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修復できない関係
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SANSUN社長との会食は大和と横山が出席し、村田はホテルに残ることになった。
ソウル在住の日本医師が、美姫の部屋に往診に訪れた。
「急性咽頭炎ですね。喉がかなり炎症を起こしています。
乾燥を防ぐ為、出来れば加湿器を設置するといいですが、なければ部屋に濡れタオルをかけておいて下さい。タバコとお酒も喉によくありませんから、しばらくは避けたほうがいいでしょう。解熱剤とうがい薬を処方しておきますので、近くの薬局で処方してもらって下さい」
美姫が祈るような気持ちで、医師を見上げた。
「ありがとうございます。
あの......今夜、ソウルから上海に向けて飛行機に乗らないといけないんですが、大丈夫でしょうか」
お願い......ここで、キャンセルになんてしないで。
医師が厳しい顔を見せる。
「急性咽頭炎の主な原因はウィルスや細菌による感染ですが、これはストレスや疲れなど免疫力の低下によって起こることもあります。
来栖さんは結婚式直後ということですので、溜まっていた疲れが一気に出たのでしょう。熱をおして無理にスケジュールをこなすよりも、暫くはリラックスして休養されることをお勧めします」
村田も、医師の言葉に同意した。
「そうですよ、お嬢様。今はゆっくり休むことだけお考え下さい。
仕事の方はこちらでサポートしますから」
美姫はそれを聞き、深い溜息を吐いた。
美姫が部屋で休んでいる間、会食を終えた大和と横山が村田に合流し、3人で話し合いが行われた。その結果、美姫をソウルに残し、上海へ発つことになった。
主治医の話では、急性咽頭炎の場合、およそ1週間から10日前後で症状が軽減するとのことだった。本当なら完治してから参加させたいところだが、ヨーロッパまで行ってしまうと合流が厳しくなる。
そこで、アジア各国のスケジュールは3人でこなし、最終地であるシンガポールから航路を変更してソウルに寄り、そこで美姫をピックアップしてからフランクフルトへ発つことにした。ソウルからフランクフルトまでの距離は、シンガポールから発つより約5000km短くなるので、美姫にとっても負担は少し軽くなる。
美姫が滞在する間、長谷川の妻と夏休み中の高校生の娘が世話役として訪ねてきてくれることになった。
「本当に、ごめんなさい......」
大和から話を聞き、美姫は何度も謝った。
「仕事のことは気にしなくていいから。ゆっくり休んで、フランクフルトに行くまでには治さないとな」
「うん......」
美姫は大和を見上げて、小さく頷いた。
仕事のことは当然、気掛かりだ。近くで大和をサポート出来ないことや、同行してくれている村田や横山に迷惑をかけることや、挨拶する予定だった人たちに会えないことを申し訳なく思った。
けれど、美姫がもっとも気にしていたのは、昨夜気まずくなってしまった大和との関係を早く修復したいと思っているのにも関わらず、暫くの間離れて過ごさなくてはならないことだった。
「大和の傍に、いたかったのに......」
歯痒い思いで呟く美姫に、大和の心臓が跳ねる。
ったく、こいつ......そういう不意打ち、マジで反則。
心の中で悪態ついてみたものの、顔がニヤけそうになる。それを右手で隠し、左手で美姫の頭を撫でた。
「俺だって......同じだ」
こういうことがある度に、俺はお前への思いを改めて感じる。お前が、好きだと。
だから、俺は来栖秀一の影を踏みつけて、乗り越えてみせる。
美姫が大和の頬に手を伸ばした。
「大和、愛してる......」
それは、美姫から初めてまともに聞く、愛の告白だった。大和の全身が熱くなり、美姫への愛しい想いが奥底から泉のように湧き出てくる。
「俺も、お前が好きだ。愛してる」
額に口づけると、自分らしくないその行為に赤面した。恥ずかしさを誤魔化すように、美姫の頭をポンポンと軽く撫でる。
「ゆっくり寝ろよ」
「うん......」
寝室の扉を閉めると、大和は緩みきった頬を元に戻せず、大きく息を吐いて額に手を当てた。
ヤバい......
ほんと、好き過ぎる......
その日の夜、大和は美姫をソウルに残して上海へと発つことになった。
美姫、ひとりにしてごめんな。
後で迎えに来るから……その時には、いつもの俺たちでいよう。
大和はタラップを上がり、一旦振り返ると再び前を向き、機内へと入っていった。
ソウル在住の日本医師が、美姫の部屋に往診に訪れた。
「急性咽頭炎ですね。喉がかなり炎症を起こしています。
乾燥を防ぐ為、出来れば加湿器を設置するといいですが、なければ部屋に濡れタオルをかけておいて下さい。タバコとお酒も喉によくありませんから、しばらくは避けたほうがいいでしょう。解熱剤とうがい薬を処方しておきますので、近くの薬局で処方してもらって下さい」
美姫が祈るような気持ちで、医師を見上げた。
「ありがとうございます。
あの......今夜、ソウルから上海に向けて飛行機に乗らないといけないんですが、大丈夫でしょうか」
お願い......ここで、キャンセルになんてしないで。
医師が厳しい顔を見せる。
「急性咽頭炎の主な原因はウィルスや細菌による感染ですが、これはストレスや疲れなど免疫力の低下によって起こることもあります。
来栖さんは結婚式直後ということですので、溜まっていた疲れが一気に出たのでしょう。熱をおして無理にスケジュールをこなすよりも、暫くはリラックスして休養されることをお勧めします」
村田も、医師の言葉に同意した。
「そうですよ、お嬢様。今はゆっくり休むことだけお考え下さい。
仕事の方はこちらでサポートしますから」
美姫はそれを聞き、深い溜息を吐いた。
美姫が部屋で休んでいる間、会食を終えた大和と横山が村田に合流し、3人で話し合いが行われた。その結果、美姫をソウルに残し、上海へ発つことになった。
主治医の話では、急性咽頭炎の場合、およそ1週間から10日前後で症状が軽減するとのことだった。本当なら完治してから参加させたいところだが、ヨーロッパまで行ってしまうと合流が厳しくなる。
そこで、アジア各国のスケジュールは3人でこなし、最終地であるシンガポールから航路を変更してソウルに寄り、そこで美姫をピックアップしてからフランクフルトへ発つことにした。ソウルからフランクフルトまでの距離は、シンガポールから発つより約5000km短くなるので、美姫にとっても負担は少し軽くなる。
美姫が滞在する間、長谷川の妻と夏休み中の高校生の娘が世話役として訪ねてきてくれることになった。
「本当に、ごめんなさい......」
大和から話を聞き、美姫は何度も謝った。
「仕事のことは気にしなくていいから。ゆっくり休んで、フランクフルトに行くまでには治さないとな」
「うん......」
美姫は大和を見上げて、小さく頷いた。
仕事のことは当然、気掛かりだ。近くで大和をサポート出来ないことや、同行してくれている村田や横山に迷惑をかけることや、挨拶する予定だった人たちに会えないことを申し訳なく思った。
けれど、美姫がもっとも気にしていたのは、昨夜気まずくなってしまった大和との関係を早く修復したいと思っているのにも関わらず、暫くの間離れて過ごさなくてはならないことだった。
「大和の傍に、いたかったのに......」
歯痒い思いで呟く美姫に、大和の心臓が跳ねる。
ったく、こいつ......そういう不意打ち、マジで反則。
心の中で悪態ついてみたものの、顔がニヤけそうになる。それを右手で隠し、左手で美姫の頭を撫でた。
「俺だって......同じだ」
こういうことがある度に、俺はお前への思いを改めて感じる。お前が、好きだと。
だから、俺は来栖秀一の影を踏みつけて、乗り越えてみせる。
美姫が大和の頬に手を伸ばした。
「大和、愛してる......」
それは、美姫から初めてまともに聞く、愛の告白だった。大和の全身が熱くなり、美姫への愛しい想いが奥底から泉のように湧き出てくる。
「俺も、お前が好きだ。愛してる」
額に口づけると、自分らしくないその行為に赤面した。恥ずかしさを誤魔化すように、美姫の頭をポンポンと軽く撫でる。
「ゆっくり寝ろよ」
「うん......」
寝室の扉を閉めると、大和は緩みきった頬を元に戻せず、大きく息を吐いて額に手を当てた。
ヤバい......
ほんと、好き過ぎる......
その日の夜、大和は美姫をソウルに残して上海へと発つことになった。
美姫、ひとりにしてごめんな。
後で迎えに来るから……その時には、いつもの俺たちでいよう。
大和はタラップを上がり、一旦振り返ると再び前を向き、機内へと入っていった。
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