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第20章(3)紫夕side
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しおりを挟むだから、信じられなかった。
お袋の病が発覚して、もう余命僅かだと知った親父が、俺を育ててくれる人生を選んでくれた事が……、……。
きっと、お袋を護ってやれなかった罪滅ぼしなんだ、って……。
お袋が安心して眠りにつけるようにそうしたんだ、って……。そう、思った。
「……ありがとな、斬月。
もう、いい……。もう、いいよっ……」
これ以上見ても、何も変わらないと思った。
そう言ったのは、だから親父を嫌いになるとか。愛されてなかったから投げやりになる、とかじゃなくて……。
しっかりこの事実を受け止めて、生きていこう、って思えたからだった。
……けど。
そんな俺に、斬月は更に続きを見せていく。
「もういい」って言っても、お袋が死んで、俺と二人きりで生活する親父の様子を見せ続けた。
仕方なく見続けていくと、その様子は次第に少しずつ変わっていっているようにも思えた。
俺と生活し、遊んだり、稽古したりしてバカ笑いしてる親父の笑顔が偽りだとは思えなくて……。誰がどう見ても、事情を知らない人は俺と親父を本当の親子だと信じて疑わないであろう雰囲気。
現に、当時の俺だって本当の親子だと信じて疑わなかった。それくらい、楽しくて幸せな毎日だったのだから……。
でも。
やっぱりさっきの親父の様子を知っている俺には、不安と不信が拭え切れなかった。
表面上は笑顔でも、心の中では違うんじゃないか?って……、……。
親父に愛される事を、諦めかけた俺がいた。
ーー……けど。
そんな俺の心に、聞こえたんだ。
「ありがとな、紫夕」
ーー……え?
「生まれてきてくれて、ありがとう……!」
そう言われた瞬間。
俺の身体をギュッと、力強い"何か"が包み込んだ。
オレは、紫夕が愛おしいーー。
そして、伝わってくる。
そう囁かれる、あの時言葉にはされなかった心の声がーー……。
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