん父さんに見付かる前に、早く……」

「ーー俺は、この世界を変える」

でも。
別れの言葉を告げたオレに、紫夕しゆうが言った。

ーー……え?

最初は、その言葉に驚いた。
けど、その驚きはすぐに別のものに変わった。オレに、自らの気持ちを伝えてくれる紫夕しゆうの表情を見た瞬間に……。

「人間と魔物が共存出来る世界を創る」

「……」

「俺は、その為に守護神ガーディアンに戻ったんだ」

「……」

「その夢は、絶対に諦めない。
自分の夢も、お前の夢も……俺は諦めない」

「っ、ーー……」

迷いのない強い眼差しに、全てを包み込んでくれるような柔らかな笑顔。そして、「諦めない」と言った言葉に、オレは思い出していた。 

ーー……ああ、紫夕しゆうだ。
これが、オレの……1番大好きな、紫夕しゆうだ。

引き取ってもらって、一緒に過ごして……。色んな紫夕しゆうを見て、オレはだんだんと惹かれていった。
けど、その中でも1番好きだったのは"守護神ガーディアンである紫夕しゆう"。

守護神ガーディアンの隊員として、迷いなく生きる紫夕しゆうだったーー。

憧れて。
恋焦がれて。
その真っ直ぐな眼差しの向く未来さきを、オレも一緒に見たかった。
ずっと隣に居て、その、夢を語る横顔を見つめていたかった。

紫夕しゆうが、一段と眩しく映った理由が分かった。
新たな目標を見付けて、守護神ガーディアンの総指揮官として、再び歩み出したからだ。
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