地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

文字の大きさ
21 / 32

実戦

しおりを挟む
「おーい!何をイチャついてんだ。時間だ、集合ー!」

マッシモさんの声で漸く今が訓練中だったと思い出し、私は腹に回されたエタンの腕をペチペチと叩き「離してエタン、ほら、もう行かなきゃ。」と伝えた。

そしてマッシモさんの物言いたげな視線に顔を上げて課題をしていなかった事に気付いた。

「あちゃぁー。すっかり忘れてた。エタン……」
「ん?」
「エタンを鑑定してもいい?」

私の言葉にエタンは私を見て、マッシモさんを見てハハン、と言う様に片眉を器用に上げた。
「教官(マッシモさん)に言われたのか?」
「……うん、私がさっきマッシモさんに指摘された事を試したいからもう一度!って頼んだら、教官にエタンを鑑定してみろって言われたの」
「なるほど。よし、いいぞ」
何やら頷きエタンが柔らかい笑顔でさぁ、どうぞと私を見下ろした。

「ありがとう。じゃぁ、『鑑定眼』」

《鑑定》

エタン

----不明

「………え?失敗?」
「悪い、まだ下げたほうがよかったか…よし、もう一度やって」
「ええ?うん」

─────
エタンが目を閉じると自分の鑑定結果が浮かんだ。

~~~~~~~~~~
《鑑定結果》

名・エタン

犯罪歴・無し(5、裁きの鉄槌)

年齢十八、性別・男

種族・白豹の獣人族の先祖返り

性癖・ナシ
(強いて言うなら匂いフェチと撫でたりすることかしら?)

保有スキル・狂戦士、狂化、怪力、カリスマ、無敵、鑑定眼、地の叡智、番の追跡者、強者の威圧、黄金の矢、白き炎の開拓者、雷豹、××の裁き(不明)

魔力量、750
~~~~~~~~~~

けれど、この全てを少女に見せる訳にはいかない。異端すぎる結果を見てドン引きされて怖がられた挙句一緒にいるのは嫌だと言われたら適わない。

以前魔力量のみクリスには見せている。更に今のクリスの鑑定眼のスキルは(1)だ。だったらスキルのひとつくらい見れる様に調整するか…
─────


《鑑定》
名・エタン
『白き炎の開拓者』
魔力量・750

「おー!見えた!」

あれ?でも私の魔力量よりも多いエタンの鑑定をしたのに全く負荷がかからなかった。
なんでだ?

私が首を傾げていると察したらしいエタンが頭を撫でながら教えてくれた。

「クリス限定で、魔力の差から来る負荷を下げたんだ。」

「そんな事ができるの!?」

ビックリだ。エタンって器用すぎる。

「まぁ、ある程度の魔力量がある奴は出来ると思うが………それよりもクリス──」

歯切れ悪くエタンが言葉を切り目を泳がせた。

「その先は後で俺が説明してやろう。なぁ、クリス君!それよりも今は!集合だと言ったはずだよなぁ!?」

背後からしたハキハキとした男性の野太い声がした。エタンの歯切れの悪い原因であり、今が集合の号令の後で、私は訓練生。この野太い声が教官の声だと理解して私が潔く頭を下げて謝罪したのは言うまでもない。

「クリスちゃん、大丈夫ですか?わぁー痛そう…ここ、たんコブができてるです」

頭に大きなコブを作った私をミミちゃんがよしよしと撫でながら癒してくれる。

ひんやりした魔力が私の患部(コブ)を包んで痛みを散らしてくれる。あぁ、ミミちゃん、癒しだ。

「……ぐぅ、クリスは女。アレは女。アレでも女だ!けっしてミミを狙ってる訳じゃねぇ。でもあんな男の外見じゃ俺は…俺は…ぐぁぁぁ!!
わかるか、クリス!?この俺の苛立ちが!!って事で、お前、明日っからちゃんと女装しろよ!良いな!?」

「ごめん、ミミちゃん。ちょっとアレをすり潰してきても良いかな?」

ゆらりとミミちゃんから離れる私の腹にタックルする様にミミちゃんが抱きついて「だ、ダメなのです!ガイ君謝るですよ!」と叫んだ。

「………お前ら、俺の話を聞く気があるのか?ん?」

そんなこんなで頭に出来たたんこぶをガイ君と一緒にミミちゃんに撫でて貰いながら私達は教官マッシモさんの説明を聞いていた。

痛い………


今日は二階から五階層まで行くので、先頭をマッシモさん、エタン、ミューさん。続いて私達。最後尾は至宝のグローリーの皆さんだ。

3階層はキノコの魔植物と肉食の魔植物が潜むジャングルの中だ。進むと背丈ほどの草が足にまとわりついてくる。

「ちょっと、クリスの足にまとわりつかない様に燃やして構わないか?」

燃やす?

「何言い出したのエタン!?」

「必要な薬草のある地帯じゃ無いから多分燃やしても問題はないが。密室で炎は危険だ。」

「あっ、一酸化炭素中毒ですね?」

「……なんだ?そのイッンカタンタってぇのは」

「いや、全然言えてないじゃないですか。」

そっか、一酸化炭素中毒なんて言葉は無いのか。

「それは大丈夫です。まぁ、百聞は一見にしかずだ。クリス、魔法の勉強にもなるし、手を重ねるぞ?」

エタンが触った私の手が光った!?と思った瞬間、周囲の植物が透明のシールドに囲われてエタンが魔力を注いだと感じた瞬間、チリチリ、バンバン!と小爆発しだした。

けれどじっとエタンがシールド内に魔力を注ぎ瞳から白く光を溢れさせるとボールの中に炎を閉じ込めたようにボゥ!と燃え盛りその炎の色は赤、紫、青、白と変化し、急に霧散した。
「どうだった?防御シールドを使って敵を囲いこんで、防御シールドの中に魔力を入れて攻撃魔法を注いだんだ。やり方何となくわかったか?」

何となく、次は私だけでも出来そうな気もしてきた。

「うん」

うん、出来そう。でもさ、エタン

なんにも無い。辺り一面、なんにも無い。

え?これって、普通にやれるもんなの?

プスプスと焼ける地面がエタンの防御シールドと共に取り払われると魔物が何処にいるか一発で分かる状態になっていた。
地から落ち着かない様子で顔を出す火の魔物、砂蛇。

風の魔物のトンボみたいな羽がたくさんあるバッタみたいな虫みたいな魔物。

地に張られた六角形の巨大な蜘蛛の巣からは子蜘蛛…と言っても人の子程の大きさの蜘蛛と親蜘蛛…トラック大、が地中の巣穴から頭を出していた。

一番強いのはCランクの蜘蛛だ。糸がなかなか厄介な魔物だとマッシモさんが説明してくれた。

予備知識で倒し方を知っていたのは蛇の魔物だけだった。
けっこう魔物の本を読んだ気になっていたけど知らない魔物の方が多い。

「うわぁー、顔がキモイ」
蜘蛛の頭は浮き出した血管が人の顔の様に見えて私はドン引きだった。

「よし、見通しが良いのも精々三十分位だ。あの魔植物は瘴気が糧で生えるから一瞬で元通りだからな。そんな訳で、訓練生は全員戦闘開始!?今日は魔法攻撃オンリーだぞ。」

マッシモさんの言葉に私とカルテイラちゃんは顔を見合わせ、ササッとガイ君から距離を取った。


「どうした?」

不思議そうに聞いてくるエタンを見上げて「ガイ君はノーコンなのよ」と端的に答える。
エタンはなるほどと見張りとしてだろうか、エタンがガイ君の背後に張り付いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい
恋愛
結婚十年、子どもも授かり、日々執務と子育ての毎日。 穏やかで平凡な日々を過ごしていたある日、夫が大切な人を離れに住まわせると言った。 偶然助けた私に一目惚れしたと言い、結婚し、可愛い子ども達まで授けてくれた夫を恨むことも憎むこともしなかった私。 初恋すら知らず、家族愛を与えてくれた夫だから。 でも、夫の大切な人が離れに移り住んで、私の生き方に変化が生まれた。 2025.11.30 完結しました。 スピンオフ『嫌われ悪女は俺の最愛〜グレイシアとサイファの恋物語〜』は不定期更新中です。 【2025.12.27追記】 エミリオンと先に出逢っていたら もしもの世界編は、諸事情により以下に移動しました 『今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜』 よろしければ、ご訪問くださいませ いつもありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...