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第1章(5)紫夕side
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しおりを挟む「そんな事ない。雪ちゃんを想う紫夕ちゃんは、ものすっごくかっこ良かったわよ?アタシ、見直しちゃった。
それに紫夕ちゃんは、1番大切な雪ちゃんの心をしっかり護ってあげたわ。……ほら、見て?」
その言葉に顔を上げると、マリィが笑顔で俺の背後を指差していて……。ゆっくりと、その指の先をみるとーー……。
「……っ、雪?」
目を疑う。
いつの間にか、俺の近くに雪が来ていた。今まで絶対に、自分から歩み寄って来る事なんてなかった雪が、俺の傍に居たのだ。
雪は、相変わらず微笑ったりはしない。無表情で、ただ俺を見つめていた。
でも、行動で表すように、手に持っていたブランケットを広げて、俺を包むように掛けてくれた。俺が最初にブランケットをやった、あの時のように……。
俺の気持ちは届いている、と、伝えてくれているようにーー……。
その瞬間、俺は思った。
絶対にコイツを、世界一幸せにしてやるんだ、ってーー。
「っ、……雪。俺と暮らそう」
気付いたら、俺は雪を抱き締めて、そう言っていた。
自然と、無意識に、いつの間にか抱き締めてしまっていて、雪が怖がっていないかハッと不安が過ぎったが……。震えていない事を確認すると、もう一度言う。
「俺と、一緒に暮らそう。
絶対に絶対に、俺がお前を護ってやるっ」
俺のその言葉に、腕の中で小さく雪が頷いて……。俺と雪の生活がスタートした。
思いっきり、甘やかしてやろうと思った。
過保護だって言われても良い。俺が与えてやれる全部で、幸せにしてやろう。
雪がいつか自分の人生を見付けるまで。好きな相手を見付けるまで。「幸せだ」って、笑顔で言ってくれるその日まで、俺が護ってやるって誓ったんだ。
新しい家に引っ越して一緒に住み始めた当初、雪はやはり部屋の角隅でしか寝付けなくて、せっかく買ってやった良いベッドを使えるようになるまで一年以上かかった。
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