<本編完結!AS開始>【R18】愛するがゆえの罪 ー溜息が出るほど美しくて淫らな叔父と姪の禁断愛ストーリーー

奏音 美都

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修復できない関係

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 その頃、美姫は解熱剤に含まれる睡眠作用と心身の疲れから、死んだように眠っていた。

 夢を、見ていた。遠い記憶を呼び起こした夢を。

 ベッドに眠る美姫は、まだ幼い。おそらく、幼稚舎か小等部低学年だろう。

 熱で顔を真っ赤にし、苦しそうに呼吸をしている。

 部屋の扉が開き、家政婦の佐和が入ってきた。おでこのタオルを新しいものに取り替え、心配そうに見つめている。

「お嬢様。おかゆを作りましたので、食べますか」

 佐和は持ってきたお盆を手にして尋ねたが、美姫はふるふると首を振った。

「いら、ない......」

 佐和は困ったように眉を下げ、小さく息を吐いた。

 その時、玄関のインターホンが鳴った。佐和が立ち上がり、部屋を出て行く。

 美姫は落ち着きなくそわそわしていたが、我慢できずに半身を起こしてベッドから下りた。おでこのタオルが布団の上に落ちる。

 熱でふらふらとする躰を壁に押し付けながらも、美姫は部屋を出て、玄関までゆっくりと歩いていた。廊下で美姫の姿を見つけた佐和が、大きな声を上げる。

「まぁ、美姫様! 何をされてるんですか!!」

 その後ろから、更に声が聞こえた。

「美姫。ちゃんと寝ていないと、風邪が治りませんよ」

 その声を聞き、ボォーっとした表情だった美姫に生気が戻った。

 やっぱりしゅうちゃんだった!
 しゅうちゃんが、きてくれた!

 フラつきながらもトットットッ......と駆けていき、秀一にボフッと抱きついた。

 秀一は学生服を着ていた。高校が終わってから、直接来てくれたのだろう。美姫の頬を撫でる手が、冷たくて気持ち良かった。

「さ、部屋に戻りますよ」

 秀一が美姫を抱きかかえ、部屋へと運ぶ。大好きな腕に抱かれ、安心しきった顔で美姫は秀一を見上げた。

 しゅうちゃんは、やっぱりみきのおーじさまだ。

 美姫は、先ほど抜け出したベッドへと戻された。

「しゅーちゃん、ありがとう」

 反省の色など全く見せず、無邪気な笑顔を秀一に向ける美姫に、佐和は呆れたように大きく溜息を吐いた。

「美姫様は、秀一様のこととなると、いつも無理するんですから」

 秀一はベッドの脇のテーブルの上に置かれた、まだ何も手がつけられていないおかゆに気が付いた。

「美姫、食欲がないのですか」
 「先ほど、おかゆを持ってきたんですけど、一口も手をつけようとなさらなくて」

 困ったように説明する佐和に、美姫は顔を背けた。

「たべたく、ないの......」

 そう言った美姫に、佐和は名案とばかりに秀一に頼んだ。

「秀一様、お嬢様におかゆを食べさせていただけませんか。美姫様は秀一様の言うことなら、素直に聞きますから」

 え、しゅうちゃんが!?

 驚いたように振り向く美姫に、秀一がにっこりと微笑んだ。

「分かりました。美姫、食べてくれますね?」
「う、うん……」

 秀一が小さな鍋に入ったおかゆを子供用の小さなれんげで掬い、それを口元に持っていくと口を窄めて息を何度か吹き掛け、おかゆを冷ます。そんな仕草さえも綺麗で、美姫はドキドキしながらそれを見つめた。

 十分冷めたことを確認すると、秀一がれんげを美姫の口元へと運んだ。美姫は口を開き、それを飲み込んだ。

「美味しい......」

 ほんとは味なんて分からなかったが、秀一が自分の為に食べさせてくれたことが嬉しくて、思わず美姫はそう言っていた。

 秀一は眼鏡の奥の切れ長のライトグレーの瞳を細めた。

「それはよかったです」


 目が覚めた美姫の目尻からは、涙が流れ落ちていた。

 懐かしい、夢だった。

 そんなことがあったことすら、ずっと忘れていたのに......熱で浮かされて、記憶が呼び戻されたのかもしれない。

 ザルツブルク音楽祭は、8月30日まで開催している。

 まだ秀一さんは、ザルツブルクにいるだろう。大勢の聴衆を虜にしてるに違いない。

 美姫は急に、置き去りにされた子供のような気持ちになった。

 寂しくて......心細くて......孤独、だった。

 美姫は、今頃上海へと向かっている大和を想った。

 大和、ここにいて。あなたに、ここにいて欲しい。
 寂しい。
 寂しいよ......
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