チェストー! 伊佐高龍舟チーム!!

奏音 美都

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第十章 同じ空の下

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 女子テントを出ると、松元先生と赤井先生が歩いてくるのが見えた。二人ともベストを着てキャップを被り、釣り竿を肩に背負い、もう一方の手にはバケツを持っている。さっきの前田くんのモノマネを思い出し、思わず吹き出しそうになった。

「せんせー! 釣れたけ?」
「おぉ、1時間で結構釣れたがよ」

 バケツの中を覗くと、小さな魚が7、8匹泳いでた。

 先生たちに別れを告げ、炊事棟、そしてトイレを案内してもらう。

「そんでぇ、あっこが五右衛門風呂!」
「えっ、五右衛門風呂!?」

 どうやって入るの!?

 石が積み上げられた上に竹と木で作られた簡素な小屋の建物の上には、五右衛門風呂利用のきまりが書かれていた。
 浴室の蛇口を回して水を入れ、薪を集めてきて火をたいて沸かし、底ふたを中に浮かべたらそれを踏み込みながら入る……

 難しそうだけど、勇気くんと郁美は何回もここに来てるって言ってたし、協力してやればなんとかなるかな。

 最後のきまりに『鼻唄を歌う』とあって、笑ってしまった。伊佐の人たちは、公共のルールにもユーモアを忘れることなく、心が和む。

「ここん五右衛門風呂は無料で使えるがよ。薪は管理事務所で売ってるけど、誰か持ってきてる人おるね?」
「田中くんが薪持ってきてくれたって言ってたが」
「おぉ、田中くん! 気がきくがよ」
「助かるね」

 五右衛門風呂は2つあって、1つを覗いてみると大人1人が入る大きさの窯風呂が置かれていて、そばに底ふたが立てかけてあった。今夜、お風呂に入るのが楽しみだ。

「まだもう一つの目玉があるで、こっち来て!」

 郁美に急かされていくと、そこには釜が置かれていて、木の窯に『ピザ釜』と書かれていた。

「うわーっ、ピザ釜があるんだ! 凄い!!」

 由美子が手を挙げた。

「生地こねてジップロックに入れて持ってきたから、みんなでピザ作りするがよ!」
「わっぜ、すげー由美子!」
「女子力高いが」
「ピザ作り、楽しみーっっ!!」

 このピザ釜も予約すると無料で使えるそうだ。なんてサービスがいいんだろう。そこから階段を上っていくと管理棟があった。ここで必要なものがあれば申請して借りることになる。薪だけでなくバーベキューセットや炊飯用具、毛布や枕まで借りられるので、本格的なキャンプセットを持ってなくても気楽にテントを張れる。

 管理棟の横にはバンガローが2棟建っていた。この2棟は『もくせい』と『つつじ』という、いかにもって感じの名前がついてたけど、郁美の話では奥にある3棟には『金山ねぎ』、『伊佐米』、『ひしの実』という名前がついているそうだ。そういえば、料金表にそんな名前が書かれてた気がする。『金山ねぎ』のバンガローに当たったら、ちょっと複雑な気分かも。

 管理事務所を通り過ぎて歩いて行くと、そこには遊具と草そり場があった。

「あぁー、そり忘れたがぁ! せめてダンボール持って来れば良かったぁ!!」

 郁美が悔しそうに嘆いた。草そり場は草が短く刈られて綺麗に整備されていて、ここで滑ったら気持ちいいだろうなぁと思った。
 
 帰りに管理棟に寄り、ピザ釜用の道具を借りるとテントへ戻った。もうそこには、既に4つめのテントが設営されていて、男子たちは川に足をつけたりして遊んでいた。

「暗くなる前に、みんなピザ作りするがよー」

 郁美の呼びかけに、みんなが上がってくる。
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