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第10話:救出

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「おめーら、やり残したことはないよな」

 格納庫におやっさんの声が響く。

「回路チェック、終わりました」

『変形機構の動作確認、終わりました』

「おやっさん、チェックリストの確認は全部終わりました」

 格納庫内に、全てのチェックが終わったという声が響く。

「おっしゃ、これでアルテローゼの換装は終わったぜ」

 おやっさは、丸二日貫徹の疲れ果てた顔に、最高の笑顔を浮かべていた。

『…ありがとうございます』

 レイフは、おやっさんに下げられない・・・・・・頭を下げてお礼を述べた。

「何言ってやがる、いまから実際に動かしてみねーと、いけねーだろうが。おら、気絶するのはまだ早いぞおまえら」

 最終チェックを終えたとたん倒れるように眠ってしまった連中が多いのに、おやっさんはまだまだ元気であった。

「さっさとアイラ嬢ちゃんを呼んで試運転だ。まあ、おまえさんが念入りにシミュレーションを行ったんだ、間違っても動かないと言うことはないだろうな」

『おやっさんに、そう言われると、久しぶりにプレッシャーを感じるな。こんな緊張を感じるのは、儂が筆頭魔道士になって最初の戦闘に出陣したとき以来だ』

「グランドフォームやマリンフォームは何とか形にできたが、今回のはさすがに俺もやったことはなかったからな。まあ、男のロマンちゃ、ロマンだが、趣味に走りすぎたかもな」

 おやっさんは、顎の無精髭をなでながらアルテローゼの新しいフォームを眺めてそういう。

『儂も普通ならこんなコストパフォーマンスが悪い仕様でゴーレムを作らないぞ。だが、これはレイチェルを助け出すために必要な事だからな』

「おう、ちゃっちゃと試運転終わらせて、お嬢ちゃんと助けに行かないとな」

 おやっさんとレイフがそんな会話を繰り広げているうちに、アイラが格納庫にやってきた。

「ジャジャーン、来たよ~」

 格納庫に走ってきたアイラは、そのままコクピットに入ると思ったが、アルテローゼの前で立ち止まった。

「うぁ、何か凄い感じになったね~。レイフ、これは何なの?」

 昨晩、パイロットとして救出作戦でがんばってもらうアイラには、早く寝るように命じた。そのため、アイラはアルテローゼの新しいフォームを見るのは今が初めてだった。彼女は、新しいフォームに換装されたアルテローゼを見上げて、口をぽかーんと開けて驚いていた。

「これはな、」

『アルテローゼの新しいフォームは、』

「『スカイフォームだ!』」

 レイフとおやっさんの声がハモった。
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