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第2章(3)紫夕side
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しおりを挟むやっぱり、橘の考えは理解出来ねぇし、気持ちわりぃ……。
しかし、そう思う俺の近くで風磨はまるで興味津々と言った感じで響夜に尋ねる。
「けど、それって普通に考えたら不可能じゃないか?何故なら人間と魔物では染色体の構造上……」
「ああ、だから僕の前にめちゃくちゃ失敗してるらしいッスよ。不育、流産、死産……。あと母体が保たないって場合もありますからね。僕の母親も現に出産時に亡くなってますし……」
「それを繰り返し、乗り越え、今と言う成果を生み出したのか……。すごいな、橘さんは」
そう言う風磨の横顔をチラッと見て、俺は正直ゾクッとした。
おいおい、コイツ等マジかよ?
人の生命を何だと思ってんだ?
俺からしたら聞いていて頭が痛くなるし、何より気分が悪くなる。それなのに、橘の息子である響夜が冷静なのは分かるとして……。風磨も今の話を聞いて楽しそうに笑っていたからだ。
これが研究者と、そうでない奴の感じ方の違いなのかーー?
それならば仕方ない、と思いつつも……。何だか変わってしまったような親友の一面に、俺は寂しさと不安が過ぎっていた。研究者として新たな人生を歩み始めた風磨を応援してやる、って決めた矢先なのに、何だか苦しい。
そんな想いからか、俺はいつの間にか二人から距離をあけて少し前を前進していた。
すると、そんな微妙になっていた空気を変えてくれたのは、意外にも響夜の言葉だった。
「ま、そんな事より。今重要なのは、スノーフォールから入手する"龍の涙"ッスよ。
あれ、文字通り、スノーフォールが流した涙が冷たい空気に触れた際に固まって出来る結晶石。脊髄液は討伐した後に採取すればいいとして、龍を泣かせる、って生きてるうちに採取しなきゃいけないのはもちろん、意図的に出来ますかね~?
一応、催涙スプレー類も持ってきましたけど、龍族相手に効くかどうか」
今回の討伐の事に話が戻って、俺はホッと一安心。もう話がおかしな方向へ行かないように、その話題に乗っかろうと口を開いた。
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