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第9章(3)雪side
9-3-5
しおりを挟むだけど、不安で、申し訳なくて……。
ずっと言えなかった想いが、そんな捻くれた言葉で口から出てしまった。
紫夕は、ずっと優しかった。
引き取られるキッカケになったあの出会いの時こそ怒鳴られて殴られたけど、守護神に連れて行かれて、一緒に暮らすようになってからはずっと優しくしてくれて、怒られた事なんてなかった。
だから、オレは甘えてた。
きっと紫夕なら、オレの気持ちを受け止めて、優しく宥めてくれると思ったんだ。
抱き締めて、「そんな事言うなよ」「オレはお前が好きだ」って……。そう、言って欲しかったんだ。
オレが目覚めるまでに、紫夕がいっぱい悩んで、迷って、辛い想いをした事を客観的には分かっていながら……。自分の気持ちにいっぱいいっぱいで、止められなかった。
その結果ーー……。
「……、……なんだよ、それ。
……っ、そうかよ。お前には俺が、そんな奴に見えてたんだな」
ーー……え?
「お前がいなくなったら、はい、次、って……。そんなあっさりお前を忘れられる位の想いだって、思われてたんだな」
オレの言葉に、紫夕が傷付くなんて、思わなかったんだ。
だから、顔を上げて、紫夕の顔を見て……。思いがけない表情に、驚きと同時に胸が痛んだ。
っ、し……ゆう?
紫夕が、哀しそうな苦笑いを浮かべていた。
そして、呆れたような口調で言う。
「ガッカリだわ……。じゃあ、逆の立場だったらお前はあっさり俺を見切れるんだな?」
「え……?」
その質問に、ハッとして……。自らが放った言葉の酷さを悟った時には遅かった。
「俺の事なんて綺麗さっぱり忘れて、新しい恋見付けて……そいつと、幸せになるんだな?」
「っ、違うよ!そんな事言ってな……」
「ーー同じ事だろうがッ!!!」
オレの言葉をかき消す紫夕の怒鳴り声。同時にバンッ!!と叩かれたテーブルの上のグラスがガシャンッ!!と音を立てて、割れた。
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