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第22章(3)雪side
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しおりを挟む昔は少し悔しかった紫夕との身長差を、今日ほど、良かった、と思う日はないだろう。俯かず、見上げていれば、涙が溢れずにすむ。
……紫夕は、暫く何も言わなかった。
ただ、オレを見つめていた。
おかしいな。
髪型も、服装も、変わってないのにーー……。
その姿が、またカッコ良く映って……。オレはその姿を瞳に焼き付ける。
これで最後ーー。
そう、思いながら……。
「……。帰って……」
「……」
「誰か来る前に……。橘さんに見付かる前に、早く……」
「ーー俺は、この世界を変える」
でも。
別れの言葉を告げたオレに、紫夕が言った。
ーー……え?
最初は、その言葉に驚いた。
けど、その驚きはすぐに別のものに変わった。オレに、自らの気持ちを伝えてくれる紫夕の表情を見た瞬間に……。
「人間と魔物が共存出来る世界を創る」
「……」
「俺は、その為に守護神に戻ったんだ」
「……」
「その夢は、絶対に諦めない。
自分の夢も、お前の夢も……俺は諦めない」
「っ、ーー……」
迷いのない強い眼差しに、全てを包み込んでくれるような柔らかな笑顔。そして、「諦めない」と言った言葉に、オレは思い出していた。
ーー……ああ、紫夕だ。
これが、オレの……1番大好きな、紫夕だ。
引き取ってもらって、一緒に過ごして……。色んな紫夕を見て、オレはだんだんと惹かれていった。
けど、その中でも1番好きだったのは"守護神である紫夕"。
守護神の隊員として、迷いなく生きる紫夕だったーー。
憧れて。
恋焦がれて。
その真っ直ぐな眼差しの向く未来を、オレも一緒に見たかった。
ずっと隣に居て、その、夢を語る横顔を見つめていたかった。
紫夕が、一段と眩しく映った理由が分かった。
新たな目標を見付けて、守護神の総指揮官として、再び歩み出したからだ。
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