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第1章(5)紫夕side
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雪と出逢ってから、六度目の春が来たーー。
「……雪。
19歳の誕生日、おめでとな」
守護神の隊員を辞めて、森の中にある小さな一軒家での新しい暮らし。最後の戦いの後に倒れて、今もベッドの上で眠ったままの雪に俺は言った。
きっと本当の誕生日は違う。けど、引き取った当時雪が自分の誕生日を覚えていなかった事から、俺は出逢ったあの日を誕生日に決めたんだ。
「誕生日までには目覚めさせてやって、思いっきりお祝いしてやりたかったんだけどな。
……、……ごめんな。せっかく恋人になって、初めての誕生日なのに……な」
返事が返って来ないと分かっていても、謝らずにはいられない。俺は枕元に屈むとそっと頭を撫でてやり、そのまま雪の長く伸びた髪を引き寄せて、その髪に口付けた。
恋人になって初めてのクリスマスも、年明けも、そして誕生日も……。結局ベッドの上で寝たきりにさせて、俺は何もしてやれなかった。
本当は雪の行きたい場所に連れてってやって、楽しくデートして、大好きな苺のケーキを買ってお祝いしてやりたかった。
そして、雪が1番欲しがる物をプレゼントしてやりたかった。
元々住んでいた家からここには最小限の荷物を運んだが、その際に雪の私物は本当に少なかった。
雪はあまり物も買ったりしないし、何かを収集する趣味もなくて……。そんな中で、机の引き出しから少し大きめのお菓子の缶を見付けた。
中身を見てみると、そこに入っていたのはボロボロになってしまったが雪が自分のお袋さんからもらった御守り。インクの出なくなったボールペンと、現在も使ってたインクが差し替えられるボールペン。前に任務中に使ってたボロボロの手袋。水色のリボンと小袋に入ったクッキー。……他人から見たら、きっとゴミ同然の物だった。
雪と出逢ってから、六度目の春が来たーー。
「……雪。
19歳の誕生日、おめでとな」
守護神の隊員を辞めて、森の中にある小さな一軒家での新しい暮らし。最後の戦いの後に倒れて、今もベッドの上で眠ったままの雪に俺は言った。
きっと本当の誕生日は違う。けど、引き取った当時雪が自分の誕生日を覚えていなかった事から、俺は出逢ったあの日を誕生日に決めたんだ。
「誕生日までには目覚めさせてやって、思いっきりお祝いしてやりたかったんだけどな。
……、……ごめんな。せっかく恋人になって、初めての誕生日なのに……な」
返事が返って来ないと分かっていても、謝らずにはいられない。俺は枕元に屈むとそっと頭を撫でてやり、そのまま雪の長く伸びた髪を引き寄せて、その髪に口付けた。
恋人になって初めてのクリスマスも、年明けも、そして誕生日も……。結局ベッドの上で寝たきりにさせて、俺は何もしてやれなかった。
本当は雪の行きたい場所に連れてってやって、楽しくデートして、大好きな苺のケーキを買ってお祝いしてやりたかった。
そして、雪が1番欲しがる物をプレゼントしてやりたかった。
元々住んでいた家からここには最小限の荷物を運んだが、その際に雪の私物は本当に少なかった。
雪はあまり物も買ったりしないし、何かを収集する趣味もなくて……。そんな中で、机の引き出しから少し大きめのお菓子の缶を見付けた。
中身を見てみると、そこに入っていたのはボロボロになってしまったが雪が自分のお袋さんからもらった御守り。インクの出なくなったボールペンと、現在も使ってたインクが差し替えられるボールペン。前に任務中に使ってたボロボロの手袋。水色のリボンと小袋に入ったクッキー。……他人から見たら、きっとゴミ同然の物だった。
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