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第6話:戦場はヘスペリア平原
Aパート(3)
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アルテローゼと巨大獅子が対峙している中、安全圏まで退避した指揮車では、五人組がその様子を見守っていた。
「おいおい、あの巨大猫はレールキャノンの弾を避けてるぜ。撃たれる前に回避行動をとるとか予知能力者がパイロットなのか?」
ディビットは、巨大獅子の回避行動を分析すると、両手を万歳して驚きを表現していた
「いや、それも四足歩行の機動性があってこそだな。あの機動兵器の耐G性能はアルテローゼと同じか、それ以上だぜ。あれを作ったメーカは何処だよ。あれと連邦軍の戦車部隊が戦ったら、負けるぞ」
マイケルは、巨大獅子が横に跳ねて砲弾を回避したのを見て、あきれていた。
「いや、弾を反らすんじゃなくて回避しているってことは、避けなきゃ当たるって事だろ? 前に戦った巨人は、弾が当たらなかったからな。巨大獅子の方は、数打ちゃ当たるだろ」
ホァンは、多脚装甲ロボットのレーザー機銃や40ミリ・グレネード弾が巨大獅子に通じるか、巨大獅子の装甲の分析を始めていた。
「航空支援できたらレイチェルさんに感謝されるかな。司令部に連絡が付けば、攻撃ヘリ呼んでアルテローゼを支援させられるんだ。ディビット、何とか電場妨害を解除できないか?」
クリストファーは、戦闘ヘリで援護することでレイチェルに良いところを見せたいらしいが、戦闘ヘリの制御モニターは『NO CONNECT』と表示され、通信不能であることを示していた。
「ちょっと待てよ。近距離通信ができるのに、遠距離だけ妨害されてるんだ。妨害の発信源があの巨大猫とすると、その手段がおかしいんだよ」
ディビットは、クリストファーに言われるまでもなく指揮車の通信装置やECM/ECCMをチェックしていた。しかし、ディビットががんばっても、長距離通信が回復する気配はなかった。
普通の通信妨害であれば、ディビットの言うように偵察ドローンとの低出力の通信ができて司令部との高出力通信が妨害されるのはおかしい。つまり、巨大獅子は普通とは異なる手段で通信やレーダーを妨害していると、ディビットは考えていた。
「ああ、ついに肉薄されたぞ。本当に巨大ロボット同士で格闘戦をやるのかよ」
「機動兵器が殴り合うとか、旧時代のロボット映画の世界だよ」
「レイチェルさん頑張れ!」
そんなやりとりが指揮車内で行われてる間に、モニターにはグランドフォームとなったアルテローゼと巨大獅子が、今まさにぶつかり合おうとする光景が映し出されていた。
◇
レールキャノンの弾をかいくぐり、アルテローゼに近づいてきた巨大獅子。そのままの勢いでアルテローゼに襲いかかってるかと思ったのだが、なぜか100メートルほどの距離を挟んで立ち止まった。
「突然撃ってくるなんてひどいじゃないか。ガオガオがシールドを張ってなかったら、僕たち大変な目に遭っていたよ」
立ち止まった巨大獅子から聞こえてきたのは、どう聞いても子供の声だった。
「え、子供?」
『子供の声じゃな』
その事実にレイチェルは驚くが、レイフは意外と冷静に受け止めていた。
「どうして子供が乗っているのですか?」
レイチェルは、子供の声が聞こえてきたことにかなり動揺していた。自分が命を賭けて戦う相手が子供ともなれば、歴戦の兵士であっても動揺するのだ。ましてやレイチェルは、普通の兵士ですらないのだ。心が乱されないわけがなかった。
『ふむ、敵も汚い手を使ってくるの。少年、いや声からしたら少女というか幼女だな。しかし、少女兵を差し向けてくるとか、邪神信者と戦って以来のことだな』
一方レイフは、多少驚いたがそこまで動揺はしなかった。何故ならレイフは帝国の筆頭魔道士として様々な戦場を経験してきた。その中には年端も行かない子供を兵士としたり、生け贄として悪魔を呼び出して憑依させ戦わせたりするような連中もいたのだ。
『レイチェル、たとえ相手が子供であっても兵士であれば戦わねばならないのだ。それが軍という物なのだ。それにもしかすると、子供の声を聞かせてこちらの動揺を誘っているのかもしれないぞ』
レイチェルを励ますように言ってアルテローゼは、槍と盾を構え巨大獅子との格闘戦に備えるのだった。
「ですが、もし本当だったら。子供相手に戦うなんて、私には…無理ですわ」
レイチェルのスティックを握る手は、震えて汗ばんでいた。
『(これはレイチェルに戦わせるのは難しいか。新兵のかかる病の一種だな。) 分かったよレイチェル。お前は優しすぎるのだ。巨大獅子とは儂が戦う。お前には許可だけ出せば良いのだ』
「レイフは、AIだから冷静ですね。…ええ、そうですわね。私はレイフに言われたとおりにトリガーを引きますわ」
『任せておけ。大丈夫、レイチェルが望まぬ結果は出さぬよ』
「できれば、パイロットは殺さないでください」
レイチェルは、巨人のパイロットがレイフによって殺された事を知っている。そうしなければ殺されていたのは自分であり、レイフだった。そう割り切れれば良いのだが、レイチェルにとって戦いはまだ二度目でありそんな割り切りはできなかった。
『当たり前だが、儂は最善を尽くす。その結果がどうなるかは相手次第だな』
アルテローゼは、巨大な槍を巨大獅子の心臓に向かって構えるのだった。
「おいおい、あの巨大猫はレールキャノンの弾を避けてるぜ。撃たれる前に回避行動をとるとか予知能力者がパイロットなのか?」
ディビットは、巨大獅子の回避行動を分析すると、両手を万歳して驚きを表現していた
「いや、それも四足歩行の機動性があってこそだな。あの機動兵器の耐G性能はアルテローゼと同じか、それ以上だぜ。あれを作ったメーカは何処だよ。あれと連邦軍の戦車部隊が戦ったら、負けるぞ」
マイケルは、巨大獅子が横に跳ねて砲弾を回避したのを見て、あきれていた。
「いや、弾を反らすんじゃなくて回避しているってことは、避けなきゃ当たるって事だろ? 前に戦った巨人は、弾が当たらなかったからな。巨大獅子の方は、数打ちゃ当たるだろ」
ホァンは、多脚装甲ロボットのレーザー機銃や40ミリ・グレネード弾が巨大獅子に通じるか、巨大獅子の装甲の分析を始めていた。
「航空支援できたらレイチェルさんに感謝されるかな。司令部に連絡が付けば、攻撃ヘリ呼んでアルテローゼを支援させられるんだ。ディビット、何とか電場妨害を解除できないか?」
クリストファーは、戦闘ヘリで援護することでレイチェルに良いところを見せたいらしいが、戦闘ヘリの制御モニターは『NO CONNECT』と表示され、通信不能であることを示していた。
「ちょっと待てよ。近距離通信ができるのに、遠距離だけ妨害されてるんだ。妨害の発信源があの巨大猫とすると、その手段がおかしいんだよ」
ディビットは、クリストファーに言われるまでもなく指揮車の通信装置やECM/ECCMをチェックしていた。しかし、ディビットががんばっても、長距離通信が回復する気配はなかった。
普通の通信妨害であれば、ディビットの言うように偵察ドローンとの低出力の通信ができて司令部との高出力通信が妨害されるのはおかしい。つまり、巨大獅子は普通とは異なる手段で通信やレーダーを妨害していると、ディビットは考えていた。
「ああ、ついに肉薄されたぞ。本当に巨大ロボット同士で格闘戦をやるのかよ」
「機動兵器が殴り合うとか、旧時代のロボット映画の世界だよ」
「レイチェルさん頑張れ!」
そんなやりとりが指揮車内で行われてる間に、モニターにはグランドフォームとなったアルテローゼと巨大獅子が、今まさにぶつかり合おうとする光景が映し出されていた。
◇
レールキャノンの弾をかいくぐり、アルテローゼに近づいてきた巨大獅子。そのままの勢いでアルテローゼに襲いかかってるかと思ったのだが、なぜか100メートルほどの距離を挟んで立ち止まった。
「突然撃ってくるなんてひどいじゃないか。ガオガオがシールドを張ってなかったら、僕たち大変な目に遭っていたよ」
立ち止まった巨大獅子から聞こえてきたのは、どう聞いても子供の声だった。
「え、子供?」
『子供の声じゃな』
その事実にレイチェルは驚くが、レイフは意外と冷静に受け止めていた。
「どうして子供が乗っているのですか?」
レイチェルは、子供の声が聞こえてきたことにかなり動揺していた。自分が命を賭けて戦う相手が子供ともなれば、歴戦の兵士であっても動揺するのだ。ましてやレイチェルは、普通の兵士ですらないのだ。心が乱されないわけがなかった。
『ふむ、敵も汚い手を使ってくるの。少年、いや声からしたら少女というか幼女だな。しかし、少女兵を差し向けてくるとか、邪神信者と戦って以来のことだな』
一方レイフは、多少驚いたがそこまで動揺はしなかった。何故ならレイフは帝国の筆頭魔道士として様々な戦場を経験してきた。その中には年端も行かない子供を兵士としたり、生け贄として悪魔を呼び出して憑依させ戦わせたりするような連中もいたのだ。
『レイチェル、たとえ相手が子供であっても兵士であれば戦わねばならないのだ。それが軍という物なのだ。それにもしかすると、子供の声を聞かせてこちらの動揺を誘っているのかもしれないぞ』
レイチェルを励ますように言ってアルテローゼは、槍と盾を構え巨大獅子との格闘戦に備えるのだった。
「ですが、もし本当だったら。子供相手に戦うなんて、私には…無理ですわ」
レイチェルのスティックを握る手は、震えて汗ばんでいた。
『(これはレイチェルに戦わせるのは難しいか。新兵のかかる病の一種だな。) 分かったよレイチェル。お前は優しすぎるのだ。巨大獅子とは儂が戦う。お前には許可だけ出せば良いのだ』
「レイフは、AIだから冷静ですね。…ええ、そうですわね。私はレイフに言われたとおりにトリガーを引きますわ」
『任せておけ。大丈夫、レイチェルが望まぬ結果は出さぬよ』
「できれば、パイロットは殺さないでください」
レイチェルは、巨人のパイロットがレイフによって殺された事を知っている。そうしなければ殺されていたのは自分であり、レイフだった。そう割り切れれば良いのだが、レイチェルにとって戦いはまだ二度目でありそんな割り切りはできなかった。
『当たり前だが、儂は最善を尽くす。その結果がどうなるかは相手次第だな』
アルテローゼは、巨大な槍を巨大獅子の心臓に向かって構えるのだった。
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