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第9章(3)雪side
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しおりを挟むシン……ッ、となる店内。
紫夕の、感情の全てを絞り出したような呟きが、響く。
「俺が、どんな想いでっ……。っ、どんな想いで、この半年間いたと……ッ」
オレと紫夕のいけなかった事は、互いを気遣うあまりに自分の本音や考えを伝えて来なかった事。
傷付けてはいけない。触れちゃいけない。些細な思いやりの我慢が積み重なって、ついに、一気に溢れてしまった。
斬月に触れて全てを知ったあの瞬間。紫夕が話してくれたあの日。
オレには紫夕がどれだけ辛い想いや日々を重ねて頑張ってくれたのか知っていたのに……。"自分のせいだ"と言う強い想いから、それを勝手に"なければ良かった事"にしてしまった。
それが同時に、紫夕がオレを想ってしてくれてきた事を否定するような形になってしまうとも、気付かずに……、……。
「……っ、しゆ……」
「っ……!!」
テーブルの上で握り締められて震えている拳に触れようとしたら、バッ!!と、その手を振り解かれた。
そして、気不味そうに目を逸らした紫夕は席から立ち上がって……。
「……わりぃ。トイレ、行ってくる」
そう言って、その場から去って行った。
オレにはそれを、黙って見送る事しか出来なかった。
オレは、何も、出来なかったんだ。
……
…………。
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