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第2章(3)紫夕side
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しおりを挟む橘の性格ややり方は賛同出来ない事も多々あるが、それでも奴が研究員としての腕や知識がズバ抜けているのも確からしくて……。
「ある程度学んだら独立して、僕は自分の父親のような研究員を目指すさ。大切な人の為にもね」
橘の元に身を置く、ってのは心配だが、「大切な人の為に」って危険な隊員を辞めて新たな人生を歩いている風磨には親近感が湧いて、俺は応援してやりたかった。
そんな気持ちで二人の会話を聞いていると、風磨が響夜に突っ込んだ質問をする。
「ところで、君は橘さんの息子で、雪君の異母兄弟の兄だと聞いているが……。君は、"普通の人間"なのかい?」
その質問には、俺も思わず響夜に目を向けた。
それは、風磨が研究員を目指す者だから気になった質問なのか、それともただ単に気になったから聞いた質問なのかは分からなかったが……。正直、俺も気になっていた。
俺の親父の三月から聞いた話では、橘は独身だったし、なんとなく雪の母親サクラさんとも夫婦、と言う感じではなさそうに思う。
特にサクラさんに関しては恋愛感情で好きだった、と言うよりは"自分が造りだした傑作"と言う意味で大切にしていたっぽいし……。とにかく研究が1番の橘が、恋愛感情やただの性欲で子供を作るとは到底考えられない。
すると、答えづらそうな事にも関わらず響夜はあっさりと言った。
「ああ、もちろんただの人間じゃないッスよ?普通の人間なら、橘が生かしておく訳ないじゃないですか~!」
まるで「そんな当たり前の事今更?」とでも言うように、響夜はおかしそうに笑い、そして言葉を続ける。
「僕の場合は雪と違って……。ん~、そうだな。人間の母親の胎内に出来た際に魔物の細胞と融合させて造られた、って言ったら分かりやすいですかね?」
胎内に出来た際に、魔物の細胞と融合ーー?
それはハッキリ言って、研究員でもなく研究に全く興味のない俺にしてみたら信じられない、嫌悪を抱くものだった。
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