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【真幕・第3章】あねせいくりっどっ 前編!
1.露出狂と揉み逃げの変態現れましたっ!
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まえがき
※実際にあった田舎の小さな事件を元に作られたストーリーです。
※複数ヒロインターンとなります(次女、メインヒロイン、サブヒロイン)
________________________________
七月七日、昼休み。
花穂姉ちゃんが朝から忙しい日は食堂で昼食を取る。
今日は珍しく里志と荒木鈴がいっしょだ。
「里志は妹が弁当作ってるんだよな?」
「厳密言えば双子の片割れな。一匹は料理どヘタだぞ」
朝峰里志には羽月と卯月という可愛い妹がいる。
活発的な双子の姉羽月ちゃんとおっとりタイプの妹卯月ちゃん。
料理が得意で弁当を作る時間がありそうなのは卯月ちゃんだろう。
羽月ちゃんは毎朝陸上部の朝練に精を出しているはずだ。
「スズも今日は弁当作る時間なかったのか?」
「うーん。朝練ない日は二度寝しちゃってさ……」
荒木鈴は近所に住む幼馴染で紗月姉を信奉する空手馬鹿だ。
ちなみに里志も昔から紗月信奉者である。この学内には紗月姉の魅力に心惹かれた大馬鹿者共が何名か存在する。三年の四条春香や御子柴龍司もその一角だ。
「蒼太はあれか? 花穂さんが忙しいのか?」
「ああ。なんか言ってたなぁ。注意喚起のパンフを生徒会で作るとか……」
三人の前に同じ定食のセットが並ぶ。
唐揚げと白米に味噌汁、きんぴらごぼうと漬物、曜日ごとに異なる日替わり制だ。
「それってあれじゃないの? 変質者が出たって女子の間で噂になってて」
「変質者? 蒼太、聞いたことあるか?」
「いいや。今、初めて耳にした」
向かいの席に座って、パクパクと唐揚げを口に運ぶ里志が小首を傾ける。
「スズ。変質者に遭遇した生徒がいるってことか?」
「そうそう。目撃者と被害者が既にいるとか!」
「マジか!? 蒼太、変質者とっ捕まえようぜ!」
「お前な、捕まえてどうするんだ?」
「紗月さんに賊を差し出し、ご褒美を頂戴する!」
俺とスズはほぼ同時にため息を一つ落とした。
俺は親友の馬鹿さ加減に呆れ、スズは里志への思いからか表情が複雑だ。
「アオ……里志ってこんなアホだったっけ?」
「あらかたアホだと思うぞ」
「ひでぇなぁ、鈴も蒼太も!」
「里志……お前、人の話を聞いてたか? 変質者を捕まえるのは難しい。既に目撃者と被害者が出て逃げおおせているんだぞ。おそらく、警察に被害届けも出されているだろう。それでも捕まってないんだ」
付け加えると学内でパンフレットをわざわざ拵えていることだ。
被害の度合いにもよるが、緊急集会などが行われていない現状を鑑みるに大事には至らなかったと推察できる。ただ、目撃者と被害者は複数人いる可能性が高い。
「あ! アオ、花穂ちゃんからメッセージ来た!」
「姉ちゃんから?」
「うん。放課後は気をつけて下校するようにだって」
花穂姉ちゃんはスズを妹のように可愛がっている。
空手部の練習で遅くに下校するのを心配したようだ。
「変質者情報も送ってくれたよ!」
「姉ちゃん……昼もパンフ作ってんのかな……」
「なになに、ポコチンライダーと股触揉蔵の出没だってさ」
里志は飲みかけていた麦茶を噴出する勢いでむせている。
俺もそのネーミングセンスのなさに絶句しているところだ。
「おい、スズ。姉ちゃんのメッセージにほんとにそう書いてあるのか?」
「ほら、見てみなよ」
スズが腕に取り付けたウェアラブル端末の画面を俺と里志に見せてくる。
姉からのメッセージの中に、確かにポコチンライダーと股触揉蔵と書いてある。
「うはははははっ!! 蒼太、変質者は二人いるぞ!」
「くっ! なんてセンスのないネーミングだ……姉ちゃんが付けたのか?」
姫咲市に出没中の変質者は二人いるようだ。
姉が生徒会で作成中の注意喚起のパンフが出来上がるのを待とう。
★★★
その日の放課後、生徒会からの臨時のお知らせとしてパンフレットが配布された。
誰がデザインしたのか絵がやたらと上手い。そして、妙にコミカルでリアルだ。
「里志、ポコチンライダーは想像通りだな!」
「おう。ライダーって言うからにはバイク乗りだと思ってたんだ」
パンフレットに掲載されているポコチンライダーと呼ばれる変質者は、原付バイクに乗りながらズボンのファスナーを全開させてポコチンを露出させながら爆走するようだ。イラストの股の部分はモザイクがかけられて、小さくメモ書きにボッキ?と書いてある。
問題は被害者が四名も出ている股触揉蔵のほうだ。
この男は三〇代から四〇代、中肉中背で足が速い。前から歩いて来て、いきなり胸や股間を鷲掴みにして去って行くらしい。それゆえに股触揉蔵などというふざけたネーミングなのだ。
「揉蔵か……コイツは実害あるだけにタチが悪いな」
「だから引っ捕えようぜ!」
俺と里志はパンフレットを見ながら教室をあとにした。
校門を出て住宅街へと入ると、里志が周辺を警戒し始めた。
「なにしてるんだ? 里志」
「そこらに変質者が潜んでないかなってさ」
「出没したのは駅周辺だろ。こっちには出てない」
まだ出没していないだけかもしれない。
しかし、ああいう手合いは同じ場所を好むものだ。味を占めると何度も繰り返す。
「それじゃ、また明日な!」
シュッと手をあげて里志は住宅街の北に伸びる路地へ入って行った。
この辺の道路は狭く、死角も多い。変質者にとっては地の利があると言える。
小回りが効く原付バイクや足の速い男が本気で逃げれば追いつけないだろう。
(花穂姉ちゃんたちはいっしょに下校するから大丈夫か……)
パンフレットには『なるべく、ひとりで下校しないで』と書かれている。
股触揉蔵の場合、被害者四名のうちのひとりは男子生徒だ。背後から接近して、追い抜く際に股間を鷲掴みにされたと説明書きがある。
(揉蔵は見境がないな……)
住宅街を進んで自宅の五〇メートルほど手前に到着した時だった。
赤いランプが点灯しているのが見える。それはすぐにミニパトだとわかった。
「えっ!? おいおい……なんでうちに警察が!?」
青山家の門の前に停車したパトカー、中には誰も乗っていない。
なにか異変があったに違いない。そう感じた瞬間、全速力で家へと急いだ。
※実際にあった田舎の小さな事件を元に作られたストーリーです。
※複数ヒロインターンとなります(次女、メインヒロイン、サブヒロイン)
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七月七日、昼休み。
花穂姉ちゃんが朝から忙しい日は食堂で昼食を取る。
今日は珍しく里志と荒木鈴がいっしょだ。
「里志は妹が弁当作ってるんだよな?」
「厳密言えば双子の片割れな。一匹は料理どヘタだぞ」
朝峰里志には羽月と卯月という可愛い妹がいる。
活発的な双子の姉羽月ちゃんとおっとりタイプの妹卯月ちゃん。
料理が得意で弁当を作る時間がありそうなのは卯月ちゃんだろう。
羽月ちゃんは毎朝陸上部の朝練に精を出しているはずだ。
「スズも今日は弁当作る時間なかったのか?」
「うーん。朝練ない日は二度寝しちゃってさ……」
荒木鈴は近所に住む幼馴染で紗月姉を信奉する空手馬鹿だ。
ちなみに里志も昔から紗月信奉者である。この学内には紗月姉の魅力に心惹かれた大馬鹿者共が何名か存在する。三年の四条春香や御子柴龍司もその一角だ。
「蒼太はあれか? 花穂さんが忙しいのか?」
「ああ。なんか言ってたなぁ。注意喚起のパンフを生徒会で作るとか……」
三人の前に同じ定食のセットが並ぶ。
唐揚げと白米に味噌汁、きんぴらごぼうと漬物、曜日ごとに異なる日替わり制だ。
「それってあれじゃないの? 変質者が出たって女子の間で噂になってて」
「変質者? 蒼太、聞いたことあるか?」
「いいや。今、初めて耳にした」
向かいの席に座って、パクパクと唐揚げを口に運ぶ里志が小首を傾ける。
「スズ。変質者に遭遇した生徒がいるってことか?」
「そうそう。目撃者と被害者が既にいるとか!」
「マジか!? 蒼太、変質者とっ捕まえようぜ!」
「お前な、捕まえてどうするんだ?」
「紗月さんに賊を差し出し、ご褒美を頂戴する!」
俺とスズはほぼ同時にため息を一つ落とした。
俺は親友の馬鹿さ加減に呆れ、スズは里志への思いからか表情が複雑だ。
「アオ……里志ってこんなアホだったっけ?」
「あらかたアホだと思うぞ」
「ひでぇなぁ、鈴も蒼太も!」
「里志……お前、人の話を聞いてたか? 変質者を捕まえるのは難しい。既に目撃者と被害者が出て逃げおおせているんだぞ。おそらく、警察に被害届けも出されているだろう。それでも捕まってないんだ」
付け加えると学内でパンフレットをわざわざ拵えていることだ。
被害の度合いにもよるが、緊急集会などが行われていない現状を鑑みるに大事には至らなかったと推察できる。ただ、目撃者と被害者は複数人いる可能性が高い。
「あ! アオ、花穂ちゃんからメッセージ来た!」
「姉ちゃんから?」
「うん。放課後は気をつけて下校するようにだって」
花穂姉ちゃんはスズを妹のように可愛がっている。
空手部の練習で遅くに下校するのを心配したようだ。
「変質者情報も送ってくれたよ!」
「姉ちゃん……昼もパンフ作ってんのかな……」
「なになに、ポコチンライダーと股触揉蔵の出没だってさ」
里志は飲みかけていた麦茶を噴出する勢いでむせている。
俺もそのネーミングセンスのなさに絶句しているところだ。
「おい、スズ。姉ちゃんのメッセージにほんとにそう書いてあるのか?」
「ほら、見てみなよ」
スズが腕に取り付けたウェアラブル端末の画面を俺と里志に見せてくる。
姉からのメッセージの中に、確かにポコチンライダーと股触揉蔵と書いてある。
「うはははははっ!! 蒼太、変質者は二人いるぞ!」
「くっ! なんてセンスのないネーミングだ……姉ちゃんが付けたのか?」
姫咲市に出没中の変質者は二人いるようだ。
姉が生徒会で作成中の注意喚起のパンフが出来上がるのを待とう。
★★★
その日の放課後、生徒会からの臨時のお知らせとしてパンフレットが配布された。
誰がデザインしたのか絵がやたらと上手い。そして、妙にコミカルでリアルだ。
「里志、ポコチンライダーは想像通りだな!」
「おう。ライダーって言うからにはバイク乗りだと思ってたんだ」
パンフレットに掲載されているポコチンライダーと呼ばれる変質者は、原付バイクに乗りながらズボンのファスナーを全開させてポコチンを露出させながら爆走するようだ。イラストの股の部分はモザイクがかけられて、小さくメモ書きにボッキ?と書いてある。
問題は被害者が四名も出ている股触揉蔵のほうだ。
この男は三〇代から四〇代、中肉中背で足が速い。前から歩いて来て、いきなり胸や股間を鷲掴みにして去って行くらしい。それゆえに股触揉蔵などというふざけたネーミングなのだ。
「揉蔵か……コイツは実害あるだけにタチが悪いな」
「だから引っ捕えようぜ!」
俺と里志はパンフレットを見ながら教室をあとにした。
校門を出て住宅街へと入ると、里志が周辺を警戒し始めた。
「なにしてるんだ? 里志」
「そこらに変質者が潜んでないかなってさ」
「出没したのは駅周辺だろ。こっちには出てない」
まだ出没していないだけかもしれない。
しかし、ああいう手合いは同じ場所を好むものだ。味を占めると何度も繰り返す。
「それじゃ、また明日な!」
シュッと手をあげて里志は住宅街の北に伸びる路地へ入って行った。
この辺の道路は狭く、死角も多い。変質者にとっては地の利があると言える。
小回りが効く原付バイクや足の速い男が本気で逃げれば追いつけないだろう。
(花穂姉ちゃんたちはいっしょに下校するから大丈夫か……)
パンフレットには『なるべく、ひとりで下校しないで』と書かれている。
股触揉蔵の場合、被害者四名のうちのひとりは男子生徒だ。背後から接近して、追い抜く際に股間を鷲掴みにされたと説明書きがある。
(揉蔵は見境がないな……)
住宅街を進んで自宅の五〇メートルほど手前に到着した時だった。
赤いランプが点灯しているのが見える。それはすぐにミニパトだとわかった。
「えっ!? おいおい……なんでうちに警察が!?」
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