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第1章(5)紫夕side
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しおりを挟むマリィは何故か「お邪魔になるから遠慮するわぁ~」とか訳の分からない事を言って、結局同居はせずに俺の寮に来て雪をみてくれたり、自分の家や職場の一室で預かってくれたりした。
その際に勉強や料理などの家事も雪に教えてくれて、ホントに有り難くて頼りになる存在。
雪が真っ直ぐ育ったのは間違いなくマリィのおかげだと思うよ。
雪は身体があんまり丈夫じゃなくて、俺が休みの日や任務から早く帰って来た時に鍛えてやろうと訓練すると、翌日は疲れからかほぼ必ず熱を出したり体調を崩した。
無理に隊員にする必要は、ねぇよな。
隊員になれれば、自分の部隊に入れてずっと一緒に居てやれる、って思ったけど、無理させたくなかった俺は雪には別の職業を見付けてやろうと思っていた。
だから、俺の留守中に雪が勝手に魔器の適合試験を受けて、最終試験にも参加していた時は驚いて……。何だか哀しい気持ちと、でも、戦う雪の姿が美し過ぎて目を奪われた。
後に、雪が魔器を手にした理由が俺の役に立ちたかったから、って知った時は、やっぱり素直に嬉しかったけどな。
一緒に隊員として働き出して、家でも職場でも一緒に居る時間が長くなると、正直俺は時々苦しくなる時があった。
仕事でも私生活でも、毎日いつでも一緒過ぎて……。美しく成長していく雪の傍に居ると、きっと自分の中で決めていた誓いを破っちまいそうだったからだ。
俺だけは絶対に、雪におかしな感情を抱いたりしない。
絶対に、抱いたりなんてしないーー……。
大切に、護ってやる、って決めた。
幸せになってほしい、って、心から思ってた。
だから、俺は無意識に、必死に必死に雪に抱く感情に気付かないようにしてたんだ。
けど。
出逢った瞬間から雪に心を奪われていた俺にとって、そんなものは、まさに無駄な抵抗だった。
ーー……結局。
気付いて、抱いて、離せなくなった。
きっと俺が雪に抱くこの想いは、純愛じゃなくて狂愛だ。
その証拠に、俺は絶対に雪が望んでいないと気付きながらも……今、新たな人生を歩み始めている。
……
…………。
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