地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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「なんでエタンがいるの!?」
さっき、宿でわかれたよね?

「いってきまーす!」「行ってらっしゃい!」ってやったよね?

エタンは苦笑いをして淡く光る白銀の髪をガシガシとかいた。灰色の斑模様の髪はちょっと伸びてメッシュが入った様になっている。
金の瞳には溢れる色気が滲んでいて、エタンの姿を目にした数人が息を飲む様子になんだか胸がモヤモヤとした。

「冒険者ギルドの依頼に養成所からダンジョンに行く為の引率者の募集があったんだ。」

なんですと!?

「そう言う訳だ。お前の保護者(エタン)心配性だしな。Bランクの先祖返りを条件にして募集したんだ。絶対来るとマスターが言ってたが。マジで来たな!」

それ100%指名依頼じゃん…

ワハハ、と笑うマッシモさんは何度かエタンと酒を飲んだりしてちょっと仲良くなったみたいで、時々私の知らない話を知っていたりして。

なんだか面白くない。

「ふぅん。」

エタンが来てくれて嬉しい。でも、私にくらい教えてくれたら良かったのにー。

「……迷惑だったか?クリス」
「えっ、違うよ。嬉しいけど、エタンってば内緒事が最近いっぱいなんだもん。夜とか時々居なくなってるしさ!」

「焼くな焼くな、お姉ちゃんが居るような店には行ってねぇし。ほとんどこいつの話はクリスの話だからな。まぁ、今なら何となくわらなくも…………(女……こいつがねぇ)…いや、やっぱ、わかんねぇな…」

「後半、別に声に出す必要ありませんでしたよね!?」

なんだか納得がいかない…って言いたげなその顔はなんだ!?と言いたい。言ってしまいたいけれど、マッシモさんは年上で先輩冒険者で私の教官だ。

ここは我慢よクリス!

私はそう自分に言い聞かせてエタンを見た。


「エタンさんって、白豹なんですかぁ?耳、まだ出てない~!えー、もしかして先祖返りって本当だったりして。えっ?マジで?えっ、えっ」

うさぎ………

「ちっ」

あっ、ついつい、あはは。
あれ?私ってばなんでイライラしてたんだろ?
うさぎの巨乳さんがエタンに胸を押し付けて話しかけているのを見たらなんでか無性にムカムカして。

ついでに、エタンが無表情ながらも内心目は泳いでるし、若干うさぎさんの巨乳に意識がチラリと向いたのがわかった。

分かってしまった。
難儀だ。相手の息遣いや、意識を向けた場所の特定から心拍数までちょっぴり解析してしまう自分が憎い。


ふんだ。良いもん。

私がぶすくれてエタンから視線をマッシモさんに戻すと「…いやぁ、悪ぃな。あいつ、多分発情期の週だわ。」とぬかしやがりました。

うさぎは年中発情期らしい。
けれどとりわけ強くハァハァしてる週があるらしい。そんな時はそこら中の異性に発情してキャッキャウフフでハァハァしてるらしい。

よくわかんないけど、エタン頑張れ。脱童貞も近いらしいよ。

ふんだ。

「あれも立派な成人男性だ。まぁ、子供には分からない男の事情ってのがあってだな」
マッシモさんの手がよしよしと頭を撫でてくれる。

兄妹じゃない私達はやっぱり、エタンに恋人が現れたらもう一緒に旅をしたりとか出来ないんだろうな。
いや当たり前だ。
だって私と一緒にいたって仕方ない。なんて色々と考えてしまう。

「…うん」

なぜだか泣きそうになって、心を無にして、それから深呼吸してと何とか涙を引っ込めた。

クソゥ。
私はマッシモさんの方を向いてそのままマッシモさんの腹を見据えた。

「うおっ!?……ちょっ、クリス!何だいきなり!?ど、どうした」

私は気分を変える為マッシモさんの腹に頭突きを数回して、ふぅ。と若干スッキリしてマッシモさんに言った。

「頭が痒かったんで…すいません」

「お、おう。」なんて言って困惑するマッシモさんを見ているとエタンが驚いた顔をして走って来た。うさぎさんのお胸に埋もれていた腕を抜いて、ふんだ。


「…クリス!?今の、な、何してたんだ?」

「ふんだ。」

「えっ?クリス?なんで…俺のクリスがこんなおっさんにじゃれつくなんて」

なんか、ブツブツ言っているけど私はガイ君とカルテイラちゃんがいる所にササッと向かう。
するとカルテイラちゃんが何やら訳知り顔で「クリスちゃん。やっぱり、女の子ヤキモチ、可愛い」と言って来た。

えっ?どこでわかったの?ってか、えっ?ヤキモチ?!

ヤキモチ、私エタンを取られると思ってヤキモチを焼いていたのかな…

ん?それよりも

待って待って?カルテイラちゃんっ

「うん、私は女の子だよ。ってか、カルテイラちゃんとはお花摘み(トイレ)の時に何回か出くわしたよね?」

「あの時は、クリスちゃんの、趣味だと、思ってた、の。」

ちょっと喋りがゆっくりなカルテイラちゃんのこの様子をによによとして見ているユージン君が、はた、と動きを止めて私を見た。

「えっ?クリス君、あっいや。君、女の子だったの?!」

「はぁ?んな訳ねぇだろ!?何バカ言ってんだ」

ユージン君が大きな声で驚いた様に言うもんだからガイ君が現れた。
スパコーン!とユージン君の後頭部を叩いていた為、カルテイラちゃんに睨まれている。

「……私の、初恋の人が。女の子だったみたいです。びっくりです。」

ミミちゃんがポカンと口を開けて私を見てくるからひとまず、えへっ、と笑っておいた。

けれど、ミミちゃんの告白にガイ君はショックで固まり、カルヴァン君は目を見開いて私を見て「完璧に男に化けてるな」なんて言ってくる。

「…え?待って待って?私、今素の状態だからね?って言うか、今までだって男装とかしてないし。それに、よく見て?髪も伸びたし、身体付きだって女性らしくなったでしょう!?」

「そうか、それが素なら。女性だと言う事を忘れない様に脳に叩き込んで置かねばなるまい」

いや、待ってカルヴァン君?


「クリスほど可愛い女の子は居ないのに!こいつらの目は節穴だな。」

一番節穴だと周囲に思われていそうなエタンはそう言って私を背後から抱きしめてきた。





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