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308.女の嫉妬と教祖としてのプライド
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翌朝、幹部が集まってのミーティングでのこと。
高槻が入ってきた途端、華江が立ち上がって駆け寄り、握手を求めてきた。
「高槻先生! 先生の霊力のおかげで、私は自分を解放することが出来ました!! 本当に、ありがとうございました!!
私は歳をとるにつれ、自分の魅力が衰えていくことに大きな不安と恐怖を感じていました。私はまだ若い、魅力がある、女性として花を咲かせていたい。多くの男性に女として見られ、求められ、愛されたい……そんな欲望をずっと心の奥底に抱いて生きてきました。
それを先生は昨日、叶えてくださった。私の欲望を見破り、理性を打ち砕き、本能を解き放ってくださった!!
あぁ……高槻先生は、やっぱり最高のお方です!! 私は、一生、先生についていきますっっ!!」
華江は涙を流し、高槻に何度も深く頭を下げた。昨夜、華江と交わった男たちを中心に拍手が起こり、やがてそれはその場全員にいる者たちを巻き込んでいった。
こ、んなことって……狂ってる。
高槻は引き吊りそうな口角を必死に上げ、微笑んだ。
「『幸福阿吽教』は、迷える、救いを求めている信者たちを幸せに導きます。貴方の心が解放され、私は何より嬉しく思います」
高槻の霊力が注がれたお神酒の力は、幹部たちの口から出家信者へと光の速さで伝わっていった。
誰もが高槻の霊力を崇め、拝み、敬う。
「先生。私たちも、高槻先生の霊力をなんとか分けていただけないでしょうか」
そんなことを言い出す出家信者も出てきた。
そのうち、幹部だけを贔屓しているなんていう噂も、出どころは掴めないものの、まことしやかに囁かれるようになった。
幹部たちもまた高槻の霊力を感じたいと、再びお神酒を与えられる機会を今か今かと心待ちにしていた。
もう、後戻りは出来ない。
高槻は仕方なく、幹部だけでなく出家信者にもお神酒を与えることにした。
出家信者全員を集めての唱和会は、カオスとなった。
気分が悪くなって吐いたり、悲鳴をあげたり、けたたましく笑い出したり……高槻の足にしがみつく者もいた。
華江はそこでも多くの男たちを誘い、受け入れ、激しく乱れ舞った。華江には、そこまでの深く激しい肉欲が長年の間、渦を巻いていたのだ。欲望を解き放った華江は性に奔放で、自由で、艶かしかった。
華江と男たちの熱い交わりを見ていると、高槻は忘れかけていた女としての自分を思い出させられた。かつては自分も、男たちに求められ、愛されてきた。性の悦びを思う存分、享受した。
高槻は、教祖となる野望と引き換えに恋愛を、肉欲を捨てた。
高槻は自己顕示欲が昔から強かった。教祖になったのは、大勢の人々に注目され、認められ、憧れを抱かれ、尊敬され、崇められたかったからだ。信者たちからそういった目で見つめられる時、褒め称えられる時、自分に傾倒していると感じる時、高槻の鼓動は高鳴り、一種のエクスタシーのような高揚感を覚える。
だからこそ、小宮ともそういった関係になるのを躊躇い、諦めた。ひとりの男と恋愛やセックスをしてのめり込んでしまえば、高槻は教祖ではなく、『平凡な一女性』に成り下がってしまう。自分の価値が下がってしまう。高槻は、誰かひとりにとっての特別になるよりも、大勢の信者にとっての特別となる道を選んだのだ。
多くの男たちに女として見られ、求められ、愛されたいと願い、その欲望を叶えた華江。最初は驚愕し、異常だと思っていた高槻だったが、実は自分の心の奥底にもそんな願望が眠っていたのではないかと気付かされた。
躰の熱が上昇し、鼓動が高鳴り、下半身が疼く。
失ったと思っていた肉欲が奥底から生まれてくるのを感じる。
自分も華江のように性に奔放になれたら、どんなに気持ちいいだろうか。
男たちに強く求められ、愛されたい。
華江の抱えていた欲望が、今では痛いほどに分かる。
だが、理解できるからこそ、憎くなる。
どうして男たちに求められるのが、自分ではないのかと。
教祖である自分が注目されず、華江にばかり目を向けられることに強い憤りと怒りを感じるのだ。
信者に、男たちに求められるべきは、この私なのに!!
私こそが、この『幸福阿吽教』の頂点に君臨する教祖なのに!!
嫉妬と羨望がぐちゃぐちゃに混ざり合って胃の中で激しく旋回する。
だが、華江に嫉妬を抱き、憎しみを抱いているからといって、彼女を無下にすることはできなかった。
なぜなら、華江は今までに多くの信者、特に男性信者を勧誘してきた実績がある。そして、華江を通じて教団関連の本やグッズが多く購入されてきたからだ。
華江はいわば『幸福阿吽教』の広告塔であり、大切な金蔓なのだ。今後、彼女の巧みな話術だけでなく、躰を使って勧誘をすれば、より多くの信者を獲得することができ、教団の財政が潤う。
女としてのプライドと教団としての発展を天秤にかけ、高槻は激しいジレンマに襲われた。
高槻が自らお神酒の力を使って性を解放し、男性信者たちを虜にすることはできない。
高槻は『幸福阿吽教』の教祖であり、高貴で穢れなき存在でなくてはならない。自らをそんな役に蔑めることは、それがどんなに心の奥底で望んでいる欲望だとしても、叶えることは出来なかった。
それに、高槻だって分かっている。裸体の高槻と華江が並んだ時、男たちがどちらに手を伸ばすのかを。
華江は、名前の通り華のある女だ。彼女が漂わせる甘く淫らな蜜の香りに、男どもは群がる。高槻は、そんな屈辱は絶対に味わいたくない。
その為にも、華江をここに置いておき、承認するしかなかった。
自ら撒いた種とはいえ、高槻は自分の感情を制御できずにいた。もしあのままいれば、発狂していたかもしれない。
高槻は頭を抱えた。
だからと言って、もうお神酒をやめることなど出来ない! 信者たちが、私の霊力を盲信している。
私は、教祖として、霊能力者として、これからも君臨し続ける。
だから……たとえあの女が目障りであっても、利用していくしかないのよ!!
その時、扉の向こうから遠慮がちにノックする音が聞こえた。
瞑想するって言っておいたのに!!
いったい誰!?
顔を上げ、殺気立たせた表情を露わにした。
高槻が入ってきた途端、華江が立ち上がって駆け寄り、握手を求めてきた。
「高槻先生! 先生の霊力のおかげで、私は自分を解放することが出来ました!! 本当に、ありがとうございました!!
私は歳をとるにつれ、自分の魅力が衰えていくことに大きな不安と恐怖を感じていました。私はまだ若い、魅力がある、女性として花を咲かせていたい。多くの男性に女として見られ、求められ、愛されたい……そんな欲望をずっと心の奥底に抱いて生きてきました。
それを先生は昨日、叶えてくださった。私の欲望を見破り、理性を打ち砕き、本能を解き放ってくださった!!
あぁ……高槻先生は、やっぱり最高のお方です!! 私は、一生、先生についていきますっっ!!」
華江は涙を流し、高槻に何度も深く頭を下げた。昨夜、華江と交わった男たちを中心に拍手が起こり、やがてそれはその場全員にいる者たちを巻き込んでいった。
こ、んなことって……狂ってる。
高槻は引き吊りそうな口角を必死に上げ、微笑んだ。
「『幸福阿吽教』は、迷える、救いを求めている信者たちを幸せに導きます。貴方の心が解放され、私は何より嬉しく思います」
高槻の霊力が注がれたお神酒の力は、幹部たちの口から出家信者へと光の速さで伝わっていった。
誰もが高槻の霊力を崇め、拝み、敬う。
「先生。私たちも、高槻先生の霊力をなんとか分けていただけないでしょうか」
そんなことを言い出す出家信者も出てきた。
そのうち、幹部だけを贔屓しているなんていう噂も、出どころは掴めないものの、まことしやかに囁かれるようになった。
幹部たちもまた高槻の霊力を感じたいと、再びお神酒を与えられる機会を今か今かと心待ちにしていた。
もう、後戻りは出来ない。
高槻は仕方なく、幹部だけでなく出家信者にもお神酒を与えることにした。
出家信者全員を集めての唱和会は、カオスとなった。
気分が悪くなって吐いたり、悲鳴をあげたり、けたたましく笑い出したり……高槻の足にしがみつく者もいた。
華江はそこでも多くの男たちを誘い、受け入れ、激しく乱れ舞った。華江には、そこまでの深く激しい肉欲が長年の間、渦を巻いていたのだ。欲望を解き放った華江は性に奔放で、自由で、艶かしかった。
華江と男たちの熱い交わりを見ていると、高槻は忘れかけていた女としての自分を思い出させられた。かつては自分も、男たちに求められ、愛されてきた。性の悦びを思う存分、享受した。
高槻は、教祖となる野望と引き換えに恋愛を、肉欲を捨てた。
高槻は自己顕示欲が昔から強かった。教祖になったのは、大勢の人々に注目され、認められ、憧れを抱かれ、尊敬され、崇められたかったからだ。信者たちからそういった目で見つめられる時、褒め称えられる時、自分に傾倒していると感じる時、高槻の鼓動は高鳴り、一種のエクスタシーのような高揚感を覚える。
だからこそ、小宮ともそういった関係になるのを躊躇い、諦めた。ひとりの男と恋愛やセックスをしてのめり込んでしまえば、高槻は教祖ではなく、『平凡な一女性』に成り下がってしまう。自分の価値が下がってしまう。高槻は、誰かひとりにとっての特別になるよりも、大勢の信者にとっての特別となる道を選んだのだ。
多くの男たちに女として見られ、求められ、愛されたいと願い、その欲望を叶えた華江。最初は驚愕し、異常だと思っていた高槻だったが、実は自分の心の奥底にもそんな願望が眠っていたのではないかと気付かされた。
躰の熱が上昇し、鼓動が高鳴り、下半身が疼く。
失ったと思っていた肉欲が奥底から生まれてくるのを感じる。
自分も華江のように性に奔放になれたら、どんなに気持ちいいだろうか。
男たちに強く求められ、愛されたい。
華江の抱えていた欲望が、今では痛いほどに分かる。
だが、理解できるからこそ、憎くなる。
どうして男たちに求められるのが、自分ではないのかと。
教祖である自分が注目されず、華江にばかり目を向けられることに強い憤りと怒りを感じるのだ。
信者に、男たちに求められるべきは、この私なのに!!
私こそが、この『幸福阿吽教』の頂点に君臨する教祖なのに!!
嫉妬と羨望がぐちゃぐちゃに混ざり合って胃の中で激しく旋回する。
だが、華江に嫉妬を抱き、憎しみを抱いているからといって、彼女を無下にすることはできなかった。
なぜなら、華江は今までに多くの信者、特に男性信者を勧誘してきた実績がある。そして、華江を通じて教団関連の本やグッズが多く購入されてきたからだ。
華江はいわば『幸福阿吽教』の広告塔であり、大切な金蔓なのだ。今後、彼女の巧みな話術だけでなく、躰を使って勧誘をすれば、より多くの信者を獲得することができ、教団の財政が潤う。
女としてのプライドと教団としての発展を天秤にかけ、高槻は激しいジレンマに襲われた。
高槻が自らお神酒の力を使って性を解放し、男性信者たちを虜にすることはできない。
高槻は『幸福阿吽教』の教祖であり、高貴で穢れなき存在でなくてはならない。自らをそんな役に蔑めることは、それがどんなに心の奥底で望んでいる欲望だとしても、叶えることは出来なかった。
それに、高槻だって分かっている。裸体の高槻と華江が並んだ時、男たちがどちらに手を伸ばすのかを。
華江は、名前の通り華のある女だ。彼女が漂わせる甘く淫らな蜜の香りに、男どもは群がる。高槻は、そんな屈辱は絶対に味わいたくない。
その為にも、華江をここに置いておき、承認するしかなかった。
自ら撒いた種とはいえ、高槻は自分の感情を制御できずにいた。もしあのままいれば、発狂していたかもしれない。
高槻は頭を抱えた。
だからと言って、もうお神酒をやめることなど出来ない! 信者たちが、私の霊力を盲信している。
私は、教祖として、霊能力者として、これからも君臨し続ける。
だから……たとえあの女が目障りであっても、利用していくしかないのよ!!
その時、扉の向こうから遠慮がちにノックする音が聞こえた。
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