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第6話:戦場はヘスペリア平原
Aパート(4)
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巨大な獅子の形をした巨大機動兵器。中の少女によると、名称はガオガオらしい。そしてそのコクピットだが、前の巨人の何もないコクピットとは異なり、近代的な装いだった。少女はバイクのようにまたがって座るシートに座り、その周囲はモニターが取り囲んでいた。俗に言う360度モニターだが、それには周囲の風景が映し出されており、ハンドルを握る少女は巨大なバイクに乗っているようであった。
そしてその少女は、今現在頭から湯気がでそうな勢いで怒っていた。その体つきから年の頃は10歳程度と思われる少女は、赤黒い髪の毛に抜けるような白い肌であり、それが彼女が火星で生まれた生粋のマーズリアンであることを示していた。
「ほんと、いきなり撃ってるくるんだもの。ひどいよね、ガオガオ。しかもこっちが気づかない距離から撃ってくるなんて、やっぱり地球の人は卑怯で卑劣で、臆病者だよ」
少女は、どうやら地球人に対して良くない印象を持っているようだった。といっても、これは一般的なマーズリアンの地球人に対する印象なのだろう。
しかし、自分は疑似光学迷彩で隠れて待ち伏せをしていたのに、それを見破られて遠距離から撃たれて卑怯というのは、子供らしい自己中な評価であった。
『グルル』
コクピットに、少女の言葉を肯定するかのように獣のうなり声が響く。
「そうだよね、ガオガオもそう思おうよね」
他の人には獣のうなり声にしか聞こえないのだが、少女にはガオガオの意志が伝わっているようだった。
「とにかく、アレをやっつければサトシが喜ぶんだよね。ちゃっちゃと片づけて、早くオリンポスに帰ろう」
少女はガオガオにそう語りかけると、操縦桿を捻る。
『ガォーン』
少女の操作にて出力をあげたガオガオは、雄叫びをあげるとアルテローゼに向かって走り出した。
◇
「来ますわ」
『分かっている。レイチェルはしっかりスティックを握っていろ』
走り出したガオガオは、アルテローゼに一直線に向かってきた。
アルテローゼは、盾と槍を構えて攻撃の機械を伺う。
槍を持った人と獅子。まるで地球のアフリカかという光景が、火星で実現した。
『ここだ!』
アルテローゼが気合いを入れて槍を突き出す。
「当たんないよ~」
しかし、少女とガオガオはその穂先を見切って、空に飛び上がった。
そして、ガオガオの右の爪がアルテローゼの頭を狙う。
『何とー』
アルテローゼは、ランドセルで前にダッシュすると、かろうじてその爪をかいくぐった。
ガキッ
アルテローゼ頭部にある、V字型のサブ通信アンテナの片方が砕け散る。
そして、ガオガオは地面に着地し、アルテローゼはUターンして、二体の機動兵器は位置を入れ替えて再び対峙した。
『いまだっ、レイチェルトリガーを引くんだ』
「は、はい」
レイフに促されレイチェルがトリガーを引くと、アルテローゼは、振り向いた瞬間にミサイルを発射した。
16連装のミサイルランチャーから対戦車ミサイルがワイヤーの尾を引いて飛び立つ。
『(本当なら、対戦車ミサイルに必中の魔法を付加できればよかったのだがな)』
革命軍が使っていたプロテクション・フロム・ミサイルの魔法を打ち破る方法としては、矢にシュート・アローの魔法をかけるというのがある。レイフは出撃前に対戦車ミサイルやレールキヤノンの弾頭に魔法をかけられないか試したのだが、魔法を付加することはできなかった。では、材料となる物に魔法を組み込み、錬金術で製造すれば良いのではと、ミサイルを分解してその弾頭に魔法を付与すると、それは上手くいった。しかし、弾頭にロケット部分を追加するととたんに付加した魔法が消えてしまったのだった。
そして試行錯誤の結果、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対抗策として見つけだしたのが、有線誘導式ミサイルだったのだ。
対戦車ミサイルの誘導方式には、レーザー誘導や赤外線認識、有線誘導など様々な種類がある。その中でも現在主流として使用されているのは赤外線の画像認識による物だ。この追尾方式の利点は、ミサイルがロックオンして発射すると後はミサイルが勝手に目標を追尾してくれることである。それに比べレーザーや有線誘導は発射した後もレーザーを照射するなどミサイルの照準を合わせ続ける必要があるのだ。
しかし、便利な追尾方式のミサイルは、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対して無力だった。ミサイルの制御AIは魔法によって軌道がずらされた事に気づけず、狙いを外してしまうのだ。
そこでレイフが選んだのは、もう使われることが殆ど無くなった有線誘導式の物だった。有線誘導式は文字通りミサイルを有線で誘導するため、速度が遅く射程が短いという欠点が存在する。しかし、他の誘導方式と異なり有線でミサイルの軌道を制御できるため、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対応できるのだった。
ともかく、至近距離で放たれた16発のミサイルは、ガオガオに向かっていった。レールキャノンと異なり時速300キロほどの速度ではあるが、レイフによりガオガオを包囲するように誘導される。ガオガオには逃げ道など無いのだ。
「甘いよね。ガオガオ、全部避けるよ」
『ガオーーーーン』
少女の命令にガオガオが叫ぶと、ミサイルに向かって駆けだす。
『馬鹿な、死ぬつもりか?』
レイフは、対戦車ミサイルをガオガオの脚や下半身と言ったコクピットがない場所に誘導していた。しかし、ガオガオがミサイルにそのまま飛び込んできてはそんな誘導も意味をなさないだろう。
「やめてっ」
レイチェルが、小さく叫ぶがもう手遅れであった。
そしてその少女は、今現在頭から湯気がでそうな勢いで怒っていた。その体つきから年の頃は10歳程度と思われる少女は、赤黒い髪の毛に抜けるような白い肌であり、それが彼女が火星で生まれた生粋のマーズリアンであることを示していた。
「ほんと、いきなり撃ってるくるんだもの。ひどいよね、ガオガオ。しかもこっちが気づかない距離から撃ってくるなんて、やっぱり地球の人は卑怯で卑劣で、臆病者だよ」
少女は、どうやら地球人に対して良くない印象を持っているようだった。といっても、これは一般的なマーズリアンの地球人に対する印象なのだろう。
しかし、自分は疑似光学迷彩で隠れて待ち伏せをしていたのに、それを見破られて遠距離から撃たれて卑怯というのは、子供らしい自己中な評価であった。
『グルル』
コクピットに、少女の言葉を肯定するかのように獣のうなり声が響く。
「そうだよね、ガオガオもそう思おうよね」
他の人には獣のうなり声にしか聞こえないのだが、少女にはガオガオの意志が伝わっているようだった。
「とにかく、アレをやっつければサトシが喜ぶんだよね。ちゃっちゃと片づけて、早くオリンポスに帰ろう」
少女はガオガオにそう語りかけると、操縦桿を捻る。
『ガォーン』
少女の操作にて出力をあげたガオガオは、雄叫びをあげるとアルテローゼに向かって走り出した。
◇
「来ますわ」
『分かっている。レイチェルはしっかりスティックを握っていろ』
走り出したガオガオは、アルテローゼに一直線に向かってきた。
アルテローゼは、盾と槍を構えて攻撃の機械を伺う。
槍を持った人と獅子。まるで地球のアフリカかという光景が、火星で実現した。
『ここだ!』
アルテローゼが気合いを入れて槍を突き出す。
「当たんないよ~」
しかし、少女とガオガオはその穂先を見切って、空に飛び上がった。
そして、ガオガオの右の爪がアルテローゼの頭を狙う。
『何とー』
アルテローゼは、ランドセルで前にダッシュすると、かろうじてその爪をかいくぐった。
ガキッ
アルテローゼ頭部にある、V字型のサブ通信アンテナの片方が砕け散る。
そして、ガオガオは地面に着地し、アルテローゼはUターンして、二体の機動兵器は位置を入れ替えて再び対峙した。
『いまだっ、レイチェルトリガーを引くんだ』
「は、はい」
レイフに促されレイチェルがトリガーを引くと、アルテローゼは、振り向いた瞬間にミサイルを発射した。
16連装のミサイルランチャーから対戦車ミサイルがワイヤーの尾を引いて飛び立つ。
『(本当なら、対戦車ミサイルに必中の魔法を付加できればよかったのだがな)』
革命軍が使っていたプロテクション・フロム・ミサイルの魔法を打ち破る方法としては、矢にシュート・アローの魔法をかけるというのがある。レイフは出撃前に対戦車ミサイルやレールキヤノンの弾頭に魔法をかけられないか試したのだが、魔法を付加することはできなかった。では、材料となる物に魔法を組み込み、錬金術で製造すれば良いのではと、ミサイルを分解してその弾頭に魔法を付与すると、それは上手くいった。しかし、弾頭にロケット部分を追加するととたんに付加した魔法が消えてしまったのだった。
そして試行錯誤の結果、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対抗策として見つけだしたのが、有線誘導式ミサイルだったのだ。
対戦車ミサイルの誘導方式には、レーザー誘導や赤外線認識、有線誘導など様々な種類がある。その中でも現在主流として使用されているのは赤外線の画像認識による物だ。この追尾方式の利点は、ミサイルがロックオンして発射すると後はミサイルが勝手に目標を追尾してくれることである。それに比べレーザーや有線誘導は発射した後もレーザーを照射するなどミサイルの照準を合わせ続ける必要があるのだ。
しかし、便利な追尾方式のミサイルは、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対して無力だった。ミサイルの制御AIは魔法によって軌道がずらされた事に気づけず、狙いを外してしまうのだ。
そこでレイフが選んだのは、もう使われることが殆ど無くなった有線誘導式の物だった。有線誘導式は文字通りミサイルを有線で誘導するため、速度が遅く射程が短いという欠点が存在する。しかし、他の誘導方式と異なり有線でミサイルの軌道を制御できるため、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法に対応できるのだった。
ともかく、至近距離で放たれた16発のミサイルは、ガオガオに向かっていった。レールキャノンと異なり時速300キロほどの速度ではあるが、レイフによりガオガオを包囲するように誘導される。ガオガオには逃げ道など無いのだ。
「甘いよね。ガオガオ、全部避けるよ」
『ガオーーーーン』
少女の命令にガオガオが叫ぶと、ミサイルに向かって駆けだす。
『馬鹿な、死ぬつもりか?』
レイフは、対戦車ミサイルをガオガオの脚や下半身と言ったコクピットがない場所に誘導していた。しかし、ガオガオがミサイルにそのまま飛び込んできてはそんな誘導も意味をなさないだろう。
「やめてっ」
レイチェルが、小さく叫ぶがもう手遅れであった。
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